BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――誰もが気になる岡崎恭裕、あるいは47号機

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白井英治「岡崎くんがどれだけ伸びてくるかわからないので、僕はしっかり走るだけ。先に回ればもつ足はあります」
井口佳典「バランスは取れていて、スーパーエース機の次くらいはあります」
瓜生正義「岡崎に伸び型にしてもらって、行ってもらえれば(笑)」
寺田祥「岡崎くんが別格でしょうけど、展開があればそれなりに戦える」
峰竜太「岡崎くん次第じゃないですかね」
 全員が岡崎恭裕、あるいは47号機に言及した。明日の優勝戦、間違いなく岡崎恭裕が主役である。
 今日の時点でも最も多くの人が注目したのは、岡崎だったかもしれない。10R1号艇。さらに2号艇は瓜生正義。この二人で決まって、2連単は180円である。猛者が揃うSG準優勝戦で、こんなに低い配当になることはそうそうない。だからなのか、10R後はなんとなくサバサバとした雰囲気があるように思えた。もちろん優出を逃した4選手が負けてやむなしなどと思っていたはずがなく、特に田中信一郎と金田諭からは強い悔恨の情がうかがえた。それでも、「岡崎と瓜生」という結果がなんとなく超順当という空気を生んでいたような気がする。それくらい、岡崎の存在は大きかった。

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 それにしても、瓜生はさすがの一言。A2級というのは仮の姿なので、「A2なのに優出!」などという物言いはまったく当たらない。しかし、GⅠ優勝戦Fのペナルティで記念戦線から遠ざかっていながら、SGでしっかり結果を残してくるあたりは、瓜生の地力の凄さとしか思えない。そして「岡崎に行ってもらえれば」も、あながちジョークなのではなく、虎視眈々とVを狙っているのは間違いないだろう。

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 岡崎に対して、最も強く意識を向けなければならないのは、やはり白井英治だろう。いや、白井に関しては、岡崎うんぬんを抜きにしても、ここは熱く思いを寄せたいところである。白井は多くの人がご存じの通り、SGに最も近い男と長く呼ばれ、10回以上も優出しながら、なかなかタイトルに手が届かなかった。あの14年メモリアルの感動は、その歴史をよく知る者たちが作り出したウェットな空気だった。だが、SGを勝てないでいる間、白井は一度も優勝戦で1号艇に乗ったことがなかった。予選トップで準優も逃げて優出したときには、まだ優勝戦の枠番が抽選制だった頃だったり、優勝戦も予選順位上位が内枠に入るようになった時に予選トップとなったときには、準優で敗れたりしていた。もし1号艇で優出していたら、もっと早くタイトルホルダーになっていただろう。白井の優勝戦1号艇は14年のグランプリが初めて。そしてそのときには、一敗地にまみれた。
 白井が6日制のSGで優勝戦1号艇に乗るはこれが初めてである。誰もがタイトル量産可能な実力者と知る白井が、ついにポールポジションからスタートする。これはなかなかに感慨深いことである。そんな優勝戦に岡崎がいる。白井vs岡崎は、この優勝戦の最大の見どころとなる。

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 白井の2着に入った峰竜太は、こちらに気づくや、派手なガッツポーズを向けてきた。2着でそのガッツポーズもどうかと思うが(笑)、しかし実は「正直、自信がなかった」というなかでの優出ならば、喜びも大きかっただろう。自信がなかったのはまずスタート。湯川浩司がピット離れで飛び出して内寄りをうかがったことで、起こし位置が想定外となって、タイミングを逸しかけていた。足についても、最後の最後で三井所尊春のペラを参考にして叩いたことで上向いたが、それでも「優勝戦では伸びはいちばん下、出足は上から4番目(笑)」と冗談交じりに言う程度なのであった(もちろん岡崎の存在があってのジャッジという部分もあろう)。あえて言うなら、明日は6号艇でおそらく6コース、肩に力がまるで入らない状態で戦う峰は怖い存在だと思う。あのガッツポーズを思い切りポジティブに捉えるなら、そうなる。

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 枠なりなら、井口佳典は岡崎のすぐ内側に入ることになる。これはこれで、意識をせざるをえなくなるものだ。ただ、井口はそういうこととは別次元で、己の勝負をする男だ。「岡崎くんにもそこまでやられない」と言い切っているだけに、気合一発、優勝をめざすのみだろう。前節にフライングを切っていることで「コンマ05とかは難しいかもしれないけど」と言いながら、しかし決してスタートで遅れるタイプでもない。井口の対処もまた、レースを劇的にするだろう。

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 寺田祥は、優出を決めてもいつも通りに淡々としたものではある。冷静に戦えるだろうし、2つ内側で岡崎が攻めてくれれば、展開はおおいにありうる。モーターの2連対率は、岡崎とは対照的に24%という低率。「まずいのを引いたと思いました」と心を曇らせたが、前検で乗ってみるとそこまで悪い状態ではなく、「今はかなりいい状態でだいぶ上積みできています」ということなら、上昇度はかなりのものということになる。スーパーエース機を撃破したときクールなテラショーがどんな表情になるのか、見てみたい気がする。

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 というわけで、とことん主役の岡崎だが、当の本人は「僕が勝ったら、それは47号機が勝ったんです」などと言って笑っていた。会見では「他の人が引いていたら、僕も47号機がSGの優勝戦に乗るのを見たかったと思う。僕が引いたから、やるしかなかった。その責任を果たすことができてホッとしている」とも言っていた。岡崎は、自分が、あるいは自分の相棒が、話題の中心となることを自覚している。そして、そのことがクラシック優勝戦を盛り上げることになるであろうことを喜んでいる。本当は、岡崎恭裕の大チャンスなのである。約8年ぶりのSG制覇の大チャンスなのだ。それをどこかで意識しながらも、岡崎はこの状況を楽しんでいるように見えるし、だから3カドをにおわすコメントを出したりもしている(やったことないそうだけど)。
 ただ、頼もしいのは「レースを楽しもうとは思わない。お客さんがお金を賭けてくれるのだから、楽しむことはできない」と、絶対的に勝ちに行く気持ちが岡崎の芯に根付いていることだ。そんな岡崎が47号機とともに優勝戦にいる。明日の12Rは、予想もレースも間違いなく面白くなる! 岡崎がゴールしたときにも主役でいるのか、それとも最終的に他の5人が主役を奪うのか。特に白井英治が1号艇から王道のレースを見せるのか。岡崎も「ワクワクしている」と言った。僕らもおおいに胸躍らせて、明日の優勝戦に臨みましょう!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)

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羽野直也は、スタートを失敗してしまったと悔しがっていた。グラチャンに出たいと言っていただけに、なんとか優出をめざしていたのだが……。グラチャンに出るにはもうひとつ手段がある。オールスター優勝だ!

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地元の砦となっていた菊地孝平は、1マークで艇がやや浮いてしまったことを悔やんでいた。最も悔しさをあらわにしていたのは、やはりこの人か。