BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@グランプリ――空気が変わる

 

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 確実に空気はヒリヒリの度合いを増している。たぶん気のせいではないと思う。トライアル2ndが始まる朝、やはり空気は微妙に変化を見せる。

 顔つきも明らかに変わってきた人がいる。峰竜太もその一人で、昨日までのリラックスした雰囲気は少しずつ削られてきている。まだ緊張が高まっている感じではないが、昨日に比べればやはりカタい。3日間も待ってやっと1走目を走るということも緊張につながることではあろう。もっとも、峰の緊張はもはや不安材料でも何でもない。むしろ、これが大一番を迎えたときの平常心である。

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 ガラリと変わったと言えるのは、石野貴之。朝、挨拶を交わしたときの顔を見て、完璧にスイッチが入ったことをビンビンに感じた。これは想像していたことでもある。きっとこうなるんだろう、と。ここぞというときの石野の集中力はとてつもないものになる。また、追い込まれれば追い込まれるほど自分は強い、と自任する石野は、こうした場面がむしろポジティブな状況となる。石野のその表情を見て、今年も本格的な勝負どころが来たのだと、強く実感されるわけだ。

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 井口佳典もやや雰囲気が変わったように思えた。この3日間も考え込んでいるような姿は何度も見かけられたものだが、今日は本格的にそんな感じというか、歩いているときには7割方視線が下を向いているのだ。こうした井口は初めて見たかも。どちらかといえば、力強い目線をまっすぐに向けて闘魂爆発、というイメージが井口にはあるのだ。なぜか、歩みもいつもよりは断然、遅かった。これが新たな井口の闘魂の姿、なのか。

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 菊地孝平が同じ様子だったら、「完全にスイッチが入ったな」と思うのだ。ここ一番になれば、まるで景色を完全に遮断してしまうかのように一点を見据え、脳内コンピュータをフル回転させるのが菊地らしさ。昨日まではまだ、そこまで目線は強くなかったが、今日は完全に菊地モードに突入。すれ違いざまに挨拶を交わしたときも、目を合わせず、軽く会釈しながら「うぃーす」というくらいになっているのだった。こんな菊地を見ると、背中がゾクリとする。

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 ようするに、昨日までにも燃えていた闘志が、みなもうワンランク熱くなっている、という感じだろうか。トライアル2ndスタートは、やはりひとつの区切りであり、同時に気合のギアをひとつ上げていく契機でもある。あるいは、あとはひたすら優出を目指すのみという、「ここからが本番」感とでも言おうか。

 そんななかでも、松井繁がいつもと変わらぬように見えるのもすごいことだ。今日も朝から試運転とペラ調整に励み、回転をきっちり合わせる作業に邁進しているが、つまりそれは昨日とも一昨日ともたがわぬ動きであり、また表情である。この舞台を誰よりも圧倒的に知り尽くし、そしてこの舞台だけを目指して戦ってきた男の、それはある意味で凄味だと思った。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)