BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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平和島ダービー 準優ダイジェスト

エースのブライド

 

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10R

①魚谷智之(兵庫)15

②桐生順平(埼玉)18

③角谷健吾(東京)13

④前本泰和(広島)14

⑤井口佳典(三重)12

⑥山田康二(佐賀)16

 

 スリットほぼ横一線に見える中、2コース桐生だけがわずかに凹んでいる。そこからジリジリ伸び返してはいたが、差しのハンドルを入れる寸前に角谷のツケマイ気味の攻撃をモロに浴びた。その引き波で艇が大きくバウンドして万事休す。そんな攻防を尻目に、インの魚谷は過不足のない絶妙のターンで1マークを先取りし、危なげなくファイナルのファーストチケットを手中にした。

 

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 ターンの出口で早くも焦点は2着争いに。鋭い先制攻撃を繰り出した角谷が有利かと思ったが、4コースからブイ際を差し抜けた前本のスピードが素晴らしい。バック中間で2艇の舳先がぴったり並び、内の前本が2マークの手前まで角谷を徹底的にブロックして反撃の芽を消し去った。準優らしい、激辛の2着獲り。魚谷19号機の強さと前本の隠れ超抜パワーだけが際立つレースだった。

 1着・魚谷、2着・前本。

 

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 今日も魚谷19号機の足色は盤石。戦前からの見立て通り、全部の足がA+レベルで弱点が見当たらないパワーだ。明日が外枠だったりしたらもうひと伸びが必要かも知れないが、スロー水域なら起こしからしっかり主導権を握れる好バランスの仕上がりだと思う。

 前本の足は2日目あたりからぐんぐん上昇し、今日の仕上がりがいちばん良かったと思う。予想でのパワー評価はAだったが、前を行く魚谷に引き離されることなく追撃した足色はA+が相応しいだろう。現状では特にターン回りを含めた出足系統が強力で、ストレートは中堅上位から上位まで。外コースから自力でインまで攻め潰すほどのパンチ力はない。明日はそこを求めて調整するか、あるいは現状の足を維持して前付けやマーク策に出るか。微妙な枠番だけに、その動向に注意を払いたい。

 

がばいワンツー決着

 

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11R 並び順

①久田敏之(群馬)+02

②峰 竜太(佐賀)03

⑤深川真二(佐賀)05

③松井 繁(大阪)06

④吉田俊彦(兵庫)06

⑥守田俊介(滋賀)15

 

 うーーーん、「好事魔多し」と言うべきか。破竹の4連勝からシリーズを引っ張ってきた久田が、大舞台で勇み足に散った。スタート特訓も含めて進入争いからもつれにもつれたため、起こしのタイミングを計り損ねたか。気合と緊張がそのままスリットに反映されたのか。残念な結果ではあったが、SGでの4連勝という自信とともに今後への肥やしにしてもらいたい。

 

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 バックで先頭をひた走っていた久田が戦列から離れ、後続の選手たちがふたつの座席を争うことになった。断然優位は2コースから差して順走の峰竜太。その外、2艇身後方に同県の深川。さらに2艇身遅れの最内から松井。あとは千切れて、実質この3人に絞られたと言っていいだろう。

 2マークの手前、もっとも不利な態勢の松井が動く。直進する佐賀コンビを右に見ながら、ハンドルを左に切って一目散に2マークを目指した。おそらく、先頭の峰を牽制しながら2マークを先取りし、流れながらもしぶとく食い下がるという戦術だったか。ここで峰にわずかな迷いでも生じたら、王者の思う壺だったかも知れない。が、艇界屈指のスピード野郎はむしろ豪快にエンジンを噴かせて、王者の野望を強烈な引き波で粉砕した。なんちゅうスピード! きっと王者も「相手が悪すぎたか」と脱帽したことだろう。

 引き波で大きく失速した松井。その内を深川がスパッと差し抜けて準優としての大勢が決した。もっとも波乱含みで実際に大波乱が起きたこのレースを勝ち抜いたのは、峰&深川の佐賀コンビだった。

 1着・峰、2着・深川。

 

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 峰のパワーを正確に鑑定するのは難しい。ターンスピードがありすぎて、その腕力と機力の判別がままならない。私の勝手な見立てでは「日々少しずつ伸びがアップしているが、ターン回りなど出足系統は中堅上位まで」だ。つまり、どちらかと言えば伸び型。明日はスロー3コースや4カド、5カドなど多彩な選択がありそうだが、いずれにせよ自慢の伸び足は殺したくないところだろう。全国の多数のレーサーが活用しているという「峰ゲージ」。この無類のペラ巧者が、明日は自分自身のためにどんなゲージを採用するのか。伸び足と出足系統の両方をチェックしたい。

 

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 深川の足は、全部の足がちょっとずつ強めのトータル上位級か。予想欄でも書いたが、前検でのSS級の見立ては過大評価で、現状、スリットから突き抜けるほどの行き足はない(深川がより手前にシフト可能性もある)。とは言え、展開さえハマれば優勝戦でも勝ち切れるレベルでもあり、明日は出足系統を強化しながらコース戦略を組み立てることだろう。

 

シャープ&シャーク!

 

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12R 並び順

①今垣光太郎(福井)13

②白井英治(山口) 11

③山口 剛(広島) 10

④茅原悠紀(岡山) 10

⑥菊地孝平(静岡) 07

⑤坪井康晴(静岡) 11

 

 11Rに続いて、こちらも進入がもつれた。菊地の前付けアタック。スタート練習もスタート展示も同じような進入(深めの5コース)を繰り返しており、実のところ私はこれを「ブラフ、フェイントではないか」と勘ぐっていた。行くぞ行くぞと見せかけて内4艇の舳先を早めに向けさせ、1234/65という同県同期のダッシュ戦法で勝負。そんな妄想を抱いていたのだが、根が実直で直球勝負の菊地はやはり本番でも同じように深めの5コースを選択した。

 

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 スローがほぼ横並びの12346/5。スタート勘を掴みにくい隊形にも拘わらず、スリットはほぼ横一線。外から仕掛けにくい展開となり、まずは今垣が1マークを先制する。例によって強めの握りマイで旋回したところを、2コースからシャープな差しハンドルを入れた白井が力強く舳先を貫いた。2コースからの攻めが早い白井らしい決め差し。時に初動が早すぎて3コースのまくり差しを浴びることもあるのだが、今日はこの速攻アタックがモノの見事にはまった。

 バックで完全に後続が千切れ、2-1態勢が固まったかに見えた2マーク。日々気合パンパンのレースを見せている今垣が、かなりリスキーな強攻策を繰り出した。白井への強ツケマイ。白井がそれをナチュラルにブロックし、今垣の艇が外へと流れる。嗚呼、2日目の勝利インタビューで「(チャレンジカップへ)優出条件ですから」と最低ノルマを宣言したというのに、2着獲りなんぞはお構いなしに白井を握りつぶそうとしたのである。

 

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 2周ホームは一転して熾烈な2着争いに。内から山口、坪井、今垣の3艇がほぼ横一線になったが、頭ひとつ抜けていた今垣が2周1マークで坪井を引き波にはめ、なんとか2着をもぎ取った。念願の優出までかなり遠回りしたような気もするが、そんなこんなも含めて光ちゃんらしい2着だったと思う。

 1着・白井、2着・今垣。

 

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 白井の足は、前検から下馬評と数字を上回っていた。前検では行き足主体にストレート系が目についたが、今日の差しを見る限りターン回りもかなり軽快だ。現状のままでも明日はいい勝負になりそうなのだが、魚谷を同じように差しきれるかどうか……白井のスピード差しをもってしても難しいと思っている(←19号機フェチの贔屓目かも?)。ただ、6号艇に深川がいてコース戦略から難解でもあり、スリット同体の1・2コースから行った行ったの展開にならない可能性も多々あるな。そのあたりの戦略も含めて、現状のパワーをしっかり維持できれば2度目のSG戴冠も十分にありえるだろう。

 今垣の足はバランス型の中堅上位~上位の間くらいか。今節はパワー云々の前に気持ちで勝ち抜いてきたイメージが強く、明日もハナから自力で攻めたてる戦法を最優先に考えるだろう。伸び足を強化して5カドからスタート勝負に出るか、逆に出足~行き足を強化して深川をブロックしながらスローで勝負するのか。台風が近づく中、優勝戦のスリットでも台風を巻き起こすのは、この男ではないかと思っている。(text/畠山、photos/シギー中尾)