BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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浜名湖ボートレース甲子園TOPICS 4日目

THE勝負駆け①準優ボーダー争い
デッドボールからの逆転劇

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 7R。真紅の優勝旗が津軽海峡を渡る可能性が、一瞬で消滅した。北海道代表・三浦敬太、フライング欠場。2コースからの起こしは他艇よりも遅く、ならば、と握りっぱなしで攻めたのだろう。一方、やや早仕掛けだった両隣の選手はスリット手前でアジャストし、敬太の舳先だけがにょっきりと突き出していた。痛恨のコンマ01……。
 もちろん、何がどうあろうと敬太の自己責任ではあるのだが、同郷の私もちょぴり自責の念に駆られている。今朝、何年かぶりにピットまで足を運んで、敬太に“空気”を入れてしまったのだ。
私「昨日の夜は豊橋で美味~い魚を食わしてもらったわ、ありがとう」
敬太「それは良かった。今節は豊橋なんですね、いい店があるんですか?」
私「あるある、めっちゃ魚が美味い店」
敬太「いいなぁ、じゃあ今日も勝ったら僕ン家に送ってください」
私「逆だろ、あさって450万円稼いで俺ン家に美味いもんをごっそり送ってくれ」
敬太「アハハハ、そっすね、頑張ります!」

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 こんな与太話なので“空気”を入れたというレベルでもないのだが、結果的にこんな最悪の事態になるんなら、とにかくピットに行かなきゃよかったなぁ。みたいな後味の悪さが今もまだ残っている。まあ、過ぎたことを悔やんでも戻るわけもなし。若い敬太には、この大舞台での挫折を明日への肥やしにしてもらうとしよう。今日までよくけっぱったな、敬太!

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 涙あれば笑いあり。今日の浜名湖甲子園のファインプレー賞は、10Rの湯川浩司で決まり! 6号艇で③着あたりが必要だった湯川は、ピットアウトから気合パンパンの前付けで3コースに潜り込んだ。今節の湯川と言えば、初日の10Rが思い浮かぶ。絶好枠の1号艇だったのに、スタート展示直後に浮遊物を巻き込んでエンスト欠場。選手責任外ではあったが、10点の皮算用→0点といきなり苦境に立たされた。
 が、焦らず腐らず2日目から自慢のストレート足で上位着を並べ、その挫折をものともせずに今日の勝負駆けに持ち込んだのだ。スリット隊形は1264/35。横並びの窮屈なスロー3コースから発進した湯川は、内2艇がやや踏み遅れたと見るや、スリットから猛然と襲い掛かった。インコースが同期の田村隆信であっても、もちろん容赦はしない。逆に同期だからこそ嬉々として攻め潰しに行くのが銀河スタイルだ。まくり差しでも十二分に勝てる態勢から、湯川は握りっぱなしのスロットルレバーで田村を叩ききった。圧巻のミッションコンプリート。
 湯川の今節の成績を列挙すると1欠3131。たらればだが、初日の10Rをキッチリ逃げきっていれば113131で断然のトップ当選だったことになる(←予選あるある)。さすがの湿気王子。初日のアレもあって準優は2号艇に甘んじた湯川だが、予選トップ級のパワー&リズムであることを念頭に置くべきだろう。

THE勝負駆け②予選トップ争い
順平だもの

 今日のトップ争いも「順平マジック」と呼ぶべきか。11Rを迎える段階では、暫定1位・茅原悠紀と同2位・中田竜太のどちらかがトップ当選という流れだった。1号艇・茅原vs5号艇・中田の直接対決で、勝ったほうがトップ確定。

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もちろん、とりわけ有利なのは1号艇の茅原で、ここを逃げきるだけでケリがつく。Fの罰則で欠場した鳥取代表・村岡賢人のピンチヒッターが、しっかりセンターに弾き返して終盤までに2点リード。なんとなくだが、そんな感じの筋書きが見え隠れしていた。

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 だがしかし、この11Rの2号艇にはガバイ男が潜んでいた。佐賀のスラッガー峰竜太。今節は空振りも多い峰だが、もちろん当たればでかい。いざ本番、峰の長打力を痛いほど知っている茅原は、おそらく1マークで肩に力が入り過ぎた。3コースから握った須藤博倫をブロックする握りマイではあったが、それにしてもの外角高めのオーバーターン(何がなんだかw)。すかさず峰が鋭角かつスピーディにハンドルを振り抜き、打った瞬間それと分かるホームランをかっ飛ばした。

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 野球はもういいか。とにかく、これが茅原にとっては痛恨の2着になってしまう。ケリを付けきれずに迎えた12Rの1号艇は、暫定2位まで浮上した桐生順平。桐生もまた「勝てばトップ、負ければ茅原」というギリギリの勝負駆けではあったが、こんな状況下に立たされたときの桐生がどんな男か、知らないファンはほぼいないだろう。コンマ21という危険なスタートでも、2コース今垣光太郎の差しが入ったように見えても、それらのピンチを的確に振り払って予選トップのゴールを飄々と駆け抜けていた。

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 いつの間にやら、順平。
 今節の4日間も、そんな言葉が良く似合う。順平の65号機はBB誌8月号の私のイチ推しモーターだからして、実に嬉しい予選トップではある。が、同時にこのトップが「順平だから」という気がしてならない。今節の65号機は期待通りストレート足は節イチ級も、サイドの掛かりや出口の押しあたりの出足系統はまだまだ仕上がりきっていない。順平も道中で何度か大きなキャビテーションを起こしていたし、どこかで大敗があっても不思議じゃない脆さが見え隠れしていた。そんなじゃじゃ馬を241221という着順で乗りこなし、トップまで導いた順平のテクニックは流石と唸るしかない。

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 準優に残った面々には、直近の浜名湖水面を席巻した今垣23号機がいる。本来ならトップだったかも知れない伸び~る湯川26号機がいる。今節のV戦線のみならず、灼熱のダービー勝負駆け(泣いても笑っても残り3戦だ)に燃える太田和美と重成一人もいる。もちろん200m級のホームランをかっ飛ばすあの男もいる。シリーズリーダーになったとは言え、桐生65号機のVまでの道のりはまだまだ険しいとお伝えしておこう。高校野球の福島代表が常にそうであるように。(photos/チャーリー池上、text/畠山)