BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――初出場!

 

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 似合ってるね! 初めてグランプリジャンパーを着込んだ中田竜太に声をかけたら、「マジっすか!?」とにっこり笑った。40倍もの競争率を勝ち抜いて養成所に入り、1年間の厳しい訓練を経てプロデビューするレーサーたちは、すでに選ばれし者と言って差し支えないが、グランプリジャンパーに袖を通せる選手はそのなかでも特別に選ばれし者である。そのジャンパー自体がその証し、なのだ。

「グランプリうんぬんよりも、この色のほうが僕は好きですね」

 なんて会見で言っていた中田だが、もちろん限られた者しか着ることのできないウェアであることも認識はしているだろう。

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 森高一真もこのジャンパーをついに着ることとなった。チャレンジカップ制覇でも着られなかったし、彼のこの舞台への思いも聞いていただけに、その姿を見ることは実に感慨深い。いやあ、なかなか似合ってんじゃないのよ~。

「そんなことより、ワシだけ下がるんじゃ! こんなことってあるか!?」

 どうも今日の感触はひどい部類のものだったようだ。スリットから1マークまでが明らかに分が悪いのだ。グランプリに使われるモーターは上位機のはずなのに、完全に伸びで劣勢なのだという。森高の引いたモーターはもともと伸びより出足、という特徴のようなのだが。

 もちろん、望みは捨てていないし、シリーズに回るつもりは毛頭ない。「明日はようなってるやろ!」。笑いながら控室に消えていった森高なのだった。

 

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 グランプリ初出場は、あと深川真二と前本泰和。ふたりのグランプリジャンパーも見たかったのだが、これが揃って着用せず、なのであった。前本は通常のSGジャンパーを着ていたし、深川はダービーやチャレンジカップでも着ていたウェアだったし、ようするにまったくいつも通りの装いでグランプリの舞台に立っているのである。特別な舞台ではあるが、自然体、平常心で臨むのが彼ららしい、ということになるか。「SGでも一般戦でも、一走一走、すべて一緒」という深川の言葉を改めて思い出された。そうしたし背もまた清々しい。

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 シリーズのほうに目を転じると、やはりSG初出場の若武者に目を奪われる。木下翔太、羽野直也、仲谷颯仁。3人が3人とも、真新しいSGジャンパーを着用して作業に励んでいた。グランプリジャンパーも特別だが、若者たちにとってまず目指すのが、このSGジャンパー。自力で出場権を勝ち取ったわけだから、誇らしい気持ちは当然、あるだろう。羽野はGⅠ制覇を果たしているから、来年のクラシックの出場権はすでにある。まさに今日が今後常連となっていくはずのSGロードの第一歩だ。木下と仲谷も、SGジャンパーに袖を通したことで、さらに決意は新たになったことだろう。彼らは初めて、グランプリを目の当たりにすることになる。それが彼らにさらに刺激を与えるはずである。

 住之江が地元のアナウンサー、内田和男さんは、デビュー時から、いや養成所時代から木下を注目して見てきた。それだけに、SGジャンパーを着る木下を見て、しみじみと感慨がわき上がってきているようだった。彼らはそうした人たちの期待も背負って、この舞台を走る。まずは健闘を期待しよう。

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 スタート練習、タイム測定を終えた選手たちは、多くの選手が早くも作業を本格化させていた。前述の森高も整備室にこもりギアケース調整。いちばん忙しそうだったのは石野貴之で、整備室とエンジン吊りのために駆けつけるボートリフトを全力疾走で行き来するのを何度も何度も見かけた。石野が引いた7号機は、上位6基のなかでは最も評価が低いモーター。地元の石野はもちろんそれを熟知しており、というかお盆開催で自分が引いており、最も引きたくないモーターであった。それもあって、レースは3日後であろうとも、一分一秒たりとも無駄にできないわけである。レースのない明日明後日も、整備に駆け回る石野を目にすることになるだろう。

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 ペラ叩きが早くも本格化していたのは松井繁だ。グランプリのために1年間のすべての時間を費やす松井である。まぎれもない勝負どころ、なのである。明日は11Rに出走だから、たっぷり時間がある……かといったら、松井にはそういう感覚はないだろう。会見では、ネガティブなコメントはなかったものの、景気のいいコメントも特には聞かれなかった。ならば、大きくポジティブに振れるべく、早くから調整に没頭するのは王者としては当然であろう。鬼気迫る、というほどではないが、強い気持ちが伝わってくる姿ではあった。

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 対するに、白井英治からは余裕が感じられた。エース12号機を引き当て、前検の感触も悪くなかったようだから、当然そうなるわけだ。明日、明後日をびっしり調整にあてられるのも大きいだろう。畠山がまたガセネタつかませてませんか、と尋ねたら、ニッコニコで「大丈夫!」と返してきている。調整の方向性もつかんでいると見て間違いないだろう。今日も51kgで入ってきた白井。3年前の優勝戦1号艇での敗退、その借りを返す可能性は低くないと見た。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)