BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――諦めず続けられる作業

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 ピットに緊張が走った。10Rの2周1マークだ。先頭争いを演じていたキャビった岡崎恭裕に桐生順平が乗り上げて転覆、両者が戦線離脱となってしまったのだ。濱野谷憲吾が入れ替わって先頭に立ち、レース後の対岸ビジョンに3連単30万超の配当が示される。しかしそれは取り沙汰されることはなく、むしろそれに触れるのが不謹慎であるかのような空気も流れていた。
 桐生は、やや足を引きずりながらではあったが、自力でレスキューから降りて、医務室へと向かっている。しかし桐生、後続の湯川浩司と立て続けに乗り上げられるような格好となった岡崎はうつ伏せに担架に乗せられ、両肘で体を支えるような格好で運ばれた。その後、救急車のサイレンも鳴っており、残念ながら途中帰郷となってしまった。トップクラスのレーサーたちであっても、時折起こってしまうこうした事故。岡崎には一日も早く負傷を癒してまた元気にビッグレースに戻ってきてほしい。

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 幸い体はまったく無事だったが、羽野直也も試運転中に落水している。モーターは水をかぶらず、羽野自身も元気だったので何より。11Rにはしっかりと出走した。どうもこのところ大きいところではリズムの悪い羽野だが、この落水で厄も落とした、と切り替えてほしい。一昨年秋から昨年夏頃までの鮮烈な走りを、そろそろ取り戻してほしいのだ。もちろん本人もそれを願い、必死で自身を奮い立たせているはず。先輩・岡崎の分まで、明日からの奮闘を期待したい。

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 それにしても今日の午後は、試運転をなかなかやめようとしない選手が多かったように思う。これが女子戦だと日常の光景だが、SGではペラ調整などに専念する選手が終盤には多い。それが今日は一変した……は大げさかもしれないが、皮膚感覚としては確実にふだんのSGより多かったと思う。
 たとえば、馬場貴也。10R発売中にボートを陸に上げたので、今日はこれで手じまいかと思われたが、おもむろにギアケースを外すと整備室に直行。手早く調整して再装着すると、ふたたび水面へと降りていった。

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 その際、馬場に声をかけていたのが同期の長田頼宗。長田自身、そのときにはボートは係留所にあって、馬場と別れると係留所への渡り橋に歩を進めている。その先には、今垣光太郎の姿も。光ちゃんが遅くまで試運転をしているのは、それほど見ない光景だと思う。

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 ほかにも書き出したらキリがないが、金子拓矢が試運転をいったん休止したあとに整備室で整備士さんに何事か相談、そしてボートを陸に上げてそのまま整備室に運び込んだ、ということも記しておきたい。もろもろあって、その後の金子を確認できていないのだが、ボートごと持ち込んだということは、整備後に水面に出るつもりである、ということだ。馬場と似たような動きだが、そんなふうになかなか試運転を切り上げようとしない選手が多かったということだ。

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本体整備も寺田祥、大峯豊の山口コンビや山本寛久らが取り組んでおり、木下翔太もギアケース調整、と遅くまで作業をしている選手が多かったという印象の初日である。まあ、それだけ機力に不満がある選手が多いということでもあるのだが……。いずれにしろ、明日は気配を変えてくる選手が出てくる可能性は大きいので、しっかりとチェックしよう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)