BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――順当!? それとも……

 

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 松田大志郎が「最悪ですわ」と悔しがる。結果的に1着なら18位に滑り込んでいた10R、松田は落水失格の憂き目にあう。予選落ちしただけでなく、選手責任の事故。たしかに痛恨事というしかない。前年度覇者のラストヤングダービーは、最悪の閉幕となってしまった。ちなみに、3カドを考えていたそうである。チルトは+0・5度。足も良くなっており、一発勝負に出ようとしたのだ。ところが今日は天気も風向きもくるくると変わる。レースになって突如追い風が強めになり、万が一のことを考えて、スローを選択した。それでも松田は、勝負駆けに渾身の一撃を放つつもりではいたのである。

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 竹井奈美も、絶対に予選突破、の意を強くして今日という日に臨んだ。4着2本という条件だったから、さほど厳しいノルマではなかったのだが、まさかのゴンロク。にわかに2着勝負となった後半も大敗で、準優出はかなわなかった。レース後の表情はいつもと変わらず淡々としたものだったが、着替えを終えてペラ室へと向かう際、竹井は溜息をついた。それも少し離れたところからでも聞こえるくらいの溜息だった。竹井はひたすら悔しかったのだ。

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 渡邉和将も4着2本という条件を、やはりまさかのゴンロクで勝負駆け失敗。い合い過ぎたのは山田康二で、こちらは4着5着の条件を、これまたゴンロクで次点にまで下がってしまった。渡邉はパワー的に準優でも面白い存在だったし、山田はなにしろドリーム組である。山田の場合は格上という意識を持っていたはずだし、たしかに足色は厳しかったが、予選落ちは相当に屈辱のはずである。二人は、1便で帰らずにペラを叩き続けた。渡邉は時折、かなり強めにハンマーを振り下ろした。それはもちろん調整のためで、悔しさをペラにぶつけたものであるはずがないが、しかし悔いを反芻しながらの作業ではあったに違いない。このひと叩きで、明日からの2日間のレースに悔しさを思い切りぶつけるだろう。

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 竹井や渡邉や山田、圏内から落ちたことで、ボーダーは5・83に下がった。10Rが終わった段階で、その5・83=仲谷颯仁が18位以内となることは早々に決まり、11Rでは島村隆幸が大敗したときのみ、山田康二が18位に滑り込むという状況だったが、島村は3着で、わりとあっさり18人は決まったという感じだ。

 仲谷はまさか18位に残れるとは思ってもいなかったようで、JLC展望インタビューを青山登さんに急かされると、「えっ、マジっすか。ラッキー。がんばろ」と、淡々とではあったが、喜びを見せている。仲谷は2走で13点が必要だったところを、12点で終わり、しかし後半の1着がモノを言っての滑り込みとなった。最も登番が下の若者が、なにも失うことのない戦いに臨む、と考えると、これは意外と怖い。悔しさにまみれた先輩たちの分まで、思い切った走りをしてほしい。

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 予選トップ争いも、比較的淡々と決まった感じだ。11Rは、その時点で暫定1位と2位だった前田将太と片橋幸貴の直接対決にはなっていたが、前田の逃げは片橋を寄せ付けることがなかった。前田は3連続逃げで優勝という、いわゆる王道ラインに乗っかっていたわけだが、その第一関門をしっかりとクリアすることによって、優勝がぐっと近づいてきたかたちとなっている。レース後の前田は、まあ淡々としていた。2号艇の岡村慶太と談笑にも近い感じでレースを振り返っていたその姿は、なんとも余裕綽々なのであった。雰囲気的にも超抜である。

 結果的に予選2位となった篠崎仁志も、さすがの風格である。正直、今節はどこかピリピリとした空気を感じたものだが、レース後もそんな雰囲気を漂わせつつ、2位で予選を終えたことに満足しているようでもあった。ただ一人のグランプリ経験者は、やはりたたずまい自体が格上である。

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 それにしても、評判機があったり、大健闘するルーキーが何人か出たり、さまざまな見どころがあった予選道中なのに、終わってみれば前田将太と篠崎仁志というSGクラスがワンツーフィニッシュとなるのだから不思議なものである。GⅠ覇者である中田竜太も5位につけているし。マスターズではなんだかんだで今村豊が優出してくるように、やはりSGで揉まれている選手とそうでない選手には、どこかに圧倒的な差が生じるということなのか。去年も仁志、桐生順平、岡崎恭裕が順当に優出しているし。あくまでピットで見る雰囲気だと断わったうえで、たしかに仁志や前田には何か違うものを感じる。これが格というものなのか。

 明日の準優が順当に決まれば、優勝戦の内枠を前田と仁志が占める。その間隙を突くものがあらわれるかどうか。108期以降のルーキー世代が、準優の半分、9つの枠を占めている。彼らの何をも恐れぬチャレンジに期待してみたいのだが、果たして。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)