BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

日本一の差し屋

12R優勝戦
①大豆生田蒼(埼玉)22
②山崎 郡(大阪) 19
③吉川貴仁(三重) 22 差し
④守屋美穂(岡山) 13
⑤野中一平(愛知) 08
⑥大山千広(福岡) 09

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 激しいスリット~1マークの攻防だった。
 まず、待機行動でスタンドを沸かせたのは吉川だ。颯爽と艇を翻しての3カドアタック!
「お、引いた引いた!」
「やりよったわぃ!」
 周辺のオッサンたちが面白おかしそうに叫ぶ。SGならば大歓声になるところだが、そこは一般シリーズ。何人かの叫びが重なる中で12秒針が動きはじめた。もちろん、私の視線も3カドから発進した吉川にロックオン。行き足~伸びがトップ級だけに、どこまで踏み込めるかでレース展開が変わる。
 が、慣れない3カドはさすがに難しく、吉川の奇襲は迫力のないスリットになった。内に目をやるとインの大豆生田もわずかに凹んでいる。その間に挟まれた山崎が、自慢の行き足で名前の通りグングン出て行くように見えた。
「昨日と同じ、郡のジカまくりだ!」
 郡が◎の私は心の中で叫んだ。その思いに連動するように、郡がツケマイ態勢に入る。決まれば一撃圧勝のタイミング。だがしかし、その外から凄まじい2段ロケットが郡に襲い掛かった。

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 4カドの守屋!!
 しっかりスタートを決めていた守屋は、迷うことなく初動から握りっぱなしだったのだ。その一直線の凄まじい引き波を浴びて、郡はあさっての方向へ流れ去った。守屋自身も2段のツケマイだからして外へと膨らむ。ぽっかり空いた内水域に一番差しの吉川、二番差しの野中、三番差しの大山、さらにはインから小回りで残した大豆生田が殺到する。守屋も含めて内外離れた大混戦のバック直線から、ど真ん中を力強く抜け出して行ったのが吉川だった。3カドから二番差しで先頭へ。
 1周2マーク、先手を奪った吉川が今度は全速のスピードターンで他艇を振りきり、それで“個人戦”の勝者が決まった。自慢のパワーを如何なく発揮してのデビュー初優勝だ。

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「日本一の差し屋になります!」
 3年前の4月、やまとチャンプ決定戦の前日に私の前でこう言ったのが吉川貴仁だった。正確には「言わされた」だな。決定戦の4号艇だった吉川に「明日はどんな戦法で行くか」と問うたらば、他の訓練生がボソリ「差し」とつぶやいた。それを契機に、周囲にいた5、6人の訓練生たちも「差し」「差し」「差し」と連動した。吉川本人は照れ笑いを浮かべつつ何も答えない。

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「なんで差し?」
 私が訊くと、ひとりが答えた。
「吉川訓練生は118期でいちばん差しが上手いんです。っていうか、差ししかしないんです」
 吉川以外の全員がドッと笑う。そして、意外な展開にひたすら照れ笑いを浮かべていた吉川が口を開いたのだ。
「こうなったらボク、日本一の差し屋になります!」

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 あれから3年と2カ月、3コースから鮮やかに差して独走態勢に入った吉川を見て、私はしみじみ嬉しい心持ちになった。有言実行と呼ぶにはほど遠いが、自分の持ち味を生かしたデビュー初勝利。これを踏み台にして、是非とも辻栄蔵や坪井康晴などなどを超える日本一の差し巧者になってくれ、貴仁。あ、もちろん随所に握りマイも繰り出してね!(笑)
         ※

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 さて、シリーズの優勝は2マークで決着が付いたが、団体優勝はまだまだ大混戦。道中で各選手がどれだけ「団体戦=このレースのポイント上位チームが優勝」を意識していたか不明だが、あるいは?と思える光景が頻発した。3番手(3着なら白組の勝利が確定)を狙う野中に対して、守屋と大山が挟み込むようにして進路を阻んだり、離れた6番手(5着なら白組Vの可能性大)の山崎が前を行く大山に突っ込んでみたり……団体戦ならばこそという私の妄想を膨らませるシーンが多発して、こちらもまたスリリングだった。そして、このレースの団体戦ポイントは紅組16点vs白組15点の最少得点差で紅組に。6日間に渡って繰り広げられた総合ポイントは
紅組3929白組

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 3度目の大会にして初めて紅組が団体優勝を成し遂げたのだった。「江戸川ほどではないが、番組編成に贔屓があったおかげ」という気もしないではないが、真剣勝負の戦いと言うより「お祭りも込めた大運動会」として紅組の勝利を祝うとしよう。で、前回までと今回の違いを挙げるなら、こんな感じだろうか。
★団体戦のコンセプトが選手たちに浸透し、「チームのために」という連帯意識が水面に反映されるようになった。

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 たとえば3コースの選手がダッシュ勢のアタックを身体を張って受け止めたり、逆に4カドの選手が捨て身の絞めまくりで外のチームメイトに展開を作ったり、競輪っぽい感覚のライン的攻防が激増したと思う。ボートレース=個人競技という観点からすれば賛否両論が生じるイベントかも知れないが、「同県だからやりやらず」的な下世話な舟券推理が好物の私からすれば、なかなかに面白い6日間ではあった。舟券=①アタマのミッションは大失敗だったけど(号泣)。はい、もう①アタマを延々と買い続けるという精神衛生上に良くないことは二度としません! でもって、次回の津での第4回大会に向けて、ブロック団体戦の新たな攻略法を模索するとしよう。次回こそっ!(photos/チャーリー池上、text/畠山)
※最後に今節のブロック戦のデータをアップしておきます。次回の役に立つかどうかは微妙ですけど、ね(笑)。
★紅組が①②③号艇
    1着 2着 3着
 紅組 17回 21回 11回
 白組 8回 4回 14回
インコース25戦8勝

★白組が①②③号艇
    1着 2着 3着
 紅組 4回 8回 12回
 白組 16回 12回 8回
インコース20戦9勝