THE勝負駆け①予選トップ争い
吉川か、峰か!?
３日目まで４戦４勝（さらに言うなら戸田クラシックから平成・令和をまたいでＳＧ６連勝中）の吉川元浩か、はたまた４戦３勝のドリームウイナー峰竜太か。そんな一騎打ちムードがプンプン漂う４日目は、やはり最後の最後まで両雄がトップ２の座を明け渡さなかった。
とは言え、昨日までのような無敵の快進撃だったわけではない。まずは前半５Ｒ、４カドの峰がコンマ08でスリットから覗いたものの、ちょいと消極的な２番差しを選択して３着止まり。暫定トップ吉川に水を開けられる形になった。
が、続く６Ｒの５コース吉川もコンマ08から攻めきれずに３着。両者の前半戦は煮え切れない形で痛み分けとなり、接戦のままトップ争いは後半に持ち込まれた。自力トップの権利は吉川にあり、「11Ｒで②着以内ならその場でトップ確定。③着以下に敗れれば12Ｒの峰に自力の権利が移る」という感じである。
６号艇でもなんとか２着をもぎ取って、早々にケリをつけたい。そう思ったであろう吉川は、11Ｒのピットアウトからじんわりと前付けに動いた。コースは欲しいが71号機の爆発力を活かすために深くはなりたくない。そんな作戦待機行動だ。これに４艇が抵抗して最終隊形は12346/5。５コースを得た吉川は、例によってスリットから圧倒的な勢いで飛び出した。
やはり、今日もか!?
そう思わせる絞めまくりだったが、イン水域の白井英治、茅原悠紀の伸び返しも素晴らしい。３日連続のまくりは無理と見た吉川はすかさずまくり差しに切り替えたが、競ってからのレース足には直線と同じほどの力強さはなかった。吉川は前半６Ｒでも仲谷颯仁に競り負けており、ストレートに比べて出足系統はかなり平凡であることが判明した。もっと言うなら、今日の行き足～伸びも昨日までの暴力的な破壊力には見劣っていた、と思う。気圧と気温が大幅に上がったことで、回転にズレが生じたか。だとするなら、明日はその部分を修正できれば直線のみならず出足系統も良化される可能性はある。
11Ｒは他艇に揉みに揉まれて４着。この時点て吉川の予選２位以内は確定したものの、自力トップの権利は続く12Ｒの峰の手に滑り込んだ。その必要条件は、「２号艇で②着」だ。
THE勝負駆け②準優ボーダー争い
女子、無念
ここで視線を下に移そう。予選18位＝準優ボーダー争いもなかなかに熾烈だった。昨日の記事からの流れで言えば、険しい勝負駆けにアタックした女子レーサーか。結果を一言でまとめるなら「全滅」。２Ｒを鮮やかに逃げきった長嶋万記が5・83まで跳ね上げ、６Ｒあたりまで18位に踏みとどまっていたが、山田康二や徳増秀樹などが次々と６点をオーバーして長嶋を圏外へと突き落とした。
５Ｒ２号艇で１着なら準優圏内に舞い戻る大山千広も、イン篠崎仁志を差しきるには至らず２着止まり。返す返すも昨日の２Ｒのアクシデントに拠る５着（既報）が大きく響いた予選落ちではあったが、予選４日間の真摯かつアクティブな戦いぶりは多くのファンの心をさらに惹きつけたことだろう。
トップ勝負駆けの吉川とともに、11Ｒで女子レーサーの最後の牙城として準優ボーダーに挑んだのは小野生奈だ。２日目あたりまでまったく頼りなかったストレート足も例によって少しずつ上昇し（生奈の魅力は水面だけでなく整備力も相当だと思う）、スタート展示では「あるいは生奈なら!?」と思わせたものだが……この程度のパワーで11Ｒの鉄火場の猛者たちと渡り合うことはできなかった。外から吉川に一気に叩かれて万事休す。６着大敗で、オールスターでの３年連続予選突破の夢は閉ざされた。
さてさて、今日の勝負駆けのＭＶＰをひとり選ぶとするなら、やはり最終レースでジャイアントキリング＆唯一の万舟演出をやらかしてあの剽軽者だろうか。予選トップ争いを含めて、このレースを振り返ろう。
最終レースの明暗
毎度のことだが今節の４日目12Ｒも予選トップ争い×準優ボーダー争いがごった返す修羅場となった。それぞれの条件はこうだ。
12Ｒ
①桐生順平…①着で準優１号艇
②峰 竜太…②着で予選トップ
③西山貴浩…②着で6・17
④今垣光太郎…③着で6・00
⑤菊地孝平…①着で6・00
⑥石野貴之…④着で6・17
死活問題という意味では桐生だけがやや穏やかな気もするが、とにかく６人全員が何かしらの雌雄を決する勝負駆け。とりわけ気合が入ったのは「２着でトップ確定」の峰リューではなかったか。かねてから峰は「予選トップ～逃げ逃げで優勝してこそ真の覇者、早くそんな王道Ｖを実現したい」みたいなことを吐露しており、しかもファン投票断然１位（これも２年前までの最大目標だった）～ドリーム圧勝という布石まで加えれば、これ以上の理想的な優勝はありえないだろう。
２号艇で２着。今節の峰のリズム＆パワーなら、軽々と突破するかな。そんなことを思ったりもしたのだが、峰の外に思わぬ埋伏の兵が潜んでいた。同じく喉から手が出るほど「２着以内」が欲しい西山貴浩。この地元のエンターティナーが、１マークで凄まじい攻撃を繰り出したのだ。３コースからの決め撃ちの全速ツケマイ！
もちろん奇襲と呼ぶほどの作戦ではないのだが、なにしろ相手が桐生＆峰なのだ。今節の西山の悪戦苦闘ぶりを考えれば、このチョモランマのように聳え立つ「桐ヶ峰」に太刀打ちできるとも露も思わなかった（はい、私の◎はその隣、４カドの今垣でした＞＜）。おそらく桐生と峰も直接対決ばかりに気を取られ、展示タイムの悪い西山の存在を軽んじていたか。この全速のツケマイがものの見事に天才コンビを蹴散らしていた。１マークの出口で、まずは西山だけが己のノルマ達成を決定づけてしまった。
一方、天国と地獄の境目をふらふらと彷徨ったていたのが峰リューだ。先頭の西山は良しとして、己がひたすら欲しいのは２着！ そんな気持ちがまんま全身に詰まったような鬼気迫る光速モンキーを連発して、峰は眼前を走る２番手の桐生に肉薄した。が、桐生とておいそれと峰のターンに屈する男ではない。天才vs天才。盾と矛がゴリゴリぶつかるような攻防の末に桐生が競り勝ち、峰しか抱かぬであろう見果てぬ野望を葬り去った。もちろん、予選トップの座を射止めたのは吉川元浩だ。
そうそう、力なく峰がゴールした10艇身ほど前方で、西山が地元の大観衆に力強いガッツポーズを繰り出したこともこっそりと記しておこう。まさにしてやったり！の曲者の大番狂わせだった。（photos/シギー中尾、text/畠山）
