BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――団結力

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 田頭実が途中帰郷となってしまった。ドリームにも選ばれ、1Rでも持ち味の前付けを繰り出して沸かせていただけに残念極まりない。まずは、一日も早く怪我が癒えることを願いたい。
 ピットに戻ってきた田頭は、自力でボートから降りられずに顔を歪めている。足を痛めたようだった。その様子を見て、出迎えていた福岡支部だけでなく、他の支部の選手たちも心配そうに田頭の周囲に集まった。怪我は他人事ではない。支部や期の垣根などいっさい関係なく、気遣いを見せるものだ。選手会の重職を担う田中信一郎は、なかでも憂いの表情を強くし、その後の対応などをてきぱきと指示もしていた。そうしながらも、田頭の無念を共有してもいただろう。エンジン吊りもそうだが、団結して事にあたる選手たちの様子には、本当に頭が下がる。

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 1Rを勝った須藤博倫もまた、田頭の様子を見て顔つきを変えている。ピットに戻ってきた直後は、同期の秋山直之を笑顔を交わしていたのだが、田頭の周囲の空気を感じ取るや、歓喜は消え、高揚感も抑えられたようだった。自分が勝てれば誰かが負傷してもかまわない、などと考えている選手は一人もいないのだ。当たり前のことかもしれないが、たとえば道中の競り合いでの接触だって、相手を危険に陥れてもいいなどと誰も考えていないということである。

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 2R発売中、本体整備をしていた山田康二が、整備を終えて装着場にあらわれた。ちょうど須藤が着替えなどを終えてピットに戻ってきていて、ボートへの装着をヘルプしようと歩み寄っている。それを遠目で見ていたのが小野生奈。小野は鋭い瞬発力で駆け出して、そこに合流している。気が利くというのか、気がいいというのか、エンジン吊りなどでも小野のこうした動きは頻繁に見かけられる。

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 たまたま整備室にいた西山貴浩もヘルプに出てきていて、モーターを外した架台をボートリフト脇に運ぶ役目を買って出た。しかし、山田としては「先輩にそんなことをさせるわけにはいかない」のである。片足を架台にかけ、もう片足で地面を蹴ってスピードにのる西山を、山田は全速力で追いかける。西山は「いいって、いいって」とばかりにスピードを緩めず、山田はリフト手前でようやく追いついたのだった。架台をきれいに並べる仕事までさせるわけにはいかんと、山田は架台を奪っている。それを尻目に西山は、どうってことないとばかりに、涼しい顔で整備室へと戻っていくのだった。

 選手たちはそんな間柄ながら、水面ではバチバチにやり合う。だから、ボートレースは奥が深いのである。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)