BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――圧倒的

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 文句なし。毒島誠がただただ強かったメモリアル。もう絶句するしかないな。SG初優勝が13年の丸亀メモリアル。あれから5年、ふたたびこの場所で同じタイトルを手にした毒島は、あのときより確実にパワーアップした存在となっていた。
 精神的にも文句なしだ。9R頃、ほんの少しだけ、会話のやり取りができた。昨日と同じく、実に落ち着いていた。表情も明るかった。表彰式で「緊張した」と言っているが、それを微塵も感じさせない振る舞いだった。それが時間を追うごとに、鋭い表情になっていった。気合の乗っていき方も抜群だったと思う。そして、優勝。初日後半から7連勝という結果も圧倒的だが、この日の過ごし方や調整についても圧倒的だったと思う。

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 ひとつだけ記すなら、最後に展示ピットにボートをつけたのが毒島だった。これはルーティンとも言える。ギリペラといえば辻栄蔵だが、毒島も負けていない。最後の最後まで油断することなく、毒島は相棒に向き合う。この圧倒的な成績での優勝戦であっても、それは変わらない。それもまた毒島の強さだろうし、精神的な部分の強みでもあるだろう。
 勝って浮かれず、は優勝したあとでも変わらない。ウィニングランを終え、ピットに戻ると報道陣が輪を作って待ち構えていた。毒島は丁寧に頭を下げて謝辞を述べる。大先輩の村田瑞穂さんや松野京吾さんにはことさらに腰を深く折っていた。唯一、同支部の先輩である青山登さんが嬉しそうに祝福したときには、目を真ん丸に見開いておどけてみせた。毒島の師匠は江口晃生、江口の師匠は青山登。青山さんにとって毒島はいわば孫弟子であり、そんな大師匠の顔を見て少し気分がほぐれたことだろう。

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 これでSGは4Vとなったが、そのすべてがナイターSGである。ナイター巧者とか言われるし、その通りなのだろうが、実際のところ、たまたまでしかないだろう。昼のSGでだって毒島はきっと強い。チャンスが来ればあっさり獲ってしまうかも。まあ、ナイターSG4Vは史上最多で、偉業ではある。次のSGであるダービーもナイター。史上最多タイのSG3連続優勝が、すべてナイターだったりするのも痛快ではある。

 

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 8戦7勝の成績も含めて毒島が圧勝したこともあってか、強く悔恨をあらわにする選手は見当たらなかった。あえて言うなら、篠崎仁志。心から願ったSG初優勝はかなわず、表情はややカタめだった。装着場のモニターにリプレイが映し出されると、仁志は足を止めて見入った。しかしメモリアルはGRANDE5のレースだからメダル授与式があって、3着の仁志はステージに向かわねばならない。そのあたりを熟知した菊地孝平が「メダル!」と声をかけて、ようやく控室へと駆け出したが、なぜ勝てなかったかをすぐに確認せずにはおれなかったということだろう。
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 井口佳典は、ピットに戻ってヘルメットを脱いだそのときに、選手たちをねぎらおうと待ち構えていた上瀧和則選手会長と顔を合わせている。大先輩での出迎えに、井口の顔はほころんだ。もちろんそれは苦笑いの度合いが強いのだが、上瀧会長もその気持ちがよくわかるだけに、井口に向けて笑顔でうなずき返していた。そうそう、井口は引き上げる際に毒島の囲み取材に出くわしている。井口は毒島に歩み寄ると、「ありがとうございました」と腰を深々と折った。毒島はその様子に少し慌てたようにも見えた。後輩に対してもそうして礼を尽くす。それが井口という男だ。

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 湯川浩司もまた同様に、上瀧会長に声をかけられている。その後は松井繁や田中信一郎に囲まれてモーター返納作業を行ない、先輩たちの言葉を受けて柔らかな表情も見せていた。で、その先輩たちを待たせてはならぬと、湯川は大急ぎで着替え。というか、整備室を出たところでスパッツ一丁になって、「お疲れっす!」と言って控室へと駆け込んだのだった(笑)。お疲れっす!

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 柳沢一は、やはり井口と同様に、毒島の囲み会見中にそのそばを通りかかっている。「ブス、おめでとう!」と声をかけて、爽やかに笑った。レース後はとにかく淡々とした様子で、モーター返納の作業の間も特に表情の変化があったわけではなかった。今日はさまざまなタイミングで柳沢とすれ違ったものだが、感情の揺れみたいなものをいっさい感じさせない表情だった。6コースはさすがに遠かったが、2着争いで見せ場はあったと思う。次の優出機会を楽しみにしたい。

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 笠原亮については、レース後は瞬く間にメダル授与式の準備に吹っ飛んでいったので、表情などはまったく見られなかった。今日の笠原は、オレンジベストを着て出走している。51kgに満たない体重だったので、重量調整をしたわけだ。笠原によると、「人生初ですよ!」とのこと。もともと軽量ではなく、52~53kgでの出走が多い笠原が、ベストを着るまでに減量したのだ。本人は「外でペラ叩いてたら暑くて痩せますよね~」と軽口だったが、実際には意識した部分もあったはずだ(その証拠に、ベストを着たことを喜んでいた)。そうした気合を込めて臨んだ優勝戦。準Vは願った結果ではないだろうが、ナイスファイトだった!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)