BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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丸亀メモリアル優勝戦 私的回顧

童顔の魔王

12R優勝戦
①毒島 誠(群馬)11
②井口佳典(三重)13
③湯川浩司(大阪)11
④笠原 亮(静岡)06
⑤篠崎仁志(福岡)12
⑥柳沢 一(愛知)12

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 毒島が逃げた。4カドからわずかに笠原が覗いたが、まったく慌てることなく1マークを先制。その半端ないスピードのインモンキーは、ターンの出口で後続を5艇身ほどもぶっ千切っていた。初戦の3着から111111①と怒涛の7連勝。SG2連覇にして3つ目のビッグタイトルを飾るに相応しい、独壇場のシリーズだった。
 強い。
 当欄で勝者を讃えるとき、私は馬鹿のひとつ覚えのようにこの言葉を使ってきた。ただ、現在の毒島に対する「強い」は、ちょっとニュアンスが違う。アスリート化した近代ボートレースにあって、かなり異質な強さだと感じている。

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 まずは、内枠の艇を一瞬にして出し抜くロケットピット離れ。以前から「本人にもいつ飛ぶかわからない毒島のバナレ」は有名ではあったが、最近のそれは成功率と破壊力が大幅にアップしていると思う。今節も6号艇で2コース奪取など、随所にこの武器を活用して進入争いを優位に進めてきた。ちなみに昨日も今日も、ピットアウトからの飛びっぷりは凄まじいものだった。1号艇なので“無用の長物”ではあったが(笑)。

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 さらに、最も特筆すべきはそのロケットバナレも含みにした変幻自在なコース取りだ。バナレで2コースの優先権を得たのに、前付け艇を入れて3カド攻撃(若松オーシャンの準優)などなど(3日目のTOPICSで書いたので、以下省略)、内へ外へと自在に動きながら「勝てるコース」を選択している。「内へ内へ」が基本スタンスになっている近年の艇界でも、これは極めて珍しい事象だ。

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 そして、いざ勝てるコースを選択したら、その戦法を成功させるべくスタートを張り込む。特にここ一番の勝負どころでは、スタート展示とまったく違うコース、起こし位置であっても、ほぼほぼゼロ台まで突っ込んで、自らが選択した戦術の顔を立てている。つまり、ピットアウトからスタートまで、整備技術、コース戦術、集中力、精神力などがすべて綿密に絡み合い、連動しているのだ。その後のターン技術については、今さら語る必要もないだろう。私が現在の毒島に感じる「強さ」は、スタート以前の“戦略と実行力”なのである。

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 あれこれ偉そうな分析をしてしまったが、これを一言でまとめると、こうなる。
「毒島のレースは、ピットアウトから目が離せない。めっちゃ面白い!!!!」
 これに尽きるな。例えば……今節の5、6日目の一般戦で、ゴリゴリと前付けに動いたのは2000勝に燃える前本泰和だけだった。他のレースはピットアウトから12秒針が回るまでほとんど同じ景色で、見る必要がないほどだった。だが、そんな「枠なり3対3&楽イン」の金太郎飴のようなレース群の中に、ポツンと毒島を落としてみよう。3~6号艇あたりに。毒島が今回は何をやらかすか、多くのファンはファンファーレとともにピットに目を向けるだろう。毒島の外に今日の前本がいたりしたら、さらに何が起こるかドキドキハラハラすることだろう。
 神出鬼没に動く選手がいたら、舟券が買いにくい。
 そんなファンもいるだろうが、選手の個性が反映されない金太郎飴SGより、変幻自在に勝つコースを選んでスタートも張り込む毒島のいるレースを断じて支持する。というか、とにかく見たい。何回でも見たい。

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 同じように勝つコースにこだわる田村隆信は「トリックスター」と呼ばれている。現在の毒島はロケットバナレなども含めて、田村より多様多彩な引き出しを持っていると思う。多い分だけ、それぞれの引き出しの組み合わせも相加相乗的に増える。ここ数カ月で様々な毒島マジックを観てきたが、それはほんの一部に過ぎないと思っている。
 今後、ダービーやチャレカやグランプリで、しかもここ一番の勝負どころで、この「コースの魔術師」(魔王と呼びたいくらいだ)がどんな切り札を出してくるのか。本当に楽しみでならない。(text/畠山、photos/シギー中尾)