BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル第3戦ダイジェスト

 

パーフェクトロード

 

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11R 並び順

①松本晶恵(群馬) 03

②遠藤エミ(滋賀) 03

⑥山川美由紀(香川)06

③川野芽唯(福岡) 07

④樋口由加里(岡山)05

⑤寺田千恵(岡山) 08

 

 讃岐の勝負師・山川がピットアウトから激しく動いて3コース奪取。3~5号艇はそれなりに抵抗しつつ、「これも想定内」という風情で山川の勝負手を受け入れた。最終隊形は126・3/45。内3艇がズンズン深くなってほぼ80m起こしというスリリングな進入になったが、松本も遠藤も怯まずに突き進んだ。ともにコンマ03! すべてゼロ台のスリットから突出して伸びる選手はなく、1マークは逃げる松本と差した遠藤の一騎打ちムードだ。

 

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 逃げきった!

 ターンの出口で誰もがそう確信しただろう。遠藤の差しを交わして、松本が2艇身近いアドバンテージを保った。これで足色が同じなら、ほぼ安全圏と呼ぶべきリードだ。が、そこからのレース足が違った。明らかに違った。バック中間で遠藤の舳先が届き、2マークまでにさらにグイグイ食い込んでゆく。松本が出足系統に寄せ過ぎたか、遠藤がさらにパワーアップさせたか、ふたりの伸び足はあまりにも違い過ぎた。結果論で言うなら、松本はバック中間で厳しく絞め込むべきだったか……。

 

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 2マークは松本のラストチャンス。遠藤を先に回し、自身は大きく開いてから鋭く差したが、先マイした遠藤のモンキーはその追撃を許さない。完全に2-1態勢が固まり、遠藤の無傷の3連勝が約束された。松本は442着の21ポイントで最低限のボーダーラインには到達したのだが……。

 今節の遠藤のパワー評価を私は「中堅上位~上位級の下」と見立てていた。今日の“逆転劇”を目の当たりにした以上、恥を承知で訂正するしかない。低く見積もっても上位レベル、総合的なパワーとしては節イチ候補と呼ばせてもらおう。

 

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 後続がどんどん千切れる中、私が見つめていたのは寺田だった。山川、樋口、川野はもはや絶望的で、テラッチだけが「5着で21点」という分水嶺をかき分けていた。今日の特訓の気配は良さげに見えたのだが、ターンごとに滑る感じで追い上げが利かない。やはり、実戦では底力の乏しいパワーだと思った。それでも最低ノルマの5着を取りきった意味は小さくない。着順点の差で松本を上回り、このレースでの得点2位に付けたのだから。

 

エース幻想、崩壊。

 

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12R

①平高奈菜(香川) 10

②小野生奈(福岡) 13

③海野ゆかり(広島)13

④長嶋万記(静岡) 07

⑤田口節子(岡山) 07

⑥細川裕子(愛知) 08

 

 嗚呼、ここでも私は己のパワー評価を是正しなければならない。今日の海野68号機は、節イチのS級にはほど遠いパワーだった。スリット同体の小野よりほんのわずかに出ていく感じはあったが、それはもはやエース68号機の領域ではない。自慢のストレートは色褪せ、しかもターン回りなどの実戦足は他艇と同じかむしろ弱めですらあった。客観的な評価は「直線がA、出足系統がBでトータルB+」が妥当だと思う。あの羽野直也の記念Vパワーはどこへ行ってしまったのか。もちろん、明日になって一変する可能性も念頭に置きつつ、現時点では2ランクほど降級しておきたい。

 

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 勝ったのは平高で、これは天晴れなイン逃げだった。スタートも秀逸だったし、1マークで小野が強ツケマイの“奇襲”(生奈の常套手段でもあり、読みきっていたか)を完璧にブロック、4コースから差した長嶋もまったく寄せつけないインモンキーだった。上がりタイムも遠藤と僅差で、パワー的な底上げも感じさせた。

 だがしかし、こと実戦足に限るなら道中の長嶋21号機だ。最後の最後まで食い下がる食い下がる。ターンマークごとにグイッと平高に接近し、ストレートではやや引き離されるというチェイスを何度も繰り返していた。この評価は初戦から変わらない「節イチの回り足」だった。3号艇の明日は課題の伸び足をもっと付けたいだろうが、展開ひとつで(たとえば生奈が再び2コースから握ったりしたら)最内から一撃のレース足でケリを付ける可能性もあるパワーだ。展示タイムが悪くても、決して軽視してはならない、とお伝えしておく。

 

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 肝心の小野の足色も、評価はさほど変わっていない。日々少しずつ底上げされてはいるが、「上位級に近い中堅上位」という感じか。今日はストレート系が強化(初めから握るつもりだった?)されて、「全部の足がちょっとずつ強めのバランス型」というイメージだ。現状の足のままでインの遠藤に太刀打ちできるか……差してもまくっても、バックで突き抜けるのは難しいと思う。こうなると、今日のふたりの着順の差は“生奈にとって痛すぎる敗戦”と言うしかない。

 

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 私が“過大評価”してきた海野68号機はまったく追い上げが利かずに5着に敗れた。それでもなんとか21ポイントに到達、着順点の差で松本を押さえてファイナルの最後の椅子を手に入れた。大晦日の奇跡へと望みをつなぐ5着だったわけだが、今日のままのパワーでは6コースからの優勝は難しすぎるだろう。(text/畠山。photos/シギー中尾)