BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――激しいボーダー争い

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 畠山が書いていると思うが、予選トップ争いは早々に趨勢がはっきりした。6Rで峰竜太が勝ち、魚谷智之が6着に敗れたことで、峰が圧倒的優勢に立った。魚谷は10Rで1着ならまだ可能性を残していたが、何しろ6号艇。1着は厳しいと見るのなら、峰は11R5着でトップ確定だった。峰も、大まかにはその状況を把握していたようだ。展示準備に向かう際にすれ違いざま、「見えてきましたね」とニッコリ。まあ、この人は時にポカもあるので(笑)、「冷静にね」と声をかけた。峰は右手の親指をぐっと突き出す。その表情を見れば、トップ通過は堅いだろうな、と思った。結局、10Rの結果を受けて、峰は無事故完走でトップ通過。終わってみれば、峰が圧倒的大差でシリーズリーダーとなったのだった。

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 一方で、ボーダー争いは混沌としていた。3日目終了時点では14位から21位にまで6・00の選手が並んでいたが、5Rを終えたときには18位が5・80。ボーダーは6・00を切りそうな気配となっていた。これで俄然注目されたのが西山貴浩だ。西山は12Rに登場しているが、1着で5・80とその時点でのボーダーに並ぶ。ナイターSGの4日目12Rは、予選ではあるが、1着でも準優進出が厳しい選手が組まれるものだ。西山もボーダーが6・00なら届かないわけだが、5・80なら可能性を残すことになる。もとより、西山は6・00がボーダーだと決めつけることなく作業に励んでいた。時間を追うにつれ、実際に望みが出てきたことで「何が起こるかわかりませんよ~」などとうそぶきつつ、柳沢一と延々試運転をしたり、スタート練習では深い位置からの起こしを敢行していた。まったく諦めてはいなかったのだ。結果は残念も、この男はやはりしっかりと勝負師である。

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 6R2着で5・83まで押し上げた寺田祥は、ボーダー付近で18位になったり19位になったりという状況で、結果を待つ身となっていた。10R終了時点では19位。文字通りの相手待ちという状況になっている。結果、18位以内から秋山直之が陥落して、18位に滑り込み。それを知った菊地孝平が、テレビスタッフに「宿舎に行って寺田を呼んできましょうか?」と声をかけていた。寺田は10R後の帰宿便で宿舎に戻っており、菊地は準優選手のインタビュー収録があるのではないかと気遣ったのだ。しかし実は、寺田は帰宿前にインタビューを受けていた。担当する青山登さんに聞くところによると、もし予選落ちとなってボツとなってもいいから、と収録を自ら申し出たという。落ちる可能性のある選手にはやはりインタビューを申し込みにくいもの。それを知っているから、寺田はインタビュー班を気遣って収録に臨んだのだ。結果、ボツにならなかった! その気遣いが天に届いたのかも?

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 惜しかったのは長嶋万記だ。2着条件の勝負駆けで3着。しかし、単なる3着ではなく、1マークではしっかり差して2番手争いに持ち込み、岡崎恭裕と3周ビッシリ競り合っての僅差3着である。結果は残念だったが、素晴らしい戦いぶりだったと思う。
 エンジン吊りを終えると、長嶋を菊地と徳増秀樹が囲んでいる。菊地は両手をボートに見立てて、長嶋に言葉を投げかけていた。誰がどう見たって、長嶋への「こう走れば」というアドバイスだ。長嶋に聞くと、まさにその通り。ツケマイの連発で岡崎に迫った走りは立派でも、一方で結果を求めなければならないのも道理である。長嶋曰く「自分にはこういう局面の経験が少ないから、わからないことがたくさんある」。それをレース直後に菊地と徳増が埋めようとしてくれたわけだ。これは間違いなく、スキルアップである。きっと長嶋はまた、SGを走ることの喜びを、敗れた悔しさとともに実感したことだろう。

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 ただし、充実感もある。「岡崎くんと競れた」ことに手応えも得たようなのだ。岡崎もまた、長嶋を認めたことだろう。菊地、徳増と話す長嶋に歩み寄っているのだ。そのときの表情は、いや~疲れましたよ~、という感じの笑み。自分を苦しめた長嶋の健闘を称えている表情にしか見えなかった。もっともさすがの勝負師、その前には純粋に敗れた悔しさもあらわにしていたのではあったが。

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 10Rを終えた時点で、18位は丸岡正典。しかし11Rは6号艇で、舟券に絡まなければ予選落ちであった。その戦いぶりを注目していたら、うおっっっ、1着ですか! 思わずピットで、マルちゃん!と叫んでしまった。お見事すぎる勝負駆けだ。ピットに戻ってきた丸岡は、結局エンジン吊りの間はヘルメットを脱がなかったが、隣で石野貴之がめっちゃ笑っていた。想像するに、まさか勝てるとは思わなかったよ~、ニャハハハ~、といつものマルちゃん笑いで石野に語り掛けていたのではないか。勝利者インタビューでも「準優乗れないと思っていた」なんて言ってたし、飄々と勝って、飄々と振る舞っていたということになるだろう。

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 対照的に、1号艇で丸岡の差しを許した毒島誠は、ピットに上がるやボートのヘリをポンと叩いて、さらには天を仰いで悔しがった。毒島は4着で予選突破だったのだが、まさに昨日も書いた「1号艇での敗戦」の悔恨のほうが予選突破より大きいのだ。エンジン吊りの間も、出迎えた仲間と語りながら、悔しげにレースを振り返る。準優はしっかり切り替えて、今日の鬱憤を晴らすものにしたいところだ。

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 最後に、“勝手にチーム長野”は揃って予選突破! 馬場貴也は11R4着で、やはり「予選突破よりも、まずは敗戦が悔しい」という表情だったが、ワタクシ個人的には安堵の思いが大きかった。飯山泰は4Rを信州まくりで1着突破! 9R発売中に喫煙所で一服していたら、それに気づいた飯山が駆け寄ってきて、ガッツポーズを見せてきた。こっちももちろん拳を握って見せる。結果的に予選4位での突破はお見事! 飯山と馬場、なんとか優勝戦に揃い踏みしてほしい!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)