BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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若松メモリアル優勝戦 私的回顧

おめでとーー♪

 

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12R優勝戦

①寺田 祥(山口)10

②白井英治(山口)09

③平本真之(愛知)08

④森高一真(香川)13

⑤田村隆信(徳島)16

⑥前田将太(福岡)11

 

「タムラーー動けーー! お前が動かんとつまらんどーーっ!!」

 隣の若者がビール片手に大声を発する中、最後のファンファーレが鳴り響いた。田村が動くかどうか。確かに私もそれが最大のハイライトと見ていたのだが、ちょっぴり動きたそうな田村を同期の森高がブロックして、穏やかな枠なり3対3。

 

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さらにスリット隊形は、内3艇がわずかにリードしての横並び。予想欄でも書いたが、こうなってはダッシュ勢に勝ち目はない。1マークまでに寺田がしっかり伸びて先マイし、白井が差し、平本が握るという正攻法。ターンの出口で寺田52号機が唸りを挙げて、他の2艇を一気に突き放した。非の打ちどころのないイン逃げ。2マークで白井が平本のツケマイをブロックし、そこでほぼ完ぺきな1-2-3態勢が固まった。

 

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 3年前の当地メモリアルは「寺田が3カドアタック、2コース白井がそれをブロックしながらコンマ00全速でもうひとりの同県・谷村一哉を一撃まくりで叩き潰す」というド派手な“仁義なき長州競り”だったが、今年は実に穏やかなレース展開で山口支部のワンツーが実現した。

「おめでとーー♪」

 ウイニングランがはじまると、スタンドに残った多くのファンが両手を挙げてひらひら左右に振っている。ほとんどのファンが「おめでとーー♪」&ひらひらのワンセット。3年前はロックコンサートのような熱狂ぶりだったが、その温度差もかなり違って見えた。レース内容の違いに拠るものだろうし、白井と寺ショーが持っている雰囲気、性格、それぞれの境遇の違いでもあるだろう。誰もが1-2-3のような穏やかな笑顔で、ひらひらと勝者を讃え続けていた。

 

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 おめでとう、寺ショー!

 白井~仲口~俊介~峰に続いて「SGを獲って不思議じゃない男」がまたしっかりと大きなチャンスをモノにした。ここ数年、歯に挟まっていた物が取れたような爽快感を味わってきたわけだが、今日もまた胸のツカエが解消されたような気分になったぞ。

「寺ショーー、また若松に来いよーー!!」

 若者が大声でレスキュー上の寺田を祝福し、見送り終わるとちょっと寂しげにこう言った。

「でも、やっぱ田村には動いて欲しかったな。動いてくれたほうがもっともっと盛り上がったのに。田村はこのレースを盛り上がるために参加してるのにぃ」

 チョイチョイ、それは本末転倒だぁ(笑)。が、この1-2-3という結果に納得しつつも「田村が動いたら、どんなハラハラドキドキのレースになっていただろうなぁ」なんてぼんやり考えてもいた。優勝戦の後には、いつだってそんな脳内パラレルワールドがつきまとう。

 

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 晴れてSGウイナーになった寺ショーとはほぼまったく面識がない。会話を交わしたこともない。もちろん舟券では頻繁に世話になっていて「人気薄のときに4コースでアタマ狙い、5コースで2着付け、6コースで3着付け」が私にとっての舟券友達・寺田祥だ(笑)。一見、地味なようだが「やるときには大胆なレースをやらかしてくれる」という意外性があり、それが同時に舟券的な信頼性にもつながっている。つまりは舟券だけの付き合いでしかも大好物なので、この優勝で常に舟券が売れるようになったら残念ではあるな(笑)。

 今節に限って言うなら、前検から寺田52号機を節イチ指名(←自慢ですっ!!)してから7日間に渡って愛着を持って寺ショーを見つめてきた。その分、今日の優勝はことさらに嬉しい。心の底から「おめでとーー♪」という賛辞を贈りたい。買い続けたアタマ舟券は、最後まで不発だったけれど(涙)。

 

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 それから……今節は寺田とまったく真逆の7日間を過ごした男がいた。登番が4番違いの一期後輩の赤岩善生だ。初日からワースト級のパワーに苦しみ、ありとあらゆる整備をやり尽くし、その労苦がまったく報われることなく666656666という成績でシリーズを終えた。片や節イチパワーで準パーフェクトV、片やワーストパワーで裏・準パーフェクト……残酷すぎるふたりの明暗を目の当たりにしたわけだが、どんなに這っても最後まで諦めることなく整備し続けた赤岩にも労いの拍手を送りたい。両者の明暗は、新型モーターの極端すぎる格差を見つめ直す契機になるかも知れないな。とにもかくにも、今節の私にとって寺田と赤岩がまったく違う意味で“主役”だった。(text/畠山、photos/シギー中尾)