BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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福岡オールスター 準優ダイジェスト

魔術師の切り札

10R
①茅原悠紀(岡山) 04
②桐生順平(埼玉) 16
③篠崎仁志(福岡) 12
④上野真之介(佐賀)13
⑤山田康二(佐賀) 21
⑥石野貴之(大阪) 18

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 茅原が文句なしのイン逃げを決めた。
 進入はひとつでも内に入りたい石野を全員がブロックして123456の枠なりオールスロー、一直線の横並び。100mをわずかに切る冷ややかな起こしになったが、そこから強力な出足で突き進んだのがインの茅原だ。↑御覧のスリットラインになってしまっては、足的にもリズム的にも負ける茅原ではない。桐生のスピーディな差しも仁志の全速マイも寄せつけず、1マークを回って一人旅に持ち込んだ。パワー評価は予想欄から据え置きのA+【出S・直A】。

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 さあ、勝者が決してもSG準優はここからが正念場だ。2着勝負は2コースから差した桐生と3コースから握った仁志の一騎打ちムード。ほぼ舳先を揃えて向かった2マークは、戦法が真逆に替わる。差した仁志と握った桐生で、これまたほぼ並走。
 勝負あったかに見えたのは、次の2周1マークだ。直線でわずかに分がいい桐生が外から力任せの絞めまくりに出たが、出口でキャビって万事休す(誰が見てもそう思ったはずだ、うねりの影響だろうか)。仁志だけが悠然とファイナルへ歩を進めた。

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 が、今まで何度も何度も目の当たりにした「桐生マジック」が、今日も起きる。起きてしまう。すぐに態勢を立て直して3艇身ほど後方から追いすがり、ターンマークごとにジリジリと差を詰めてゆく。3周1マークを回ってその差は1艇身半に。内から外に持ち出した桐生は、最終ターンマークの手前で奇襲を放った。(おそらく)仁志が桐生の位置取りを確認した直後の、握りながらの切り返し! すぐに気づいた仁志も外から被せるような握りマイで応戦したが、わずかに強い桐生のストレート足が最後にモノを言った。大逆転のファイナル進出。仁志にとっては死ぬほど悔しい3着だったことだろう。「相手が悪かった」と言うしかないが、SG準優の2着争いにはいつだって有形無形の“魔物”が潜んでいる。このレースの魔物は、彩の国の魔術師だった。桐生のパワー評価も据え置きのA【出A・直A】。

24歳の蹉跌

11R
①峰 竜太(佐賀)15
②湯川浩司(大阪)19
③仲谷颯仁(福岡)13
④岡崎恭裕(福岡)12
⑤平本真之(愛知)18
⑥原田幸哉(長崎)15

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 スタート展示は原田の前付けを全艇がブロックして枠なりの横一線オールスロー。本番は「同じでは旨味がない」と判断した原田が動かず、穏やかな枠なり3対3で落ち着いた。スリットから出て行ったのは、出足強烈な仲谷と4カドから伸びた岡崎の地元コンビだ。
 2コースの湯川がやや凹んだため、仲谷には「絞め込み」という選択肢が生まれたが、おそらくその後の伸び足に自信がなかったか。まずは外から伸びる岡崎の勢いを消し、1マークの手前まで我慢してから湯川の外をぶん回す。この戦法はインの峰を脅かすものではないが、準優という意味合いでは正解と呼べるかもしれない。外の艇が牽制し合っている間に、大本命の峰は例によって全身を駆使する豪快な光速インモンキーでファイナル入りを決した。誰も鈴を付けに行かなければ、この男のインモンキーは間違いなく宇宙最強だ。展開が展開だっただけにパワー評価は難しく、据え置きのA【出A・直A】にしておく。

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 さあ、やっぱりここも2着争いだ。もつれたもつれた! まず、ターンの出口から力強く抜け出したのは満を持して握った仲谷だ。昨日も感じたが、今日の仲谷の出足も強烈無比。この部分の足だけなら節イチと言ってもいいだろう。ぶん回して加速して、あっという間に後続に2艇身。その鬼足を踏まえれば、盤石の2番手とも呼ぶべき態勢に見えた。
 が、そこから逆転の2着を狙う魔物たちが動き始める。2コースから差した湯川と二番差しの岡崎がゴリゴリやり合いながら、前を行く仲谷なんぞは眼中にないように一直線にターンマークに向かう。絵に描いたように大競り! マイシロがまったくない2艇は回った瞬間にさらに接触して真横に流れた。

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 これに対し、態勢が有利な仲谷はセオリー通りの「行かせて差す」を選択した。これも正着の一手だ。が、いざ実戦のハンドルワークでわずかなミスが生じる。待ち過ぎた。圧倒的に有利な展開だけに、慎重にケリを付けようとしたか。ターンマークをかなり外すほど待ってから差しを入れたが、もうその瞬間にはバック5番手だった平本の「二番差し(初動としては一番差し)」が突き刺さっていた。その後も岡崎のダンプを喰らうなど踏んだり蹴ったりの仲谷だったが、一言でいうなら経験不足。あの2マークの決定機はじめ、SG準優の2着争いへの対処が甘かった。ここに潜んだ魔物は、仲谷自身の心に憑依した何かしらだったか。
 バック5番手から2着を取りきった平本は、もちろん展開の利が大きかった。が、2マークで仲谷を捕えきった回り足、その後に他艇を突き放して行く足は見るべきものがあった。間違いなくストレートより出足系統が強いパワーだと再認識した。予想欄のA【出A+・直B+】がぴったりの足だったと自負している。

半周の節イチ決定戦

12R
①吉川元浩(兵庫) 07
②白井英治(山口) 13
③深川真二(佐賀) 19
④田中信一郎(大阪)21
⑤西山貴浩(福岡) 13
⑥徳増秀樹(静岡) 16

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 このレースに、2着争いの魔物は存在しなかった。それほど内2艇のパワーが抜きん出ていた。徳増がスローに構えたが、前付けに動くわけではない穏やかな枠なりオールスロー。今村豊が6コースのときの隊形だ。

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 そして、たっぷりの助走を取ったイン吉川が、今日もビシッと踏み込んだ。コンマ07! 恐ろしいほどに見えているのだろうし、71号機の節イチの行き足がその眼を支えてもいるのだろう。ちょうど10Rの茅原のような突出したスタートだったのだが、1マークからの展開は10Rのそれとは異質だった。スリットで半艇身ほど後手を踏んだ白井が、凄まじい差しハンドルで逃げる吉川に肉薄したのだ。今日の白井の展示タイムは吉川と同じ6秒78。それを裏付けるスピードで吉川の内にぴったり貼りつき、バック中間あたりまでまったく引き離されない。あの差しのサイドの掛かりを含めれば、今日の白井の足は今節でいちばん仕上がっていただけでなく、吉川をも超えて節イチだったかも?

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 とは言え、そこからの吉川の行き足~伸びが例によって半端なく(ここは節イチだ)、追いすがる白井を振り払うようにして2マークを先取りした。一方の白井も渾身の差しを繰り出したが、これまた惜しくも届かず。ここで明日のファイナルの枠番がすべて確定したと言っていいだろう。わずか半周の攻防だったが、今節でもっともパワーレベルの高いマッチレースだった。吉川のパワー評価は出足をややアップしてS【出A・直SS】、白井のそれは全体的な底上げに成功したとみてS【出S・直S】に跳ね上げておきたい。もちろん、明日もこの鬼足をキープできるとは限らないのだが。(photos/シギー中尾、text/畠山)