BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――多くの祝福

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 先頭でゴールし、半周してピット前に戻ってきた吉川元浩は、ボートの上で思い切り天を仰いだ。それは歓喜だったのか、それとも安堵だったのか。いずれにしても、それは充実感の表現にほかならない。今節、兵庫勢はただ一人。07年、この福岡でのグランプリを制したときには、鎌田義が号泣して出迎えている。吉川もまた大号泣し、がっちりと抱き合っていたものだ(吉川曰く「鎌田があまりに泣いているので、もらい泣きです」)。今日は、ひとり喜びを噛み締めるかたちとなった。ひとりボートの上で、吉川は福岡の空を見上げ、SG2連続優勝に浸った。

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 いや、実際はひとりではなかった。大阪支部から石野貴之が残っていたのだ。さらに、やはり長崎から一人で参戦した原田幸哉も。吉川はテレビの勝利者インタビューのため、ボートリフトではなく出走ピットに帰り着いているのだが、それをリフトあたりから原田と石野は見下ろし、吉川に手を振った。「ゲンコー、おめでとう!」。原田が声をかけ、吉川はとびきりの笑顔でこれに応えた。たしかに仲間は待ち構えていたのだ。
 ピットに上がってからも、祝福の声はやまなかった。上瀧和則選手会長が、吉川の背中をぽんと叩いてねぎらう。日高逸子も、深川真二も笑顔を向けた。その場にいた選手は全員が、吉川に声をかけている。吉川の目尻はますます下がり、深い笑顔が張り付いたまま表彰式への支度を急ぐのであった。

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 吉川元浩、おめでとう!
 我々からも祝福の言葉を送ろう。吉川は記者会見で「出来過ぎです」とほほ笑んでいたが、この男が好エンジンを引いたらこれくらいのことはやってのけられるのだ。SG3連続優勝について問われて、「エンジン抽選がんばります(笑)」と吉川。多摩川の評判機をまた引いたなら、史上3人目となる快挙は一気に現実味を帯びるだろう(グラチャンのエンジン抽選が楽しみだ!)。その偉業についてはともかくとしても、これからどこまで吉川が突っ走るのかも注目となる。登番4000番台がSGの過半数を占めるようになったこの時代に、マスターズ世代の吉川が貫録を見せつける。そんな痛快な場面を、これからのSGでもおおいに見せつけてもらいたい。

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 敗者で最も悔しさを爆発させたのは、やはり感情を隠さない男・平本真之だ。しかも、負け方がとにかく悔しい。いったん2番手も、捌かれ捌かれ結果は4着。平本はレース直後はもちろん、モーター返納を終えてもなお、顔をしかめているのだった。

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 2着の白井英治も、厳しい表情であがってきている。5号艇2着、バックは4~5番手を捌いての2着なのだから健闘だと思うが、白井はそれを良しとしない。1着でなければ、白井はレース後、いつもこんな表情だ。外枠だろうが、2等3等で納得などしないのである。

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 桐生順平は、1マークで行き場をなくす不運があって、どう見ても消化不良の表情。その時点で勝負は終わってしまったようなものだったので、激しい2番手3番手争いにも加われなかった。関東で開催されるグラチャンは、この鬱憤を晴らす戦いとなるだろう。

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 茅原悠紀は、西山貴浩に声をかけられて苦笑しつつ、「なかなか2等も獲らせてもらえないんだもん!」とおどけて見せた。2周1マーク、背後から「すごいところ入ってったな!」と背後から西山が声をあげた。茅原が実に狭いところを狙って差していった場面で、西山は呆れたように「今の見ました?」と言っていたのだ。おそらくその場面を茅原に振ったのだろう。それは西山の賛辞にほかならないわけで、茅原も少しは気が晴れただろうか。

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 峰竜太は、とにかくスタートが悔しい。最後の最後に3着に浮上したのはさすがと言うほかないが、それは悔しさを完全に帳消しにはしない。着替えに向かう際、「アアッ!」と一瞬だけ、大きなため息もついている。涙を流した場合は別として、普段よりもずっとカタい顔つきに見えたのは気のせいか。深川先輩が「やっちまったな!」とばかりに苦笑を向けていた。それが、少しは癒しになっただろうか。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)