BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――感慨

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 うわっ、王者がモーター架台を運んでる!
 13時40分頃にピットに入って真っ先に目に飛び込んできたのは、SGではまず見かけることのない光景だった。
 エンジン吊りに備えてモーター架台をボートリフト付近に運ぶのは、新兵の仕事。SGではもはや登番が上から3~4番目であることが多い松井繁には無縁の仕事だし、僕らがピット取材を始めたころだって、すでに登番4000番台が出場していたから、3415松井繁がその仕事をする必要はなかった。だからこれは、あまりにもレアな光景!
 まあ、実際のところ、松井は今節も登番では上から22番目なので、このマスターズにおいてもやる必要はない。新兵とは「マスターズデビュー」を指すのではなく、年齢を指すのでもなく、「登番がいちばん下の選手数人」であるから(必然的に年齢も若いほうの選手にはなるが)、本来は松井の仕事ではないのだ。だから僕には、王者がマスターズデビューという状況を楽しんでいるように見えてしまったのであった。ともかく、いいものを見たな。

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 正真正銘の新兵=登番がいちばん下なのは吉川元浩。ということで、吉川は積極的に架台運びやエンジン吊りなどに駆け回っていた。その吉川はドリーム戦1号艇。共同会見には真っ先に登場したのだが、かなり早く会場に入ったため、そのときにはまだ代表質問者が到着していなかった。吉川が笑いながら言う。「たくさん仕事があるんやけどなあ」。たくさんの仕事とはもちろん新兵仕事。吉川がそれをするのはおそらく10数年ぶりであろう。というわけで、吉川のその言葉にも、その状況を面白がっている雰囲気が感じられた。まあ、忙しい一節を送るのは確定的で、その折々では神経も使うことになるだろうが、「マスターズに初めて来た今日」を、前検ということもあって、楽しめてはいるのだろう。
 すでにベテランであるマスターズデビューの選手が久々の新兵仕事に励む、というのは毎年おなじみの光景ではある。今年はそれをバリバリのSGレーサーがやっていたりするので、より強く印象に残るのだろう。新生マスターズ、やっぱり新鮮ではある。

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 長くボートレース界で活躍してきたアナウンサー、おなじみ内田和男さんが唸る。
「選手の顔を見てると、ちょっと前の新鋭王座の思い出ばかりが浮かんでくるんだよね。そのメンバーがいまや、マスターズだもんなあ」
 僕はこの面々が新鋭王座に出ていた頃は、まだピット取材を始めていなかった。彼らが出ていた新鋭王座の舟券は買っていたけれども。内田さんはさらに言う。
「最優秀新人も山ほどいるしねえ」
 今村豊、江口晃生、熊谷直樹、服部幸男、松井繁、三嶌誠司、安田政彦……うーん、新人王がマスターズ走るというのも、光陰矢の如しと感じさせる。で、僕が表彰式で直接目撃している最優秀新人が一人だけ、この福岡にいるのである。平尾崇典。1999年の最優秀新人だ。僕は97年から毎年、表彰式に参列させてもらっているので、たしかにあのステージで彼を見た。

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 いやあ、あの新人王がマスターズかあ、と改めて実感。なにしろ、ほんの数日前、平尾は住之江周年を6コースからぶっちぎっているのだ。その平尾がマスターズ!? これはなかなかに感慨深い。まあ、平尾に限らず、今年デビューした選手たちに関しては、もれなく若手時代を見ている、というか、若手時代の舟券を買いまくっていたのである。そうした選手たちとマスターズで出会えるというのは、やはりしみじみとするものだ。というわけで、前検のピットで僕は言い知れぬ思いにすっかり酔っていたのだった。はい、楽しかったです。

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 さてさて、福岡の前検航走は、スタート練習3本のあとにタイム測定が行なわれ、測定を終えた選手からボートリフトに戻ってくるのだが、7班の6号艇・山下和彦が、タイム測定のあとなぜかリフトとは反対方向、2マーク付近に走っていった。なんだなんだ。手順を知らないのか、それとも単なる天邪鬼か。2マークあたりで艇を止めた山下は、ボートから身を乗り出して、水面に手を突っ込んだ。コンビニのビニール袋と大きな木の枝がそこに浮遊していたのだ。タイム測定前にそれを発見したようで、山下は機転を利かして回収に向かった模様。ナイスプレーだったのだ! 神様、このご褒美にぜひとも、山下和彦に1着をあげてください!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)