BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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とこなめオーシャンカップ優勝戦 私的回顧

最強者の帰還

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12R優勝戦

①瓜生正義(福岡)11
②池田浩二(愛知)11
③毒島 誠(群馬)11
④興津 藍(徳島)15
⑤柳沢 一(愛知)11
⑥中野次郎(東京)13

 瓜生が外5艇の攻撃を跳ねのけて鮮やかに逃げきった。10度目のSG戴冠、おめでとう!
 とこなめのスタンドは人、人、人、驚くほどの観衆がひしめき合っていた。〆切の3分ほど前、いつもの“指定席”である1マーク付近まで行こうと思ったのだが、あまりの人だかりに諦めたほどだ。

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 2マーク寄りのスタンドに座った直後、ファンファーレとともに6艇が一斉に飛び出す。1マーク側の大観衆から轟音のような歓声と拍手が耳に届く。3カドの可能性があった毒島がゆっくりと舳先をスタート側に向けて、穏やかな枠なり3対3。

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 12秒針が回ると、また右から大歓声。ダッシュ3艇が動き、続いて人気を独占しているスロー3艇も眼前を通過した。まったくの横一線。そして、スリットからスッと出て行ったのは瓜生ではなく2コース池田と3コース毒島だ。波乱を予感させる展開。わずかに主導権を得た池田が差しのハンドルを入れ、同時に毒島が全速で瓜生の外をぶん回した。

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 瓜生をより脅かしたのは池田の渾身の差しだったはずだ。が、回った瞬間に大きな水しぶきとともにバランスを崩した。そのスプラッシュはエンジンの悲鳴だったか。日々の調整の中でパワーアップを遂げたワースト級の62号機は、勝利だけを目指した池田の凄まじいスピード旋回に耐えきれなかった。私の目にはそう映った。
 一方、全速の握りマイで挑んだ毒島のモンキーターンも、瓜生を捕えきることはできなかった。手前みそだが、私は前検の足色を見て「今節のV争いは瓜生と毒島が中心」と予言した。6日後の今日も予言そのままに3=1の舟券を買って両者の一騎打ちを楽しみにしていた。

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 が、1マークでそこに割って入ったのが5コースの柳沢だ。今日の柳沢はチルトを0・5に跳ね上げるという勝負手を放った。何かしらの特徴を強化し、自力で攻めるという意思表示。いざ実戦でも4カド興津のわずかな凹みを見逃さず、迷うことなく興津を叩いて全速のまくり差しをぶち込んでいた。先の多摩川グラチャンをコンマ01で頂点まで突き抜けた柳沢は、自信とともにさらにタフな男に進化した。そう思わせるに充分なまくり差しだった。わずかでもスロー勢に紛れがあったら、あっという間に突き抜けて2度目のSGを手中にしていただろう。何をやらかすか分からない怖い勝負師。私の脳裏に、このイメージをしかと焼き付ける必要がある。改めて、そう思った。

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 が、その柳沢の素晴らしい勝負手も、1マークを冷静的確に回った瓜生にはわずかに届かなかった。同じく2マークも軽やかな旋回で先取りした瞬間、瓜生の10度目のSG優勝は約束された。2016年のグランプリを獲ってから、瓜生はフライングの乱発などでリズムを崩した。私は勝手に「第一人者としての自覚(瓜生らしい責任感)が気負いを生んだのではないか」と考えているのだが、今節の自然体でのレースと優勝が瓜生の心に軟らかなゆとりをもたらすことだろう。
 強い男が、より強くなって還ってきた。
 今日の瓜生には、この言葉を贈りたい。

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 さて、驚くほどの大観衆が証明するように、今節の舟券も驚くほどに売れまくった。目標の95億円に対して約118億8000万円!! 昨今の売上アップを踏まえれば目標設定が低すぎた感もあるのだが、それにしてもの23億円オーバー。今、明らかにボートレース界はプチバブルの様相を呈している。もちろん、運営する側としてはまたとない大チャンス。「なぜこれほど売れるか」を分析するのも重要だろうが、それよりも「現在の人気を一時的なバブルで終わらせず、さらに多くの人々にボートレースを魅力を伝える」ことに尽力すべきだろう。

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 私の第一感は「ネット投票の拡張戦略よりも、レース場にもっともっと人々を惹きつける」だ。エンジン音と水しぶき、4~7日間に渡るモーターの劇的な変化、そして肉眼でなければ伝えきれないダイナミックなモンキーターン……それらを目の当たりにして、ビギナーたちはより深くボートレースの世界に傾倒する、と私は確信している。売上の余剰金は、是非とも全国のレース場の施設改善や様々な入場者へのサービスなどに費やしてもらいたい。肉眼で選手の貌(個性)が見えないままのバブルは、必ずや崩壊する日が来ると肝に銘じて。(photos/シギー中尾、text/畠山)