BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――初日から激戦

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 5Rで5コースから快勝した西山貴浩は、その後も調整と試運転に余念がない。公開勝利者インタビューでは持ち前のコメディアンっぷりを発揮していたが、ピットに戻れば勝負師の顔に戻っていた。8R発売中にも、ふたたび水面へと飛び出していく。その折、こちらの顔を見てニヤリ。
「これでエビス屋に1年通えますよ!」
 むむむむっ! 若松オーシャンで勝手にチームエビス屋を結成したワタシと西山だが、西山は見事に1年分の食事代を稼いでしまったというわけか。くそー。ワタシも舟券で、11月芦屋チャレンジカップ時のエビス屋代を稼ぐとしよう。西山の舟券で稼げたらサイコーですな。

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 夕方になって、西日が強烈に差し込んだ。序盤レースの時間帯より暑いくらいだ。試運転から上がってきた篠崎仁志が鬼の形相でこちらを睨んでいる。見ると、顔じゅう汗だらけ! この暑さのなかで、カポックやケブラーを着て、ヘルメットをかぶり、グローブまでして水面をぐるぐると駆け回ったのだ。そりゃあ汗だくになろうというもの。西山が水面に飛び出したのもそんな時間帯で、仁志はペラ調整のあとにまたもや係留所へと駆けていった。暑いの暑くないの言ってる場合ではないのだ。

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 やや静かになってきた整備室では、濱野谷憲吾、齊藤仁、長田頼宗、大池佑来がテーブルを囲んでいた(と書くと食事中みたいだが、もちろんそうではない)。東京会議が開かれていたのだ。石渡鉄兵は残念ながら途中帰郷となってしまったが、3つのレース場を擁する東京支部はメモリアルでは常に最大勢力となる(福岡と並んで)。しかし、東京勢のメモリアルでの実績は正直、芳しくはない。これが22年連続22回目の出場となる濱野谷は「そのことは嬉しいけど、逆に言うと、若い子が出てきていないということ」とも語っている。ならば、鉄兵を欠いたのは痛いけれども、今節結果を出してもらおうじゃないか。そう思えば、東京勢の結束の姿のように見えるその“東京会議”は心強くも思えてくる。もちろんエース濱野谷を中心に、SG初陣の大池も含めて、一丸となっての猛奮闘を期待したい。

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 4Rはある種すごいレースになった。1マークを回って、バックで6艇が横一線になったのだ。まるでコースが入れ替わっての再レースみたい!? 惜しかったのは、6コースから最内を差してバックでインコース(?)になった平本真之。2マークは、あたかもイン逃げのような態勢になったのだ。我々も、平本のアタマは正直1枚も持っていないのに、「平本、逃げろーっ!」(笑)。2コース(?)から萩原秀人にまくられて沈んでしまったが、あと一息のレースであった。
 ただ、平本は6コースから差して他艇に並びかけたのだから、グッドレースだったとは言える。「見せ場は作れましたかね」と、悔しさもにじませながら、爽やかに笑って見せた。見せ場以上だったと思うぞ。レース後にプロペラ交換となったようで、10Rまでに懸命にペラ調整をしたが、3等を走りながら3周1マークでキャビって落水。さすがに落胆の様子ではあった。今日はツイていなかったが、明日から巻き返せ!

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 そうそう、愛知支部勢の動きはなかなか激しかった。赤岩善生は暗くなったころには本体を割り、整備をしている。赤岩の本体整備は言うまでもなく珍しくないわけであるが、ゴンロクを並べてしまった初日、と考えれば、必要に迫られてのものでもあろう。もちろん赤岩の手腕だ、立て直してくる可能性はおおいにある。

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 磯部誠は、遅くまで調整と試運転を続けた。ボートを揚げたのは11R発売中。出走を控えた選手以外で、最も遅くまで水面にあったのが磯部のボートであった。その後もプロペラ室にこもって、12R出走直前まで木槌を振るい続けた。ようやく作業を終え、こちらの顔を見つけると、「勢いで勝てるほど、モーターボートは甘くねえな」と悔しげに呟いた。ダービーにも出場を決めているほど、今もっとも旬である選手の一人でも、SGでは簡単に勝たせてもらえない。でも今日は6コースだし、しょうがないよ。そんなふうに言葉をかけたら、肩をすくめて敬礼を返しつつ、モーター格納に向かったのだった。若者よ、モーターボートはたしかに甘くないが、まだ1走を終えたばかりだぞ。明日は4号艇と2号艇、ぐっと枠が良くなる。真価を発揮するのは明日からだ。

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 さて、ドリーム戦。峰竜太が逃げ切り、魚谷智之が2番手に浮上したその後方で、井口佳典と森高一真が銀河3着競りを演じた。森高も「最悪」だった前検からある程度立て直しに成功したか、よく食らいついてはいたが、井口が3着を獲り切ることに。レース後、装着場のモニターの下には、仲良く肩を並べてリプレイに見入る二人がいたのだった。しのぎを削り合い、水面では徹底的にやり合い、陸ではこうして反省会を開き、そして85期勢は銀河系軍団と呼ばれるまでになった。そう改めて確信させられる光景であった。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)