BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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多摩川グラチャンTOPICS 3日目

モンスターハンター

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 昨日今日と1号艇=インコースがやたらめったら強い多摩川の静水面。で、①が勝った時の2着はすんなりの②ではなく、なぜか③と④に集中している。
★昨日=①-③4発、①-④4発
★今日=①-③5発、①-④2発
 全18レースのイン逃げ決着中、実に15発が①-③④決着!! たまたま重なった部分もあるだろうが、1マークの展開としては「全速で握った③が差した②をバック直線で圧倒し、二番差しの④と2マーク勝負」というパターンが目立った。つまり、自力で攻めた③とこれを俊敏にマークした④が、小回りターンの②を凌駕したわけだ。無理にこじつけるなら「日本屈指の静水面だけに、スピード化の著しいトップレーサーたちの握ったもん勝ち」と言えなくもないな。明日も3・4号艇の2着ラッシュを警戒しておきたい(←なんて書くと、①-②⑤⑥が跋扈するんだよなぁw)
 さて、そんな「①-③④祭り」の中で、今日の10Rは実になんともコクの深い①-③だった。主な登場人物を紹介しておこう。
10R
①太田和美
②山崎智也
③池田浩二
④峰 竜太

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 4人で賞金王タイトル6冠というゴージャスな番組で、1番人気は①-②でも①-③でもなく①-④。「平成の新怪物君」と「令和のモンスター」(いずれ言われるだろう)の組み合わせだ。今さら書くまでもないが、最近の峰の強さはまさにモンスター化の一途を辿っている。手元の出走表に記された峰の最近3カ月の勝率は、9・03!! でもって3連対率は90・3%!!!! ほぼほぼ記念戦線だけを走り続けて、ほぼほぼ枠なり基本のレーススタイルでの90%超えは驚愕と呼ぶしかない。さらに言うなら、今節の峰のパワーは節イチ候補。①-④の1番人気も頷けるところだ。

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 いざ実戦。スリットラインはほぼ横一線で、前出①-③④祭りのレース展開が濃厚となった。太田が逃げて、智也が差して、池田が握って……思った瞬間、池田が意外な戦法を繰り出した。握りマイではなく、二番差し!! 握るべきマイシロはふんだんにあったから、池田はあえてこの“消極的な戦法”を選択したと思われる。考えられる理由はふたつ。
①2コース智也がジカまくりに出ると予測し、差しに構えたら二番差しになった。
②予選トップを走る峰の差し場を殺した。
 どちらかと言えば①っぽいが、私が支持したいのは断然②だ。あのスリット隊形から池田が握れば、峰は嬉々としてスピーディな二番差しを繰り出しただろう。事実、1マーク手前の早い段階で、峰は差しの初動態勢に入っていた。その早さ速さは例によって尋常ではなく、あるいは逃げる太田まで捕えきったかも知れない。
 だがしかし、池田が先手の二番差しに構えたことによって、峰の狙った航路は完璧に塞がれた。やむなく減速して外へと進路を変更する峰。その間に、池田がガッチリと2番手のポジションを確保していた。
 10年ぶりの多摩川SG連覇を狙う池田にとって、「暫定トップ=目の上のたんこぶ」の峰はもっとも厄介な存在だ。このまま予選トップを驀進されたら、鈴を付ける間もなく最終日のゴールまで駆け抜けるであろう男。今日の池田の超レアな二番差しは、そんな思いも込み込みにした“高等戦術”だった。勝手な妄想ではあるが、こう思った方が今後のV争いもドラマチックでしょ?(笑)

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 嗚呼、それにしても峰竜太の怖さよ。池田の頭脳戦術にハメられた峰は、スロー3艇から置き去りにされる4番手だった。が、そこからの追い上げターンの凄まじいこと! 2マークを回って3番手・智也の後ろに取りつき、出口から伸びて行く迫力は智也のそれを圧倒していた。
「このまま直進したら、2周1マークまでに舳先を突っ込まれてアウト」
 瞬時に判断したであろう智也は早い段階で艇を峰にグイグイ寄せ、絞め込み、ターンマークの直前でぴったり引き波にハメる握りマイを浴びせた。両者のパワー差を考えれば、「盤上この1手」と呼ぶべき立ち回りだったと思う。さすがの智也。このわずか1周の攻防を観戦しながら、私は新たな妄想を脳裏に描いていた。手のつけようのない怪物に、あの手この手の秘術で立ち向かう賞金稼ぎ=モンスターハンターたちの姿を。

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 ちなみに、このレースで4着に敗れた峰は、それでも予選トップの座を守っている。明日は試練の5・6号艇が待ち受けているが、3連率90%の怪物にはさしたる障壁でもないだろう。ついぞ見えない所から飛んでくるモンスターを、明日のハンターたちはどんな戦術で迎え撃つのか。見果てぬ妄想とともに、予選トップ争いを見守るとしよう。(photos/シギー中尾、text/畠山)