BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――同期の桜

 いずれ劣らぬベテランの雄たちである。長年第一線で走り続け、やるべきことは知り尽くしているし、ルーティンのようなものも確立している。そして何より、みな仕事が早い。前検のピットを見ていると、そのテキパキキビキビとした仕事ぶりには圧倒される。陸の上でも、彼らは百戦錬磨なのだ。

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 整備室やプロペラ調整室、係留所などを眺めていると、同期の絡みが数多く見られたりする。かつては記念の舞台で顔を合わせるのが日常だったが、ベテランになってきてその機会も減ってきている。それだけにこの舞台でともに戦えるのは感慨深いことでもあるだろう。プロペラ室で見かけたのは、吉田一郎と間嶋仁志の62期コンビ。真剣な顔つきで言葉を交わしながら、向かい合わせになってペラを叩く。吉田はエース機を引いた。その仕上げに、同期の助言は心強いものとなるだろう。

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 川北浩貴と海野ゆかりは71期。こちらもペラを叩いていた場所が至近距離で、時に会話を交わしていた。その表情はなんとも柔らかで、気の置けない間柄であることが伝わってくる。71期はほかに馬袋義則、角谷健吾も参戦。なかなか層が厚い期だ。本来はここに山崎智也も加わるはずだったのだが……家事都合欠場はいかにも残念。

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 それにしても、69期はやっぱり“花の69期”なのだ。今節は7人参戦と一大勢力である。そのうち太田和美はドリーム戦に登場。そして、これはたまたまではあるが、前検の6班が全員69期生だった。最も登番が上の三嶌誠司が1号艇で太田以外では最も登番が若い田中信一郎が6号艇。スタート練習とタイム測定に出る前、彼らはボートの上で情報交換か何なのか、大きな声で会話を交わしていた。三嶌がいちばん離れたところにいる田中に言葉を投げたり、その間にいる仲口博崇が加わったり。息がぴったりという雰囲気。そういえばSGの予選で69期6人が対決する番組が組まれたことがあったな、と思い出す。全員がマスターズ世代となって、このピットでまたあの日と同じような光景を作りだす。69期がいかに傑出しているかを改めて実感した。

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 同期生といえば松井繁と服部幸男。昨年は鈴木博や中里英夫もいたが、今節は2人のみの参戦。SGでもマスターズでも、この二人が肩を並べると放つオーラがぜんぜん違う。もう何十回も絡みを目撃しているけど、いつも新鮮な感動を覚える。今日、最後の最後までプロペラ室に居残っていたのが松井だった。明石正之や武田光史もかなり粘って叩いていたが、ラストは松井だったのだ。納得がいくまで調整を続ける姿は、SGだろうとマスターズだろうと変わらない。松井が常に口にする「いつも通り」は、舞台がどこであろうといつも通り全力を尽くすということだ。

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 整備室で最も遅くまで居残ったのが、今垣光太郎と木村光宏。今垣は早くも本体を外しての整備だった。部品を交換している様子は見ることはできなかったが、久々に“整備の鬼”ぶりを見たように思う。木村もまた、整備にしても試運転にしても、とことんまでやり尽す男。「らしい」姿を見せてもらったというところだ。

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 あ、整備室を最後に出たのは、実際は佐々木康幸と一宮稔弘か。そう、“新兵”だ。一宮は整備テーブルなどを整理し、佐々木はゴミ箱の中身を1カ所にまとめる。10数年前の記念では同じような光景が見られたのだろうが、それをこの年齢になって再現しているのは、本人たちにとっても新鮮なのではあるまいか。そうそう、クラシックを獲ったばかりの吉川元浩も登番は下から2番目なので、同じように作業をしていた。ベテランが新兵作業をするという新鮮な光景は、まさにマスターズ名物、ですね。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)