BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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平和島ダービー 優勝戦私的回顧

名脇役の快挙

 

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12R優勝戦 並び順

①魚谷智之(兵庫) 15

⑥深川真二(佐賀) 14

②白井英治(山口) 17

③峰 竜太(佐賀) 20

⑤前本泰和(広島) 19

④今垣光太郎(福井)49

 

 丸亀オーシャンカップの峰竜太、若松メモリアルの寺田祥、そして……唐津のインファイター深川真二が「悲願のSG初制覇リレー」のバトンをガッチリ受け取った。おめでとう!!

 

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 文句なしの激闘、掛け値なしの名勝負だった。まずは進入だ。午後のスタート特訓、スタート展示ともに、6人がさまざまな駆け引きを繰り広げた。もちろん主役は深川なのだが、練習と展示は5コース、4コース、4コースまで。ただし、90m起こしだったり75m起こしだったり、「本番はわからんぞ」という怪しい気配を漂わせていた。

 いざ本番、深川は行った。オレンジブイを回ってからスーーッとスピードを速め、2マークの手前で一気に加速。インを奪う勢いで舳先をスタート方向に向けた。

「カッコイィィィ!!」

 スタンドの若者が叫ぶ。これぞ深川真二。もちろん「イン死守」を宣言している魚谷もくるりと応戦して艇番を主張する。これを見据えながら白井、峰、前本はゆっくり真横に流し、余力あるスローを選択。さらに、伸び型にシフトしたであろう今垣だけが単騎のダッシュに構えた。どのコースにも勝つべき言い分がありそうな進入隊形。

 

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 12秒針が回り、アウトの今垣からレバーを握りはじめた。魚谷と深川の起こしは100mジャスト。私が想像したより、かなり楽な起こしだ。他艇が深川への抵抗を緩めたこと、11Rあたりから吹きはじめた穏やかな向かい風、それが両者にとって幸いしたかも知れない。

「100か、100なら逃げきれるだろっ!」

 誰かが叫ぶ。その言葉通り、スリットに向かう魚谷と深川の足取りはしっかりしていて、むしろ外の艇よりも力強く見えた。出足~行き足が強い19号機と58号機の成せる業か。スリットを軽快に通過したふたりが一目散に1マークを目指し、まずは魚谷が豪快なインモンキーを繰り出した。昨日同様、それはまくらせない差させない完璧なターンに見えた。

 

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 が、深川の差しも凄まじい。ほとんどスピードを落とさず、一発でハンドルを切るような鋭角ターンでブイ際を舐めた。逃げる魚谷の内懐に、わずかに舳先が引っ掛かる。抜ければ魚谷、抜けなければ深川に分があるバック一騎打ち。昨日の19号機を見る限り、ここから舳先を振り切るのでは、と見ていたのだが、深川の舳先は楔を打ち付けたように離れない。まったく同じ足色。今日の深川58号機のレース足は、魚谷19号機と同じほど強かった。

 

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 舳先半分の態勢をキープしたまま、深川が2マークを先取りし、魚谷が差して逆転を狙う。その差は2艇身。2周1マーク、深川がややターンマークを漏らし、今度は魚谷の舳先が届く。その後の足は、またしても同じ。今度は魚谷にサーブ権が回ったかに見えたが2周2マークの手前で深川が強引に締め込み、渾身のターンで魚谷を振り切った。本当に、わずかなレース足の違いだけで勝ち負けが入れ替わるような、息を吞むような激闘だった。

 

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 ゴールを通過する瞬間、深川はさりげなく右手の人差し指を突き立てた。深川らしい喜びの意思表示。SG常連として定着している深川だが、常に主役というよりは個性派の脇役というイメージが強い。コワモテの顔、変幻自在の進入、SG優勝戦でいきなりチルト3度を履くようなお茶目な性格。個性派の脇役でありながらどこか華があり、SGにはなくなてならない存在だ。だがしかし、いや、だからこそSGのてっぺんを獲れるかどうか、は微妙な立ち位置のレーサーだとも思っていた。仲口や守田、白井、峰のように「SGにもっとも近い男」と呼ばれたこともなかっただろう。右指一本。その慎ましすぎるガッツポーズを見て、私はなんだかとても嬉しい気持ちになっていた。そう、名脇役だってアカデミー賞の主演男優賞になることがあるのだ。

「(魚谷の猛追に対して)しつこいんっすよ、ほんと、ガハハハ」

 表彰式のインタビューでも、深川はいつもと同じように飄々と、時にギャグをかましながらファンの心を魅了した。泣き虫の後輩とは真逆の、人を食ったようなポーカーフェイス。それがまた深川らしい。うん、ファンを大爆笑させた優出インタビューも大胆不敵な進入もドキドキハラハラの連続だった道中も6号艇での優勝も右指1本も表彰式でのしれっとしたドヤ顔も、すべてが人間臭くて深川真二という男らしい、実に心地よい深川オンステージだった。本当におめでとう。今後も長きに渡って、変幻自在な戦法とともにファンを沸かせ、陸の上では泣き虫の後輩とともに捧腹絶倒の“コンビ漫才”をやり続けてもらいたい。

 

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 あ……最後に私事をひとつ。このブログを執筆してン年、はじめて『穴・極撰』→優勝戦予想のコロガシが成功した。深川真二さまさまなのだが、またしてもミリオンアタックは2・3着が逆で惜しくも失敗(6-2-1の47枚に対して、6-1-2は7枚でひた。でも6-1-3は1枚もなかったから、良しとしましょう!)……でもって、レース後に気づいたのである。

――ミリオンを狙うために何も考えずに最高値の6-2-1を選んだけど、6-1-2を47枚でも余裕で100万超えだったじゃん!!!

 俺の、バカチン。(text/畠山、photos/シギー中尾)