BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――新生マスターズ、いざ優勝戦へ!

●同期の絆
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 10Rで野添貴裕が2着。3コースからぐいっと前に出てまくり切ったかと思われたが、うねりに乗ってしまい握ることができず、インから残した渡邊英児に追いつかれてしまった。それでも、優出! 4人が予選突破した花の69期のなかで、優出一番乗りを果たしている。
 会見で野添は、11Rと12Rを走る同期について振られて、こう語っている。
「まあ、僕が頑張らなくても、勝手に頑張る人たちですから(笑)」
 それでも、刺激を与えられたのなら嬉しい、とも付け加えている。特に田中信一郎、太田和美とは同県同期。切磋琢磨しながら、気づいてみれば二人はグランプリ覇者にまでなった。同期との出世争いウンヌンとは関係なく、たしかにひたすら頑張って上り詰めた名選手たちだ。だが、野添も今年に入っての充実ぶりは目を見張るものがある。2月の地区選からクラシックを経てここまで、話題を振りまいてくれた。逆に野添も、同期の存在を感じながら優勝戦には臨むのかもしれない。

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 ……などと考えていたら、まさかのことが起こってしまった。結果、69期からの優出は野添のみとなったのだ。もっとも大きなまさかは、やはり田中信一郎の敗退だろう。予選トップで名人位に王手をかけたかと思いきや、12Rでは6着に敗れてしまっている。さすがにレース後の田中は、他者を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。唯一、艇運係のお姉さんに慰めの言葉をかけられ、「ダメやったわ……」と力なく返したのが敗戦の悲しみを表に出した瞬間だったか。11Rでは太田和美もコース遠く敗れ、12Rでは仲口博崇がいったんは2番手を走ったものの、逆転されてしまっている。
 ここまできたら、もはや独立した個人であるのは間違いない。今さら同期の思いを背負って、みたいな話にはならないと思うし、何しろ今節出場の69期生は野添以外はSGウィナーである。それでも、69期の仲間が最も応援するのは野添に違いない。それが野添には心強いことであることも間違いない。

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 12R、市川哲也が1着。そのエンジン吊りに、ニッコニコの渡邉英児が参加していた。市川と渡邉は67期の同期生。そして、10Rで先に渡邉が優出を決めていた。市川は勝利の余韻などもあっただろうが、渡邉としては優勝戦を同期で走れる喜びもあったことだろう。特に会話を交わしていたわけではなかったが、どこか通じる思いはあったかもしれない。

●同県の絆

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 渡邉英児の1着は、先述した通り、一度は野添にまくられて、しかし小回りで残して抜き返したものだ。決まり手は逃げ。レースを見ていた者なら、誰もが野添がまくり切ったと思っただろうし、ということは渡邉サイドから見ていた者は「渡邉がまくられてしまった」と映ったことだろう。
 ところが、渡邉は巧みに残して先頭へ。その瞬間、出走待機室でモニター観戦していた服部幸男の目が、真ん丸に見開かれた。「マジかよっ!」ってな感じ。隣で見ていた大場敏も服部と顔を見合わせる。静岡支部唯一の準優進出、そして万事休すかと思われたイン戦をしのいで、服部らのテンションも上がったようだった。大場に関しては同期でもあるだけに、高揚したことだろう。陸に戻った渡邉に笑顔で歩み寄り、肩をポンと叩く。渡邉の頬がふっと緩んだ気がした。

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 12R2着は柏野幸二。出迎えたのはもちろん平尾崇典だ。5日目の今日は、ボート洗浄の日。レースを終えた直後に、選手総出でボートを洗剤で磨き、5日間の汚れを落として最終日に備える。もちろん当人も参加するのだが……「いいから、いいから! 行って!」。平尾の声が響く。地上波中継のスタッフが、インタビューをお願いしようとそばで待ち構えていたのだ。実際に生中継に間に合ったかどうかは未確認だが、平尾は柏野を気遣い、また報道を気遣って、すべて引き受けようとしたわけである。明日になれば、同県同期のテラッチもピットにいる。大先輩の山室展弘も。柏野にも確かな後押しがある。

●チャンスをモノにしたい

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 柏野は会見で、メンバーをざっと見渡して「私がいちばん実績がないですから」と言った。「私」という一人称には驚かされたが(笑)、いちばん実績がない……って、そうかな? そりゃミスターとは比べるべくもないけど……SG覇者が他に2人いるけど……記念2Vは決して見劣りはしていないだろう。ただ、しばらくSG参戦からは遠ざかっているのは確か。ここを獲れば久々にその舞台に立てる権利を得ることはできるので、枠が外といっても少しも諦めてはいない。

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 平石和男の場合、これは大事な一戦である。来年のクラシックは戸田開催なのだ。明日勝てば、その出場権をゲットできる。まあ、ここで勝てなくともまだまだチャンスはあるわけだが、しかし一時に比べればGⅠ参戦は減り気味であるのも確か。千載一遇のチャンスはぜひともモノにしたいだろう。
 というわけで、平石にしては珍しく「コース動くことも考える」というコメントが会見で出ている。イン屋のようにゴリゴリ行くことはないだろうが、勝てる位置があれば獲りたい、というのだ。コースを譲る選手がいるかどうかはともかく、平石は勝てる可能性を探り出して、明日の戦いに臨むだろう。

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 市川は、優勝すればオーシャンカップの出場権が、と言われてテンションを上げている。SG4Vにしてグランプリ覇者の市川も、最近は決してSG出場が多いわけではない。そして、もうSG戦線から完全に離脱したなどとは少しも思っていないわけだ。市川がグランプリを制したのは3号艇。メモリアルで完全優勝を果たしたのも3号艇。「昔から見ている方はそういうイメージを持っているでしょうね」と市川は言ったが、若いファンの方も「市川=赤カポック」のイメージをぜひとも抱いて、明日の優勝戦をご覧いただきたい。

●やっぱりミスター!

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 というわけで、優勝戦1号艇に収まったのは、今村豊である。
 やはり主役はこの男ということか。レース後はやはりゴキゲンで、待ち構えるカメラマンにポーズを作ってみせたり、ともに優出を決めた平石をいじって笑わせたりしていた。ともかく、メンタルは安定……という言い方でいいのかわからないが(笑)、とにかく出来上がっている。足的にも大きな不安はないだろう。45歳以上になっても、いちばん古株になっても、マスターズはやっぱりミスターの舞台! 勝てば来月号のBOATBoyにそんなレポートが載ると思います(笑)。
 重箱の隅を楊枝でほじくるようなことを書いておこうか。今日は「正直、乗りやすさは昨日のほうがよかった。それがうねりなのか、回転の問題なのかはわからない」とのこと。09年オールスター。今村は優勝戦1号艇だった。14年オールスター。やはり今村は優勝戦1号艇だった。今村はともに2着。1マーク先マイしながら、うねりに乗ってやや流れ、2コース選手に差されたのも一緒だ。今節もイン戦は2着。2コースに差された。今村の最大のライバルとなるのはそのジンクス!?(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)