10Ｒのエンジン吊りに並んであらわれた山口剛と毒島誠。会話を交わしながらボートリフトへと向かう。加わるエンジン吊りはそれぞれ違うが、それぞれの作業を終えると整備室内にあるプロペラ調整所で合流した。そしてそこから、長い会話が続いた。
毒島がプロペラを叩くのを見て、山口が一言。さらに山口は手ぶりを加えたりもしている。山口は自分のプロペラにゲージを当てて、毒島がそれを見ながら一言。といった具合に、二人はプロペラの方向性や理論的な情報を交換しているようであった。どちらかというと毒島が山口に意見を求めているようにも見えた。
今日の午後は、こんなふうに支部の垣根を超えての絡みを多く見かけたように思う。たとえば山川美由紀と太田和美。山川は11Ｒ発売中まで試運転を続けている。同じくらいの時間帯まで試運転をしていたのは、大上卓人と関浩哉の二人。若者に混じって、今節最年長の女傑が走っていたのだ。ようやく試運転を切り上げた山川を出迎えたのは太田和美。ふたりはもう20年以上も、何度も同じ舞台で顔を合わせてきた。若手が数多く台頭し、銘柄級が出場を逃している今節、太田も登番では上から４番目になっている。山川にしても太田にしても、やはり心やすい間柄ということになるのかもしれない。
大上卓人と話し込んでいたのは、徳増秀樹。戸田の試運転用係留所は、ピットから石段を下りていった一段下にあるのだが、その石段の入口で話し込んでいた。どうやら徳増は大上にアドバイスを送っていた模様。別れ際、大上は直立不動で頭を下げて「ありがとうございました！」と快活に謝辞を述べている。静岡と広島だろうが、75期と109期だろうが、過酷な戦いを繰り広げる戦友には違いないのだ。
整備室で談笑していたのは、中島孝平と山田康二。中島の一言一言に、山田がおかしそうに笑っていた。そういえば中島は、他支部の選手と絡んでいることがけっこう多い。田中信一郎は同じ近畿だからまだしも、山崎智也とも非常に仲がよさそうだ（智也は福井支部との絡みをけっこう見かける）。菊地孝平とも“孝平つながり”なのか（？）よく会話を交わしている。支部を問わず、好かれる人柄なのだろう。ちなみに、節中のピットや選手紹介などでは寡黙な印象もある中島だが、インタビューしてみると実は饒舌だったりする。
平尾崇典と磯部誠は真剣な表情で話し込んでいた。ということは、レースに関すること、あるいは調整に関することだろう。好機を引いた磯部だが、調整をまだ完全に掴み切ってはいない様子で、プロペラ調整所での姿を山ほど見かける。また今朝、毒島誠に「ブスさん、何をしたらあんなに良くなるんですかぁ～？」と冗談交じりに問いかけたりもしていた。パワーを引き出すのに必死なのだ。伸び抜群の平尾にもそのあたりのヒントを問うたのだろうか。磯部のスタイルとはむしろ正反対とも思えるわけだが、貪欲に何かを得ようとするのは、今節だけでなく、磯部の糧になっていくはずである。
10Ｒ６着後の峰竜太には、いろいろな選手が声をかけていた。峰らしくないずり下がりというか、大敗だったから、誰もが気になったというところか。峰はやや顔を引きつらせながら応えていた。今朝、峰がややピリピリしているように感じられて、その点がちょいと引っかかったりもしていたのだが、今日の２走を見ると仕上げに苦慮しているとしか思えない。他の選手にもそう見えているのだろう。レース後は、ひとり黙々とペラ調整。峰は気安く声をかけられる選手の一人なのだが、今日は少し近寄りがたいのであった。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
そういえばこんな組み合わせも。ふたりとも賞典除外だが、めげずに頑張れ！
