BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――いいヤツ!

 

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 近江翔吾がいいヤツなのである。2RでGⅠ初勝利の森智也は、2走目を走り終えた11R発売中に水神祭を行なうことになった。ところが森が、10Rで転覆してしまう。11R発売中は転覆整備に追われ、水神祭どころではなくなった。なにより、今節は兵庫支部の選手が他にいない。近畿勢が本来なら参加したのかもしれないが、転覆整備の間に多くの選手が控室へ引き上げてしまっていた。11R終了とほぼ同時に転覆整備は終わったが、森の周りには選手の姿がほとんどなかった。それを心配そうに見つめていたのが近江翔吾。森とは同期生である。

「森さんの水神祭やりたいんやけど」

 近江は堀本裕也に声をかける。

「水神祭、嫌がってるんですか?」

「いや、同県がおらんから」

 ここは同期の出番、というわけである。

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「ああ。でも、さっき水神祭やってしもうとるやないですか」

 堀本が笑う。繰り返すが、森は10Rで転覆。うむ、一人水神祭、ってやつか。いや、山崎郡が妨害失格となっているから、山崎に祝ってもらった? そんなバカな。なお、山崎は森の転覆整備にずっと付き合っており、彼もまたいいヤツなのであった。

 モーターを格納した森は、静かに控室へ。それを控えめに追う近江。果たして水神祭は行なわれるのか……。

 やがて近江が堀本や上條暢嵩を引き連れて登場! 何度も「同県がおらんから」と口にしながら、遅れて出てきた森を係留所へと導いたのだった。堀本が笑う。

「これはもう、同期が一緒に落ちなきゃあかんでしょ」

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 近江は当初そのつもりがなかったようだが、言われるまま靴を脱ぎ出した。「同期の宿命ですね」なんて堀本に言われていたが、「同県がおらんから」とふたたび。うん、たしかに近江が率先して動いたのは同県不在ということに違いはないけど、だからこそ控えめにふるまいながら、心から祝福しているのが明らかな近江は、最高にいいヤツだ!

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 というわけで、ウルトラマンスタイルでドボン、と投げ込まれた森に続いて、近江も飛び込んだ。というか、堀本に突き落とされた。堀本くん、君もサイコーだ(笑)。森が報道陣らの万雷の拍手を浴びる場面を作ったのは、間違いなく近江翔吾である。明日は舟券で応援するぞ。

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 上野真之介もいいヤツなのである。10~11Rの時間帯、新兵たちが先輩の艇旗艇番を準備し始めた。大変なのは、仲谷颯仁だ。今節は全体の最若手であるわけだが、福岡支部は大挙12人が参戦しており、それだけの人数分を準備しなければならない。全体の約4分の1を、もちろん羽野直也らも手分けをしてだが、用意するのだ。蒲郡の右のカウルにつける艇番は正方形ではなく長ーーーーいヤツなので、まとめて持つのも大変。仲谷はなんとか工夫して、何枚かをまとめて脇に抱えた。

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 それを見かねた上野が、「大丈夫か」とヘルプを申し出たわけである。同地区とはいえ他支部の先輩を動かすわけにはいかないと、仲谷はかたくなに「大丈夫です」と返した。だからいったんは仲谷が艇番を抱え込むことになったのだが、上野は結局、左カウルにつける正方形のほうの艇番を受け取り、仲谷とともに装着作業を始めたのだった。上野は登番が上のほうなので、先のメモリアルでいえば山田祐也を山崎智也が手伝った、てな感じか。明日は上野も舟券で応援しよう。F後だから人気も下がるだろうし。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)