BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@グランプリ――過酷なトライアル1st

 

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 終盤の時間帯になって、追い風が強めになり始めた。午前中は風もなく、過ごしやすいピットだったが、風が吹き込んでくるとさすがに寒い。10R発売中にはピットの寒暖計は10度を超えていたが、12Rが始まるころには一気に8度まで下がっている。グランプリらしい、冷たいピットとなっていた。

 これが結果に影響してしまったのが、松井繁だ。11Rは先に回ったが茅原悠紀に差されて2着。松井自身、会見で「追い風の分、この結果になった」と語っている。2着12点で、明日を優位で迎えられるのは確かだが、やはり勝っておきたかったところ。プロペラがまったく合っていなかったという点も含めて、レース後はややナーバスになっているように見えた。

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 これに対して、勝った茅原悠紀は表情が柔らかくなっていた。リフトから控室に戻る際には、深川真二と肩を並べて和気あいあいの様子。深川は時に苦笑交じりの笑顔ともなっていたが、茅原のほうは気分が悪かろうはずがない。優勝した3年前もトライアル1st初戦で1着。開会式で「またランボルギーニを買います」とも宣言したわけだが、あのときの再現に一歩近づいたとは言えようか。

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 11Rでもっとも感情をあらわにしていたのは、田中信一郎か。エンジン吊りが終わり、控室へと足を踏み出した瞬間、田中は天を仰いだ。それは明らかに悔恨の仕草と見えた。そして田中はうつむいて、そのまま控室まで力なく歩いている。これは落胆の仕草としか見えない。特別な思いで臨むグランプリ。引いたモーターにはそれなりの手応えを感じ、勝ち上がっていく青写真もあったはずが、まさかの初戦5着。開会式では「大阪支部に黄金のヘルメットを」と語ったわけだが、そこにもう一言付け足すならもちろん「自分が」ということになるはずだ。その出だしで得点を稼げなかったのは、痛恨事に違いない。

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 12Rは毒島誠が快勝。大きな整備をして臨んでいるが(いわゆるセット交換+クランクシャフト交換)それがひとまずは実った格好か。控室へと戻る毒島の表情からは安堵が感じられ、2着の菊地孝平に声をかけられて頬もゆるんだ。整備に時間がかかったため、プロペラを煮詰める余裕がなく、その部分でまだ納得はできていないようだが、明日はそちらに専念もできるだろう。ちなみに、3年前のグランプリ、すなわち2ステージ制元年のトライアル1st第1戦は茅原と毒島の勝利であった。茅原は再現を目指すが、毒島は今度こそ自分が、といったところだろう。

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 このレースでは魚谷智之が落水。レスキューがすぐにピットへと戻ったので、容態が心配されたが、枠番抽選には特に傷んだ様子もなくあらわれている。田中が心配して声をかけると、大丈夫ですとも。落水直後とあってかなり寒そうにしてはいたが、まずは安心していいだろう。ただ、選手責任で減点が課せられ、1st突破は絶望的ともなってしまった。トライアル1stの得点はシリーズに持ち越しとなるので、明日は少しでも得点を稼いでほしいと願う。

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 この落水に絡んだかたちとなった中田竜太は、かなり切羽詰まった表情となっていた。大袈裟に言えば、顔面蒼白、だった。5着という結果に対してというよりは、事故に絡んでしまったことに対してのものに見えて、それは落水となってしまった魚谷への気遣いのように感じた。たった2走の短期決戦で、絡んだ相手が落水。中田にはもちろん減点などはなかったが、しかし後ろめたさが生じてしまってもおかしくはない。まして初出場の若者なのだから。とにかく中田には、それを明日には引きずってほしくない、と思う。得意の2号艇である。存分にいつものレースを見せてほしい。

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 さて、グランプリといえば枠番抽選。今日も12R終了後に、トライアル1st第2戦の枠番抽選が行なわれた。なんとなく例年よりもピリピリした空気に思えたのは気のせいか。A組で隣同士にすわった茅原と菊地が談笑していても、他の選手の表情がほとんど変わらない。トライアル1stの過酷さが感じられたのだが。

 まずはB組からの抽選。最初に引いた毒島が3号艇で、2番目の松井が5号艇。松井は口元に笑みを浮かべてはいたが、どう見ても不満の表情。それをあらわにしないのが王者らしさか。つづいて引いた原田幸哉も、特に大きなアクションを見せたわけではないのだが、顔が明らかに引きつっている。それを見た菊地が「6でしょ! 顔でわかった」とからかって、原田の顔いっぱいに苦笑が広がったのであった。

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 3人が引き終わってまだ内枠が残っている。最後に引くことになる森高一真をふと見ると、なぜかそっぽを向いている。篠崎仁志が4号艇を引いた時もそっぽ。そして中田が抽選機を回しだしても見ようともしない。明らかに願ってるな、白を(笑)。目はよそを向いていても、耳はダンボになっているようで、中田が黒を引いた瞬間に森高の口元がゆるゆるになる。そして、他の選手が爆笑! 森高は嬉しいくせに「俺はええのに」などと口にして、残り服の白玉を出す。そしてやっぱり嬉しいくせに笑いをこらえて、精一杯普通の表情を保とうとしていた。JLCの勝利者インタビューでもよく見かけるヤツです。そんな森高を見て、周囲はさらに大笑い。もう、笑っちゃいなさいよ、森高一真!

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 続くA組は、まず茅原が5号艇、菊地が4号艇。さらに深川が2号艇で、ここまでは茅原と菊地がちょっと不満げかなあとは見えたが、まあ特に表情には出さないまま。溜息が出たのは4番目に引いた前本泰和で、ああ、まさかの2走連続6号艇……。レースとしては前本の6号艇は動きが生まれて楽しいのだが、前本自身の落胆を思うと胸が痛む。

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 2人を残して、こちらもまだ白玉は出ず。5番目に引いたのは田中信一郎で、出た出た出たー! 玉の色を確認した瞬間、田中は力強く拳を握り、よっしゃっ! 巻き返しを果たすための最高の枠番をゲットした。前本の前付けを受ける1号艇となるが、強い気持ちで臨むことだろう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)