BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――沈痛、高揚、汗だく!

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 9R、平尾崇典がフライング。つい先月、児島周年でFを切ったばかりで、F2となってしまった。しかもここまでの間、転覆と妨害失格もあって、事故点が高くなってしまった。このフライングでさらに事故点がついて、来期(2020年前期)はB2級が濃厚となってしまった。レース後の平尾は、まさに呆然自失。そして、残念ながら病気で途中帰郷となってしまってもいる。落ち込む平尾を守田俊介が慰める姿もあった。みな他人事ではなく、その痛みを知っているだけに、同情の念も沸くのだろう。昨年から平尾の伸びはビッグレースの素敵なエッセンスだった。折れることなく、一日も早くこの舞台に帰ってきてほしい。

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 10R、白井英治が3着。昨日のドリームが6号艇2着、今日は4号艇2着、5号艇3着と外枠をまずまずの結果で乗り切って、悪くない予選前半である。10Rを笠原亮と一緒に観戦していたのだが、3番手争いをきっちりと捌き勝つ技術に笠原はひたすら唸っていたほどだ。しかし、白井自身はまったく満足していないようで、レース後はただただ渋い顔だ。外枠で連絡み、が白井の心を癒すことはないようなのだ。明日からは内枠が続く。勝てないときには、眉間のシワがさらに深くなりそうだ。

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 白井がさらに顔をしかめたのは、11R後のことだ。師匠の今村豊が1号艇で5着を獲ってしまった。さすがのミスターも、レース後は顔をしかめて、おどけて見せる余裕もないようだったが、その隣で白井も同じように渋い顔になっていたのだった。今村としては、まさに痛恨の一番。苦境に折れるような人ではないが、大きな声が聞かれなかったことが今村の心情をあらわしている。明日は師弟揃って、リベンジの日だ。

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 12Rの松井繁も、ピットに戻ってきたばかりのときは、鎮痛に見えた。まさかの6着3本となった予選前半。好モーターを引いたはずが、結果は最悪に転んでしまっている。エンジン吊りでも、後輩たちはなかなか声をかけにくいところだろう。そんな松井にからかうように絡んでいったのは今村豊だ。この結果の松井に声をかけられるのは、ミスターだけということか。松井は目を細めて今村に相対しはしたが、やはり痛恨の念は伝わってくる様子ではあった。王者の逆襲、あるか!?

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 で、なんともまあ対照的にテンションを上げていたのは11Rの峰竜太だ。今村を2コースまくりで沈めて今節2勝目。前半2着、ドリームは点増しの1着なので、得点率は実に10・00。絶好調である。着替えを終えて公開勝利者インタビューに向かう峰にレンズを向けたら、まずはなぜか顔をしかめる。

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 そしてバッテンポーズ! 何がバッテンなのよ!?

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 と思ったら、アロハー♪ 急にやるから、アロハにピントが合っちゃったよ!

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 そして最後はこの笑顔。ようするに、ゴキゲンである。近況の峰は、実は2コースまくり勝ちが急増中である。もともと2コースは差しが主戦法だったが、自分が渾身の差しを放っても、3コースがドンピシャのツケマイを放てば結果、先頭を走られてしまうケースが少なくなかった。自分ではどうしようもできないだけに、悔しさもつのった。だったら、先にまくってしまえ! 差されてもあとはターンで勝負だ! とジカまくりが増えていったそうだ。「僕、強くなったでしょ!?」と峰。まあ、もとから強かったけれども、このジカまくりのように武器がさらに増えている感はある。明日の4号艇はどうする!?

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 さてさて、今日の午後のピットはなかなか暑かった。風が当たらない日向は、夏のようですらあった。11R発売中まで試運転をしていた毒島誠、片岡雅裕、平本真之は汗びっしょり。これからさらに暑い季節になるわけだが、彼らはどんなに大汗をかこうが仕事の手を緩めることはない。勝負師の執念はものすごいのだ。3人は、陸に上がると会話を交わし合う。というか、毒島の話に片岡と平本が耳を傾けているような雰囲気もあった。

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 毒島と片岡はこれであがったが、平本のボートはまだ係留所にあった。ひとまず水飲み場で水分補給。熱中症が心配になる時期、しっかり水分を摂取してくださいね! それからもういちど、平本は水面へと向かった。

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 平本が切り上げたとき、ピットは閑散としていた。整備室やペラ調整所には選手の姿があったが、装着場には関係者や報道陣しかいなかったのだ。平本のエンジン吊りに出てくる気配もなし。平本は一人エンジン吊りをするしかないのか!?

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 一人だけ平本に気づいたのは、やはりというか何というか、小野生奈なのであった。元気いっぱいに駆けつけて、モーターを架台に一緒に乗せて、平本を制して整備室へと運んでいった。生奈って、本当によく気がつく人、っていうイメージなんですよね(他の選手が気がつかない人ということではない)。試運転を終えた選手がエンジン吊りを始めると、どこからともなく駆けつけていることが多いように思えるのだ。整備もペラも試運転もレースも全力投球! それが小野生奈!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)