BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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宮島マスターズTOPICS 初日

ミスターマスターズの苦境

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 過去19回の歴史を誇るマスターズだが、今節の52人の中で「名人位」を襲名したレーサーは4人しかいない。まずは言わずと知れた今村豊。マスターズに9度参戦して8優出3V! 他の追随を許さぬマスターズの申し子として君臨してきた今村だが、今節は初日から苦境に立たされた。
 好枠2号艇を得た前半3Rは、③江口晃生の前付けを入れて自力攻めの視野が広がる3コースを選択。が、スリット同体からのツケマイが流れ、さらに道中の競り合いでも後手後手に回って4着まで。リズムがままならないまま迎えた後半8Rも5コースからのまくり差しを阻まれ、逆転の差しを狙った2マークはキャビテーションが発生して5着に敗れ去った。もちろん、まだまだ巻き返しの利く4・5着発進ではあるが、足的にもレースの流れ的にもピリッとしない点が気になる。この男に限って、このままズルズル予選落ちなどという展開はありえないと思うのだが……。

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 9年前に今村豊を一撃で差し抜いて名人位に就いた西島義則も、今節は厳しい門出となった。5Rのスタート展示、6号艇の西島は何食わぬ顔で6コースのダッシュを選択。これを鵜呑みにしたファンはほぼいないだろう。いざ本番、やはりピットアウトから穏やかに漸進した時には「まさか?」と思ったものだが、オレンジブイを回った直後にあっと驚く“切り返し”! やんわり牽制し合っている他艇を最内からズブズブと差し抜いて見せた。さすが変幻自在の鬼軍曹。最終的には4コースのスローに収まった西島ではあったが、まさにマスターズならではの奇襲と言えるだろう。
 で、何よりも重要なレース結果は……4コースから差してブロックされて万事休す。せっかくの奇襲は実ることなく、大差のシンガリに敗れ去った。まあ、西島の場合は6号艇で6着だからして、悲観するレベルではないか。地元水面の利を活かし、明日からキッチリ巻き返すと信じたい。

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 今村豊や西島より険しい初日になったのが、6年前に名人を襲名した江口晃生だ。前検からパワー気配の怪しかった江口だが、今日は1R3号艇&7R1号艇という好枠2走でまさかまさかの6着4着。レース内容も前半は道中でズルズル後退し、後半のイン戦はスリットからドカ遅れで2艇のまくりを浴びるなどなど、目を覆いたくなるような惨状だった。正直、今日のままの出足では明日以降の巻き返しもままならないだろう。せめてもの救いは、明日の12R(5号艇)までたっぷりと時間があることか。百戦錬磨の整備巧者がどんな勝負手を放つか、直前情報も含めて大いに注目しておきたい。

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 古豪の名人トリオが苦戦する中、ただひとり絶好のロケットスタートを切った名人が前年度覇者の渡邉英児だ。7Rは4カドからインの江口名人を2段まくりで一蹴。直前の展示タイム(6秒58)も今日イチの猛時計で、昨日からストレート足を大幅にアップさせたに違いない。
 続く11Rもインからしっかり伸び返し、2コース松井繁の意表のツケマイをまったく寄せつけずに逃げきり圧勝。現役名人の風格すら滲ませるピンピン連勝発進だった。今日のリズムとパワーを明日以降も活かしきれば、今村豊でさえ成し遂げていない連覇=「名人位防衛」という大偉業もありえるだろう。長いスランプ?から48歳にして大化けした苦労人が、さらなら高みに到達するのか。随所に舟券に絡めながら成り行きを見届けるとしよう。

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 そうそう、カドまくりで名人撃破と言えば、5R3号艇の服部幸男も強烈なインパクトを残した。先に触れた⑥西島名人の「オレンジブイ切り返し前付け」の奇襲をすんなり受け入れ、さらに④間嶋仁志の前付けも容認しての5カド選択。スタートは両サイドより凹んだ危うい隊形に見えたが、そこから一気に西島を飛び越えて伸びなり全速のぶん回し。あっという間にイン田中信一郎の外に辿り着き、艇をこすり付けるようなツケマイで一気に先頭に躍り出た。
「やっぱ、新兵は外から勝負しなくっちゃ(笑)」
 直後のインタビューでも軽妙なジョークがほとばしる。48歳だから、“新兵”じゃないっすけどね。水面といいインタビューといい、こんな服部幸男が見たかった! そういえば、このマスターズの権利をゲットしたのも去年7月マスターズリーグ優勝戦の5コースだったな(まくり差し)。あれから9カ月ぶりの5コース勝ちで勢いに乗るであろう服部幸男。グランプリを6コースから制した天才レーサーが、平成最後のビッグレースで再びファンをあっと驚かせるかも??(photos/シギー中尾、text/畠山)