BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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児島レディースオールスター優勝戦 私的回顧

桃太郎の天下獲り

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12R優勝戦

①寺田千恵(岡山)19
②塩崎桐加(三重)24
③中谷朋子(兵庫)27
④遠藤エミ(滋賀)39
⑤田口節子(岡山)29
⑥日高逸子(福岡)27

 選手班長の“寺田桃太郎”が鮮やかに逃げきった。進入はやはり日高が動かず穏やかな枠なり3対3。絶対にフライングは切れない立場の寺田はインからコンマ19と辛抱したが、外5艇はさらに踏み込むタイミングを逸した。

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 こうなれば、自慢の行き足で外を突き放すのみ。1マークまでに1艇身近いアドバンテージをキープし、回り足が強力な中谷の全速のツケマイを跳ね飛ばし、一番差しの塩崎、二番差しの田口らを寄せつけずにV街道を突っ走った。選手班長の大任を務めながらの優勝、天晴れと言うしかない。おめでとう、テラッチ!

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 2着争いは田口と日高の抜きつ抜かれつのデッドヒート。ここに後方から遠藤が凄まじい追い上げで参戦した。先頭から4番手まで、歴代賞金女王たちによる華麗なる競演。今日に限っては、3人の弟子たちを引き連れて先頭をひた走る桃太郎、という構図ではあった。接戦から2着を取りきったのは、同じ岡山支部の田口。地元Wエースのワンツーフィニッシュは、出来過ぎとも言うべき大団円だ。

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 このレースを別の視点で見つめるなら「日高が前付けに動かなかった」というのもそれなりに大きなトピックと言えるだろう。もちろん動く動かないは選手の自由であり、スタートが見えやすいなどの理由で6コースを選んだ逸子ママを責めるつもりは毛頭ない。昨日の12R6号艇で動かなかった山川美由紀も然り。

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 ただ、日々年々「枠なり3対3が主流で前付けは邪道」という風潮が増幅している女子レース界にあって、今日(ビッグレースの優勝戦)の枠なりはその風潮に拍車をかける“判例”と捉える選手たちもいることだろう。
「大一番で6号艇の山川さんや日高さんさえ動かなかった」
 こんな内面心理が、今後の女子レースにどんな影響を与えるか。そして、今は積極的に動いている小野生奈や野田部宏子などの若手レーサーにどんな変化が生じるのか。「男子のトップ級に負けない女子レーサーを育てる」という意味では、深いスロー起こしの実戦経験が必要であり(SGなどでは進入争いが激化するから)、オール女子戦でも普通に前付けがあってしかるべき、と私は思っている。もしも「分かりやすいボートレース」を女子選手が率先して実行しているのであれば、私は異議を唱える立場であり続けるだろう。
 分かりやすいボートレースが艇界の未来にとって得か損か、は主催・運営する人々たちにとっての大きな課題である。選手たちは「自分(たち)が今よりも強くなって、ファンに素晴らしいレースを魅せる」ことだけに専念してもらいたい。その中のひとつが、作戦待機行動中のさまざまな駆け引きだと私は確信している。(photos/チャーリー池上、text/畠山)