BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――水神祭!?

f:id:boatrace-g-report:20180317180514j:plain

 7R、1着で戻ってきた稲田浩二の両脇を、魚谷智之と吉川元浩が固めた。吉川はさらに、稲田の肩をがしっと抱いて、引き寄せる。
「お前、水神祭ちゃうか?」あるいは「SGで何勝目や?」という問いかけだったように見えた。
 吉川に訊かれ、稲田はおずおずとうなずき、指を1本立てた。魚谷と吉川の顔がパッと弾ける。吉川はさらに力強く稲田を引き寄せる。モーターを整備室内に運搬してから合流した山本隆幸は「お前、最初から言っとけやーっ!」とツッコミ。水神祭だ!

f:id:boatrace-g-report:20180317180550j:plain

 稲田はSG3回目の出場。正直、水神祭はノーマークだった。とっくに済ませていると思い込んでいたのだ。同様の報道陣も少なくないようだった。そして、選手たちも稲田がまだSG未勝利であることをはっきりとは把握していなかった! 水神祭に呼ばれた同期の岡崎恭裕が「えっ、まだだった?」と聞き返していたほどだ。しかし、稲田の水神祭をした記憶がなかったのか、同郷の先輩である魚谷と吉川は何かに勘付いた。稲田、黙ってるだけちゃうかーっ!
 というわけで、無事に水神祭が執り行なわれた次第。魚谷と吉川に気づいてもらってよかったっすね。王者にも放り込まれる水神祭は、近畿地区ならではのものですぞ。

f:id:boatrace-g-report:20180317180641j:plain

 稲田の水神祭に加わった岡崎恭裕が11R、エース機パワーを見せつけるカドまくりを炸裂させた。レース後、少し話すことができたのだが、表情は実に明るかった。そりゃそうだ。気持ちのいいレースで勝つことができたのだから。なにしろ、スタートで3度ほど放っているそうだ。だから、インの毒島誠に伸び返されることを想定して、毒島を行かせてのまくり差しを考えていたという。ところが、ぐいぐい伸びたからまくっちゃった! それで毒島を沈めてしまったのだから、ホンモノである。ただし、岡崎はまだまだ上積みができると考えている。完璧に仕上がったらどうなっちゃうんだろ? ぜひ見てみたい気がしますな。

f:id:boatrace-g-report:20180317180707j:plain

 1号艇を活かせなかった毒島だが、悔しがるというよりは、呆気にとられているような表情に見えた。コンマ14のスタートだから、決して遅れたわけではない。岡崎もコンマ12、相手がエース機でなければ先マイできただろう。ミスがあっての敗戦とは言えないわけで、岡崎のパワーに唖然とするしかなかったかもしれない。それにしても、その後の追い上げは凄すぎましたな。大敗の展開を2着まで押し上げたのだから、さすが毒島。巻き返しは充分にありそうだ。

f:id:boatrace-g-report:20180317180752j:plain

 12R1着は松井繁だ。インから堂々と逃げ切った。陸にあがっても笑顔すら見せず、出迎えた田中信一郎とは真剣な表情で言葉を交わしている。勝って粛々、これが王者の風格。安易に使いたくない言葉ではあるが、「オーラ」を感じずにはいられない。

f:id:boatrace-g-report:20180317181027j:plain

 王者の1号艇に大外から挑んだ羽野直也は、3番手争いに絡んだものの、4着に終わった。エンジン吊りが終わると、羽野の横には瓜生正義が並んでいる。レースを振り返って、瓜生からの“お言葉”に耳を傾けているシーンだ。瓜生は、控室に戻っていく羽野と別れて、JLCのモニター前に陣取っている。12Rのリプレイがまさに映し出されていて、瓜生は画面にじっと見入った。視線はもちろん、6号艇を追っていただろう。羽野の航跡、旋回、モーターパワーなどなどを精細にチェック。得た感覚を、羽野にしっかりと伝えるための行動だろう。
 王者と戦い(3番手争いでは昨年のMVPと競り)、瓜生正義から教えを受ける。こうして、羽野はますます強くなっていくのである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)