BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝者、敗者、4日目。

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 ボートレーサーは負けず嫌いの集団、といっても過言ではないわけで、だから勝負駆けうんぬんを差し置いても、敗戦後の選手はそれぞれに痛々しい。
 12Rで敗れた池田浩二が、思い切り顔を歪める。勝負駆けに失敗したわけだから、それももやもやすることではあろうが、それが渋面を作らせたのか、敗戦のほうが要素としては濃いのかは、なんとも言えないところだ。控室へ戻りながら池田と合流した濱野谷憲吾も険しい。濱野谷の場合は勝っても予選突破は厳しかったから、ただただ大敗への痛恨が強かったか。肩を並べて顔を見合わせた池田と濱野谷は、苦笑いの二重奏。不本意な結果となってしまった者同士、共感する部分もあっただろう。

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 同じレースでは、今垣光太郎もガックリ。こちらは、5着大敗も、準優には残った。すなわち勝負駆けには負けていない。レースに負けただけだ。だが、レースに負けただけ、が重い。6コースで見せ場を作れなかったのは仕方ない、などとは思わない。内を獲れなかったことも含めて、悔しい。ふと目が合うと、今垣は目を伏せつつ首をうなだれて、その胸の内を表現してみせた。勝負駆けはもちろん大事だが、そのためだけに戦っているのではない。

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 11R3着の平本真之は微妙な表情。勝負駆けでいえば、3着でいいのである。6・00。いや、実際は6・00の選手が何人かいたので、安泰かどうかは断言できるようなものでもなかったが、最低限の着順を手にはした。しかしもちろん、3着に敗れているのである。それに、ただ準優に乗れればいいというわけでもなかっただろう。2着なら、1着なら、準優の枠番はより有利になる。だから、ひとまずノルマを達成したことを喜びはしない。いや、喜べるわけがないのである。結果18位で準優に乗り、出走表を見て安堵の思いは浮かんできただろうが、レースが終わったばかりの時点では安堵は薄かったように思う。

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 6・00の選手では、仲谷颯仁はつらい立場で過ごさなければならなかった。平本とは着順点もまったく同じだが、最高タイムで後塵を拝していた。6・00の選手では、11R終了時点で最下位なのだった。つまり、最後の最後まで、どんな運命となるのかはわからなかった。12Rの結果次第では、もちろん準優行きの可能性はあった。その発売中、仲谷は新兵仕事などもこなして、ピット内を動き回っていたのだが、その間にもいろんな思いはあっただろう。
 結果、平本と仲谷との間にボーダーラインは引かれることとなった。モーター格納などを終え、控室への階段をひとり昇っていく仲谷。そのすぐ手前では、JLCの準優展望インタビューが行なわれ、カメラの前には準優メンバーが立っていた。仲谷もそこに立つかもしれなかったし、スタッフの方たちもいつ仲谷に声をかけようかなんて相談もしていたりした。しかし仲谷はそこを素通りしなければならなかった。そのコントラストが、ちょっと切なくもあった。

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 逆に、1着の選手は喜びに溢れる……はずなのだが、今日の峰竜太はそうでもなかった。笑顔はもちろんあったが、普段の勝利後の弾けた様子は見せなかった。ようするに、まだ昨日を引きずっているのだ。戦前、今日は普段通りのレースができるだろうか、と僕はちょっと危惧していたくらいだ。なんという男だと思う。異変があるようにしか見えないなかで、4コース差しで一気に突き抜けてしまうのが峰竜太。勝利後の様子を見ていると、まだ引きずったまま明日を迎えそうな気もするのだが、それでもそれは峰にとってネガティブな要素ではないのかもしれない。

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 11Rの1着は茅原悠紀で、見事に勝負駆け成功。さすがにこちらは喜色満面か、というと、そうでもなかった。まあ、1号艇で逃げ切った選手には往々にしてあることで、安堵のほうが大きいのか、他の選手を気遣う部分もあるのか、イン逃げで勝ってはしゃぐのに恥の概念があるのか(笑)、淡々とした様子の選手のほうを多く見る。今日の1Rを逃げ切ってにゃんこスターのミスターはむしろ例外かも(笑)。たが、気分が悪かろうはずはない。まして、きっちり準優行きを決めたのだから、着替えなどを終えてピットにあらわれる足取りは軽い。JLCのインタビューにも弾むように向かっていたから、明日に向けて茅原のなかに高揚感は生まれていたと思う。

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 レース直後ではなく、やや時間が経てば、勝負駆け成功は喜びの材料でしかない。11R6号艇2着で予選突破の中田竜太。JLCインタビューを受けるためにピットにあらわれると、こちらの顔を見て目をカッと見開き、喜びを表現した。交わす言葉も軽やか。2日目の6着が痛かったねー、なんて話も「でもあれで調整がわかって、うまくいったから」とちょっと前の大敗をポジティブに考えることができていた。

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 嬉しそうに目を細めて、「明日が楽しみ!」と予選突破を喜んでいたのは松本晶恵。SGの準優行きを、心から喜んでいるようで、話していてちょっと和んだ(笑)。この猛者たちのなかでベスト18に食い込んだのは価値が高いこと。それに対する高揚感を素直にあらわしているのも、悪くないと思う。何より「楽しみ」と言えるのが心強い。もしかしたら、これまで経験してきた戦いの中で最も過酷かもしれないSG準優。明日になればいろんな感情が生まれるかもしれないが、今日はまったく怯んでいないのだ。ん? 準優の左隣は今日4カドまくり決めた智也先輩じゃないか。明日も先輩がまくってくれたら……たしかに楽しみ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)