準優勝戦の朝、ピットには報道陣や関係者が増えて、一気に賑わいを増している。そのど真ん中で、渡邉英児がモーターを装着して試運転や作業の準備をしていた。近寄って挨拶をすると、「おはよっす！」と笑顔。今朝も現名人は爽やかだ。
渡邉のボートの周辺には準優組のボートもいくつか置かれていた。松井繁、吉川元浩、野添貴裕。３人とも、プロペラはモーターに着いたまま。ひとまずの調整を終えて、いつでも試運転に飛び出せる態勢、ということだろう。エンジン吊りで見たこの３人は実にリラックスした雰囲気。というか、そのエンジン吊りは仲間にいじられることが多い馬袋義則の１Ｒ後だったので、この３人に限らず集結した選手は全員が笑っているのだった。馬袋の人徳だろう。
ペラ調整室には、前本泰和、太田和美、松本勝也ら。１Ｒが終了して数分後には、戦いを終えたばかりの西島義則も飛び込んでいた。太田は昨日のレース後にも入念なペラ調整を行なっていた。準優を前に、もう一丁、上向かせようと懸命である。前本もエンジン吊りに参加した後はペラ室に直行している。
早くも試運転をしていた準優組は、間嶋仁志、田中信一郎、三角哲男ら。田中はとにかく精力的で、エンジン吊りが終われば係留所へと走り、目いっぱい試運転をして、切り上げると速足でペラ室へと飛び込んでいく。表情に悲壮感は見えないが、渾身の仕事ぶり、といった感じである。
写真は、試運転ＯＫのランプがつくのを待つ間嶋。春のうららかな日差しを浴びながら、静かに時を待つ。間嶋のボートは１艇だけ離れた、係留所の端のほうにあって、戦いに向けての精神統一をはかっているようにも見えていた。６号艇だが、レースのカギを握るのはこの男。その“前付けっぷり”が楽しみだ。
ペラ室前あたりであたりの様子をうかがっていると、背中から大爆笑が聞こえた。これが予選トップの市川哲也。矢後剛との会話で大笑い、という場面だったようだ。地元での予選トップには当然プレッシャーがかかってくるわけだが、朝の時点ではいい付き合い方をしているようだ。
地元勢では、上平真二はゆったりモード。というか、ここ何日かはずっと、だな。整備室の出入り口脇にあるテーブルに陣取って、特に作業らしい作業もせずにモニターを眺めているのを何度も見た。また、心やすい地元の関係者と肩を並べているシーンも多い。つまり足は上々、ということだと思う。外枠でも軽視禁物！（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 黒須田 ＴＥＸＴ／黒須田）
