BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――シリーズ優勝戦終了!

 

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 新田雄史がいきなり両腕を上げる。前触れもなく突然繰り出されたド派手なガッツポーズに、スタンドがおおいに沸く。

 その瞬間、ピットでレースを観戦していた選手たちは別の理由で沸いていた。

「タッチだよ!」

「スリットに乗っているように見えた!」

「切ってたら1年アウトだよ!」

 詳しいレース内容は畠山に譲るとして、新田のスタートタイミングはコンマ01。ギリギリまで攻めた結果、手繰り寄せた2つ目のSGタイトルである。

 優勝選手インタビューが終わり、ピットに戻ってきた新田を、師匠の井口佳典が出迎える。今日は一日中、眉間に皺を寄せていた井口だが、このときだけは険しい顔もスッキリ。

「泣いてるんじゃねえよ!」

 と冷やかしながらも弟子を労っていた。

 

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 後のインタビューによると、新田はレース前から緊張していたという。「進入が深くなりそうで、田中信一郎がカドを選ぶとヤバい」というのが戦前の悩み。そして進入はマイナスイメージどおりの隊形になった。

 準優勝戦のメンバーと進入隊形なら、スタートで少々遅れても何とかなった。しかし今日は後手を踏んだら100%叩かれる。その気持ちが、コンマ01のスタートになった。

 

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「神様に見放されてないなと思いました」

 新田は正直に感想を述べる。そして、

「もしも切っていたら何年も引きずることになったと思うので」

 と安堵している。

 実際にSG優勝戦のペナルティは甚大。斡旋だけでなく、精神的なダメージも大きい。今年続いていたという「いい流れ」をブッタ切ることになっただろう。クリスマスイブ、神様にもっとも愛されたのは、本当に新田だったのかもしれない。

 ただフライングかもしれない状況でも、「ターンは冷静にできた」という。ここが単なる神頼みとは違う。

 

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 天下り(トライアル1st落ち)組を蹴散らして、シリーズ優勝を飾った新田。

「4年前のSGはまぐれだったけど、今回は力がついたかなと思いますね」

 選手間でも「SGは2つ取ってホンモノ」とよくいわれるが、これで名実ともにホンモノのSGレーサーとなった。

 2018年は新田の活躍に期待だ!

 

(TEXT/姫園 PHOTO/池上一摩)