BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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住之江グランプリTOPICS 2日目

トライアルの彼我

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11R

①太田和美(大阪)18
②桐生順平(埼玉)18
③石野貴之(大阪)15
④吉川元浩(兵庫)15
⑤池田浩二(愛知)20
⑥岡崎恭裕(福岡)31

 太田が激辛のインモンキーで後続をシャットアウトした。
 このレースに限って、私は2マーク寄りのスタンドに向かった。地元の石野はじめ、様々な勝負駆けが懸かった1戦。どれだけの観衆が集まるかと思いきや、フェンス際に佇むファンは約20人ほど。例年、立錐の余地もないほどの大観衆が集うトライアル2ndの最終戦とは、これほど熱量が違うものなのか。
 閑散としたスタンドに、それでもファンの叫び声が響く。
「オオタッ、ぜったいに逃げろよ!!」
「オッカッザッキーーー!!」
「キリューーーッッ!」

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 もちろん、もっとも険しい勝負駆けレーサーにも、絶対に本人に届くであろう大声が飛び交った。
「イシノォォォ、1着しかないんだぞ! 1着しかないんだからなーーッ!!」
 間もなく、12秒針が回って石野がゆっくりと前進しはじめた。スタート展示では12456/3の単騎ガマシだったが、本番は全員が折り合っての枠なり3対3。どこまで攻めるか。2マーク寄りのため、あとは対岸の大型モニターに任せるしかない。遠目にも3コースがやや覗いたように見えたが、すぐさま内2艇が伸び返して石野のまくりを空振りに終わらせた。回ってすぐに独走態勢に持ち込んだ太田の心境は、それなりに複雑だったことだろう。

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 ほぼGP戦線とは無縁の1着が決まった水面。2、3着争いは桐生vs吉川の激闘が繰り広げられていたが、これはこれで「2nd入り当確」の鍔迫り合いでもあった。自然、私の目はさらに後方、④着条件の池田と⑤着条件の岡崎に向く。池田が5番手、岡崎が6番手! 池田が前の石野に、岡崎が前の池田にそれぞれ必死で追いすがる光景は、これがグランプリであることを如実に感じさせた。最後の最後、岡崎が池田を追い抜いて5着入線。これでも当確とは呼べない立ち位置だが、希望の灯が残る着順を確保した。

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 レース後、着順通りに帰還した選手たちに対して、大声を発するファンは皆無だった。地元の勝者・太田にも地元の敗者・石野にもそれはなかった。おそらく、掛けるべき言葉が見当たらなかったのだろう。静かに手を振るファンもいたが、20人のほとんどは静かにその場に立ち尽くしている。また、去年の5日目との熱量差を肌身に感じた。
 昨日も今日も様々な勝負駆けのドラマが生まれたが、これはまだプロローグに過ぎない。真のグランプリの勝負は、明日からはじまる。
 そう思った。

恐るべき馬場山脈

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12R 並び順

①馬場貴也(滋賀) 04
⑥新田雄史(三重) 08
②赤岩善生(愛知) 34
③菊地孝平(静岡) 09
④濱野谷憲吾(東京)13
⑤笠原 亮(静岡) 21

 こちらのレースは、通常どおり1マーク側のスタンドで観戦。ピットアウトから数秒後に、「しまったかも!?」と心の中で叫んだ。スタート展示ではほぼすんなりの6コースダッシュを選択した新田がオレンジブイからエンジン全開、モンキーターンでコースを奪いに行ったのだ。

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 ヤラズのヤリ!!??
 これを読みきっていれば、こちらも2マーク寄りに行って至近距離で目撃したかったのだが……新田は③着条件だったため、6コースからスピード勝負と決めてかかっていた。この新田の“奇襲”?に馬場だけが抵抗し、押し出されるように他の艇はひとつずつ外のコースを選択。菊地がスロー4コースで、メイチ①着勝負の憲吾が5カド。これはこれでスリリングな隊形だ。
 12秒針が回って、すぐにスタンドの観衆がざわめく。3コースの赤岩が、明らかに起こしのタイミングを逸している。その外から菊地が一気に追いつき追い越し、さらに90m起こしでダッシュの付かない新田を軽々と追い抜いた。その外には、5カドの憲吾がしっかり追随している。
 3-4か4-3だ!!
 そのあたりの穴舟券をバラバラ買っていた私は、心の中で快哉を叫んだ。が、その穴舟券は実現しなかった。インコースから、菊地よりも早いスタートを切った馬場が凄まじい勢いで伸び返していたのだ。そのスタート、コンマ04!!!! すでに完走するだけでほぼ2nd当確だというのに、この琵琶湖のスピード野郎は90m起こしからスリットのキワ目をほぼ全速で突っ走っていた。なんちゅう男だ、ババッ!

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 新田を超えた瞬間に「馬場山脈」に気づいたであろう菊地は、「こりゃあかん」という風情ですぐに減速。臨機応変のまくり差しに切り替えた。惜しかったのは、その外をぶん回した憲吾だ。今日の73号機は、昨日までよりはるかに仕上がっていたと思う。全速で菊地を飛び越えつつ、サイドの掛かりのいい割り差しを突き刺した。久々のSGでの「憲吾スペシャル」炸裂か、と見ていたものだが、これも馬場山脈の頂上にに引っ掛かるような形で不発に終わった。うん、何の慰みにもならないけど、スピードといい角度といい素敵な攻撃ではあったぞ、憲吾。

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 それもこれも、すべては馬場の韋駄天スタートに尽きるな。昨日はインの岡崎よりも早い初動で決め差しをブッ込み、今日はインから自力で2艇の猛攻を撃破。この怖いもの知らず、緊張知らずの勢いは、明日の2ndでも実にまったく軽視できない。3号艇・守田&4号艇・馬場のシガシブラインの連動も含め、掛け値なしの「台風の目」とお伝えしておこう。
 今日のダイジェストは妙に「私的回顧」っぽくなってしまったが、11Rの2マーク側スタンドの余韻として許していただきたい。明日からは、また私なりの拙いパワー評価を交えながらトライアル2ndの攻防をアップします。

新型エンジンのアワカツ?

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 一方のGPシリーズは、しつこいようだが平尾崇典から。うーん、今日の10Rの伸び足も半端なかった。昨日よりひとつ遠い6コースから、伸びる伸びる!! ダッシュの利きにくい住之江でのあのパンチ力は、持ちペラ制の全盛期の阿波勝哉を想起させた。インコース湯川浩司もトップ級の直線足だったためにブロックされたが、イン11勝・2着1回の準パーフェクト水面にあって、もっともスリリングな「まくりvsイン」の攻防だった。さてさて、明日の平尾は8R3号艇。スロー起こしからでも、あの図抜けた伸び足が炸裂するのかどうか、ワクワクしながら観戦させていただこう。

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 1・1・2の平尾と同じ着順で予選トップに立ったのは丸岡正典だ。正直、足的には中堅上位レベルだと値踏みしているのだが、そこは地元水面。スリットから1マークから的確かつスピーディなハンドルで得点を加算している(勝ち時計が抜けた節間トップなので、実は超抜なのかも??)。明日からは1st組が参戦して、一気に上位得点者が増えるシリーズ戦。丸岡vs太田vs石野の仁義なき大阪戦争が勃発するかも?(笑)

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 それからそれから、昨日のパワー評価でも触れた山田康二と前本泰和の足色がやはり軽快だ。山田はストレートが強力なバランス型、前本は出足系に特化したらしい仕上がりで、機力的には憲吾73号機とも渡り合えるだろう。他では佐藤翼、齊藤仁、前田将太も上々の仕上がり。一方、私が前検でS級に指名した渡邉英児は……今日の実戦足はBすらも付けられない脆弱な足色だった。これだけ酷いとなれば、たまたま今日だけという弁明も利かないな。見立て違いをお詫びします、すいまっせん!(text/畠山、photos/シギー中尾)