(モーター抽選前のつぶやき)
我が家からママチャリで15分、待ちに待ったマイガーデン平和島でのダービーである。もちろん、モーター素性も我が子のようにしっかり把握している……と言いたいのだが、今月のBB誌にも記したとおり、非常に重要なモーターの良否を未だに掴みきっていない。つい2カ月前まで「間違いなく怪物級」と思っていた不動のエース19号機だ。8月のオール女子戦で転覆してペラ交換をしてから、自慢の行き足~伸びが急落。その後もはっきりとした復調気配が認められないまま今に至る、という感じである。前節、F2持ちの向井田直弥がスリットからいい感じで伸びているようにも見えたし、全盛期の19号機にはまだまだ遠い気もしたし……。
この不動のエース機の失墜(と言っても、出足系統も含めて上位級ではあるが)を尻目に、ゴキゲンな行き足~伸びを維持しているのが10号機。とりわけ前々節の新良一規のパワーは圧巻の一語で、初日から「全部の足が凄くいい」といい続けたまま見事に優勝を掴み取っている。前節・岩谷真の4、5日目がサッパリだったのがやや気になるが、特に部品交換があったわけでもなく、シリーズの主役を張ってくれることだろう。私の中では「古豪19号機vs安定の10号機」が、今節の一大テーマだな。2連率の1・2位モーターなので、舟券の妙味はまったくないけれど……。
とりあえず、私のモーター番付を記しておこう。
◎10号機
○19号機
▲30号機
△46、51、58、66、67、69、70号機
(いざ、抽選会へ!)
さあ、天下分け目のモーター抽選会のはじまりはじまり。
10号機&19号機は誰の手に!?
ワクワクしつつ競技棟に行くと、入り口で中村亮太と出くわした。いろいろあって、3年ぶりの再会だ。
「(長い休みの間)バーテンダーとかしてました。ギリギリ生活できるくらいは稼ぎました(笑)」
あれこれ世間話をしてから、私のモーター番付が書かれたノートを覗き込んで「◎10号機」の文字を指さした。
「これ、引きますよ。これか、僕がここで優勝した46号機。どこでもいいモーター引けてるんで、どっちか引きます!」
力強く宣言して、亮太は会場へと向かっていった。
いざ本番。まずは早めに2カ月前までの絶対エース「19」がガラポンから飛び出した。引き当てたのは、魚谷智之! だがしかし、スタッフが大声で「じゅうきゅう!」と叫んでも、選手間のリアクションはほぼほぼゼロ。これぞ地に堕ちたという風情で、過去の栄華はどこへやら……が、19号機の底力は絶対に侮れないぞ。しかも近況絶好調、どこの場でも水準以上のパワーを引き出している魚谷ならば、完全復活も夢ではない。前検の足合わせから、魚谷19号機の気配を凝視するとしよう。
一方、19号機に代わって「平和島のエース」という下馬評が高まっている10号機は、なかなかガラポンから出てこない。で、残り7人ほどになって颯爽と取っ手を回したのが中村亮太だ。有言実行、10号機を引き当てるのか!? 気合満面の亮太の眼前にポトリ落ちた数字は……「38」だった。
「うーーーん残念、まだ残っとったんに、ねえ」
我々の元に歩み寄った亮太は、心の底から悔しそうな顔でこう言った。が、38号機はBBスタッフの三島が注目している秘蔵っ子モーターだ。「準優に乗れればGPシリーズが見えてくる」と語った亮太にとって、悪くはない相棒だと思う。
そしてそして、亮太の次の次にアレを引き当てたのは、篠崎仁志。スタッフが「じゅうばんと告げた瞬間、ほとんどすべての選手が「うわーーー!」「出たーー!!」などの声を上げた。魚谷19号とは雲泥のリアクション。平和島のパワー相場が2カ月でこれほど変わったのに驚きつつ、私はうんうんと頷いていた。魚谷19号機vs仁志10号機。ツートップを駆るに相応しい役者が揃った。
「えへへ、すんません」
大魚を射止めた仁志は頬を緩めつつ、次にガラポンを回した石渡鉄兵に詫びを入れた。さらにラストバッターの角谷健吾にも頭を下げると、今節の選手班長は苦笑しながら叫んだ。
「ここは平和島なんだぞーー!!」
うーん、地元レーサーの気持ち、痛いほどわかりますっ!
平和島の注目モーター
★★★10号機…篠崎仁志
★★★19号機…魚谷智之
★★30号機…秋山直之
★★46号機…石野貴之
★★51号機…白水勝也
★★69号機…久田敏之
★58号機…深川真二
★66号機…中田竜太
★67号機…松井 繁
★70号機…茅原悠紀
穴38号機…中村亮太
(text/畠山、photos/シギー中尾)