BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――今年も過酷なトライアル1st

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 トライアル1st第1戦。いきなり2人が減点をとられるという、その意味では波乱のスタートとなってしまった。11Rで赤岩善生が不良航法、12Rで太田和美が2回の失速で、ともにマイナス7点。二人とも5着だったので、第1戦で獲得できたポイントは1点のみ。2nd進出は絶望的な状況となってしまった。何が起こるかは誰にもわからないので、道が閉ざされたという言い方はしたくないが、しかしここからの勝ち上がりは至難の業どころの話ではない。それを自覚している部分もあるだろう、赤岩も太田も当然のように表情はカタい。

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 6着に敗れた石野貴之も、顔をひきつらせて引き上げてきている。失速した赤岩を避けての後退のいう不運もあっての6着だが、だからといって得点7は得点7。2走しかないトライアル1stでのこの不利は、あまりにも痛い。選手用の喫煙室では、ひとりうつむいて考え込む姿もあった。調整はどうだったのか、1マークはあれでよかったのか、道中は……と頭をよぎるものは多かったに違いない。

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 同じく6着の濱野谷憲吾は、苦笑が止まらなかった。4カドからまくって攻めたが、あと一歩。伸びは確実に分が良かったが、「出足がぁぁぁっ!」と他の選手たちに叫んだ。攻めたから悔いはなし、というのは超短期決戦のトライアル1stではきっと当てはまらない。明日の大逆転に賭けるしかない。

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 1号艇で敗れた岡崎恭裕は、やはり苦笑いが多く、また記者会見では妙に陽気だった。ここで逃げておけば2nd行きはほぼ当確だっただけに、「ガッカリしてます」は本音のはず。そして、その明るい振る舞いは、僕には悔しさを押し込めようとしているもののように思えた。それが前向きなものだとするなら心配はないが、強がりのようなものだとしたらどうだろう。トライアル1stの過酷さが、選手の感情をいたずらに揺さぶることはおおいにありうることだ。その意味で、トライアル1stは精神の戦いがより尖鋭化するのだろう。

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 そう考えると、レース後にリラックスしているようにも見えた菊地孝平は、間違いなく怖い存在だ。3着だったことや機力的なものや、そうさせる要因はあるにせよ、切羽詰まらずにいられるメンタルは大きな武器になるように思えるのだ。ここぞという場面では、他を寄せ付けない雰囲気を醸し出すこともある菊地だが、実は今日は早い時間帯にもそういったムードではなく、柔らかな表情を見せてもいたものだ。まあ、何が正解かは何も言い切ることはできないけれども、勝者以外では菊地のたたずまいに目を奪われたのは確かだ。

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 1着を獲ったのは吉川元浩と馬場貴也。レース後の吉川は淡々としたものだったが、確かな手応えを得たのは間違いなかろう。「出足型ですね。行き足もいい」というのが会見での弁。濱野谷に対してしっかり伸び返してもいるわけだから、足的にはやはり好感触ということになるだろう。トライアル1stの第2戦は進入からもつれる可能性もあるが、「枠番死守」とのこと。2nd行きはほぼ当確でも、緩めるつもりはいっさいなさそうだ。

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 これが勢いというものなのか、馬場はグランプリデビュー戦で見事に1着。もちろん嬉しそうな表情を隠さなかったが、それ以上に喜んでいたのが先輩の守田俊介。馬場を出迎える際には両方の拳を何度も何度も握りしめ、それはあたかもダンスのようなのであった。
 馬場の会見でも守田“記者”が大暴れ。乱入してきて、代表質問が終わると、周囲にも促されつつ、馬場に質問を飛ばした。「今節は20冊くらいエロ本を持ってきているのは何なんですか」って、おいっ!(笑)。もちろんジョークだろうけど、本当に持ってきているのなら、持ってこさせたのはあなたでしょうが!
守田「展示の前とかはカタくなってましたけど、それでも勝てたのは誰のおかげですか?」
馬場「えーと、自分のおかげ?」
守田「(記者に向かって)みなさん、ここは大々的に書いてくださいよ!」
馬場「守田先輩のおかげです(苦笑)」
 言わされてるみたいな感じですが(笑)、実際に馬場はその前にも、「守田先輩に思い切って行けっていわれて、その神の声が効きました」とも言っている。初のグランプリ、この先輩の存在は、馬場にとっては大きな大きな後押しになるのではないか。まあ、2ndでは敵同士ですけどね。

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 さあ、トライアルといえば枠番抽選! 運命の1st第2戦を占う抽選会は、12R終了後に控室で行なわれている。
 まずはB組(11R)。真っ先に引いた吉川元浩は4号艇を引き、続いた岡崎恭裕は6号艇。岡崎は緑の球を見た瞬間に、やっちまった、とばかりに舌を出す。さらによろめくようにガラポンの前を離れるのだった。勝負駆けの6号艇は、やはり痛い。

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 よろめいたのは、池田浩二も同様だった。池田が引いたのは黄色。その瞬間、岡崎より激しくよろめいて、そのまま抽選会場を去っていった。1stの枠番は6、5かあ。これは厳しい。賞金ランクで決まる初戦はともかく、2走目も外枠とは運がない。

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 いや、もっと厳しいのはA組(12R)の新田雄史だ。4番目に回したガラポンから出てきたのは、またもや緑。1stは2戦とも6号艇とは……。今日は結局枠なりの6コースとなったが、明日こそ前付けが本当にあるかもしれない。

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 A組で真っ先に回したのが馬場貴也だが、いきなり白! 報道陣や選手仲間からどよめきが起こった。特に初戦下位選手は、巻き返しのためにも明日こそ1号艇を、という思いだったはずだが、真っ先に白を出されては溜息も出ようというものだ。馬場は微笑を浮かべただけだったが、きっと心のなかでガッツポーズをしたはずだ。
 組み合わせは別項の通り。第2戦は初戦よりも、激戦になることだろう。

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 シリーズ組。12R発売中、篠崎仁志の顔が整備室の窓越しに見えた。覗き込むと、本体整備中。今日は1号艇で逃げ切っているのだが、足的にはまったく満足していないのだ。昨年まで2年連続でグランプリ出場を果たしていたが、そのプライドにかけても、シリーズで無様に負けるわけにはいかない。その整備自体に、仁志の気合が透けて見えたように思う。

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 10R終了後、突然水神祭が行なわれている。関東勢が集合した輪の中央にいたのは長田頼宗。10Rのシリーズ特別戦は4着、何よりSG覇者なのだから、初1着などを祝ういわれがない。この水神祭、長田にお子さんが産まれたことを祝う水神祭だとか。そう、水神祭はこういうときにも行なわれるのですね。プライベートでのおめでたい出来事も、水に放り込んで祝うのがボートレーサー流。突然のことで写真に収めることができずすみません。長田選手、おめでとうございます!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)

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11、12R発売中に行なわれたトライアル2nd組のスタート練習。前検と同様、レースで戦う3名ずつで行なわれている。これを終えた峰竜太、「白井さんのほうが少しいいですね。僕もいいですよ。朝、本体を割っていたのは点検だけですけど、良くなっている」とのこと。ただ、表情を見ると、「白井さんのほうが……」のほうが本音に聞こえたのだけれど……。