BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡ヤングダービー優勝戦 私的回顧

順当なミラクルV

 

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12R優勝戦

①中田竜太(埼玉)09

②木下翔太(大阪)06

③大上卓人(広島)07

④片橋幸貴(滋賀)06

⑤椎名 豊(群馬)08

⑥仲谷颯仁(福岡)08

 

 すべてゼロ台、美しい横一線のスリットライン。まずは6人の見事な集中力に拍手を送りたい。で、これだけ鮮やかに揃ってしまえば、1マークの主導権はイン中田に一任される。格、腕、足の違いが如実に反映される。最内からしっかり加速し、まくらせず差させずの絶妙なスピードで1マークを先取りして、そのまま他艇を置き去りにした。初日ドリームをイン逃げ、最終日のファイナルもイン逃げ。銘柄級のV候補たちが続々と戦線離脱する中、優先順位1位の大役を最後まで全うした。これぞ格上の貫禄。

 

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 後続の争いも2着・片橋、3着・木下で早々に固まりつつあったが、2周1マークでよもやのアクシデント。その手前、内にするすると切り込んで嫌味を見せた木下に対し、片橋はこれを全速の抱きマイで交わそうとした。が、相手が相手だけにわずかな焦りがあったのだろう。初動からハンドルを入れるタイミングがワンテンポ早まり、ターンマークに激突して転覆。さらに木下が乗り上げ、避けようとした大上も接触してエンストに近い状態に。さらにさらに椎名が避けきれずに落水。4艇が玉突き事故に巻き込まれる中、ギリギリこの事故を回避できた仲谷が大逆転の2着をもぎ取った。

 

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 大惨事の発端となった片橋は大いに反省し、今も落ち込んでいることだろう。若気の至りというか、レーサーとしての未熟さを露呈したわけだが、大いに反省しながらこの失敗を明日に生かしてほしい。中田以外の5人はすべてルーキー世代。これから、より大きな大舞台でシノギを削るべき面々なのだから。

 

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 勝者に戻ろう。最近の中田の強さは、多くを語る必要もないだろう。4月の丸亀GI京極賞を211121①という凄まじい成績で制したのも記憶に新しい。つい1年ほど前まで埼玉支部の若手は「桐生順平がアタマひとつふたつリード、黒井達矢、秋元哲、中田竜太、佐藤翼が横一線で続く」という感じで見ていたのだが、そこから中田が一気に抜け出し桐生の背中に肉薄した感がある。今日の優勝で賞金ランキング9位。GP18位への当確ランプも点灯し、まさに3位の桐生の背中が見えた1日にもなった。

 

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 ではでは、今節の優勝へとつながる最大の転機はどこだったか……やはり、昨日のウルトラE難度の“換わり全速、大逆転スーパーターン”だと私は思う。4カド椎名の絞りまくりを浴び、さらに自分の内に2艇が舳先を並べて身動きがままならぬという絶体絶命の大ピンチ。そこから瞬時にレバーを握り、内をまくりながらの換わり全速。バック直線では自分を引き波にハメた椎名をぐんぐん追い上げ、マイシロがないまま2マークを強引に先取りしてそのまま先頭に立つ(決まり手は「まくり」だ!)という、そのすべての光景がミラクルだった。わずか半周の中に凝縮されたありえないような大逆転劇は、今日の優勝とともに、いや優勝したからこそ多くの人々に語り継がれるだろう。中田竜太=蒲郡のミラクルスーパーターン。記憶力がゼロに近い私も、しっかりと脳みその襞に刻み付けておこう。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)

 

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