勝利者インタビューから戻った篠崎仁志の周りに、瞬く間に人の輪ができた。10号機を引いて注目された仁志が、やっと1着を手にしたのだ。報道陣が色めき立つのも当然だ。昨日は、おそらくそれが理由の苛立ちを仁志には感じたものだが、これで少しは溜飲が下がっただろうか。もっとも、取材に応える様子も、その後の様子も、仁志は淡々としたもの。少しは気が楽になった部分はあったとしても、まだまだ気を緩める様子はない。まあ、当然だけれども。
やはり報道陣に取り囲まれたのは、久田敏之だ。無傷の4連勝! まだSGキャリアがそれほどない、力はもともとあったけれども決して派手な存在とは言えなかった久田が、この舞台でド派手な活躍を見せているのだ。彼を囲む輪の大きさは、仁志以上だったかもしれない。
他の選手たちも、久田の猛活躍には感じるものがあるだろう。多くの選手が笑顔で声をかけ、久田はひたすらニコニコと応えていた。仲のいい選手からは、からかうような祝福の声もあったかも? 群馬の大先輩である青山登さんも愉快そうに声をかけており、久田の顔から笑顔が消える時間は本当に短かった。
一方で、溜息が聞こえてくるような表情だったのは、笠原亮だ。仁志のまくりに合わせに行って、出口あたりではしのいだようにも見えたが、2マークまでに舳先を抜かれてしまった。悪いレースではないと思うのだが、足の差を見せつけられるかたちでの2着は憂鬱しかないだろう。12R発売中までペラを叩いていたが、鬱憤を晴らす糸口は見つけられただろうか。
11Rの岡崎恭裕も、ピットに上がるや、力弱くうなだれる場面があった。1マークを出たところでは先頭に届くかという雰囲気もあったが、逃げた今垣光太郎には届かず、角谷健吾にも抜かれて3番手に下がってしまった。落胆しないほうがおかしい。
エンジン吊りのあとも、ヘルメットをかぶったまま、勝負服も脱がず、瓜生正義、江夏満と長いこと話し合っていた。その後、今垣光太郎がレース後の挨拶をしに近寄ったが、一瞬だけ心ここにあらずというふうに今垣に気づかない、というシーンもあった。悔しくてたまらない、そんな気持ちがはっきりと伝わってきた。
昨日までは堅調ながら、外枠2走で着を落とした齊藤仁も、力ない表情を見せていた。レース直後は歯を食いしばるような表情で、着替えた後は落ち込んでいるのが明らかだった。桐生順平と長く話し込む場面もあった。好漢・仁ちゃんだが、胸に秘めるものは熱い。家族ぐるみの付き合いもあるという森高一真がそう強調していたこともあった。
で、今日はその森高と電話で話す機会があって、「仁さんとは、最低でも暮れの住之江は一緒に出たいんや」と繰り返し言っていた。そんなことを言ってましたよ、と伝えると、「その思いは伝わってます。ここに来る前もハッパかけられましたしね。もちろん、やるだけです」と力強い表情を見せた。今節中に二人が話す機会は皆無だけれども、熱い思いでつながっているのは間違いない。明日の勝負駆けは、燃える齊藤仁が見られるはず!
さてさて、前半で書いた中村亮太の「フェイクモンキー」は「シャドウモンキー」と名付けることになりました。亮太曰く、「初動を入れる前に立ち上がってるんです。ショドウの前だから、シャドウ」。シャドウ、シュドウ、ショドウ……なるほど、シャドウはショドウの2つ前だね(笑)。まだまだ発展途上ではあるとのことで、なお磨きをかけていくとのこと。シャドウモンキーの中村亮太をよろしく(笑)。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)