シリーズ準優は１号艇の３連勝である。というか、今日は10Ｒまでイン10連勝。とにもかくにもインが強い一日だったわけだが、その流れがあるから準優もインが楽勝、というわけではもちろんない。８Ｒを逃げ切った湯川浩司の顔からは、明らかに安堵の色が見えたものだ。ＳＧ優勝戦の１号艇を何度も経験してきた湯川であっても、地元ＳＧ準優の１号艇を楽観して迎えてはいない。今節の湯川は、レース直後にはそれほど表情を変えていなかった印象があるわけだが、今日はさすがに緩やかな表情になり、重責を果たしたという思いがあるようだった。
田中信一郎は、ピットに凱旋する際にスタンドから大声援を受け、グラッツェポーズを何度も見せつけていた。地元ファンの声援は、何よりも心地いいものだっただろう。返す刀で、出迎えた木下翔太に向けてグラッツェ！ 水神祭では木下を祝う側だったが、このときは優出を祝福する木下に対して文字通りのグラッツェ、である。
予選トップの新田雄史もきっちりと押し切って、優勝戦１号艇を手にした。勝った直後はいつも通り、淡々とした装い。もちろんホッと一息つく感じもあっただろうが、新田の場合はその静かな表情の奥に、ひとつの決意を潜ませていた。
「明日は、三重が総なめにしたい」
自身はシリーズＶにぐっと近づくことができた。そして師匠だ。井口佳典との師弟Ｗ優勝という壮大なる夢が、現実味を帯びてきている。11Ｒでの井口の強烈なレースぶりは、愛弟子に触発されたものか、それとも愛弟子から発破をかけられた、なんてことがあったりするのか。いずれにしても、自身はシリーズ１号艇、師匠は見ての通りの超抜気配（12Ｒの道中で、１号艇をゲットできる目もあったのだが……）。明日は本気で総なめを狙う師弟である。その実現にはもちろん、まずは新田が勝たねばならない。
２着組には、ふたりのトライアル１ｓｔ組が食い込んだ。まずは前本泰和。萩原秀人にハメられたかと思ったが、きっちりと残して優出を果たした。前本は、会見で意気込みを問われ、「シリーズなんですけど」と前置きして優勝を目指す旨を語っている。優出してもなお、トライアル２ｎｄに進めなかった屈辱は消えてはいないようだ。明日はそのプライドが怖い。進入からハッスルすることだろう。進入からハッスル？ そう、深川真二も優勝戦に駒を進めた。道中は中田竜太、坪井康晴と大激戦の２番手争いを繰り広げ、深川が捌き切ったのだ。さあ、優勝戦が面白いことになった。前本４号艇、深川５号艇。これは枠がひとつずつ内だが、あの珠玉の名勝負となったダービー優勝戦と同じ並びである。結果は、前本が入れる形になり、２コースを獲り切った深川が優勝。前本としては同じ轍をふむのは避けたいところだろう。そして深川は「進入？ 行きますよ。起こし？ 何ｍでもかまいません」といつも通りの動きを見せると宣言している。シリーズも激戦必至！ なお、深川は１便バスに乗ろうとしたのだが、それをやめて会見にあらわれている。男気！
６号艇は中島孝平。レース後はやはり飄々とした感じだったが、「この足ならチャンスはあると思う。以上！」と会見では力強く締めくくっている。「以上！」と声を張り上げたときには、ちょっと笑っちゃいましたが。ただし、このときは６号艇になるということはわかっていない。結果的に全員がＳＧウィナーという超豪華な優勝戦で、外枠に前付け必至の選手がいる。さあ、中島はどう考えるか。戦略が当たって６号艇で勝ったとしても、レース後はきっと飄々としているんだろうけど。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
