BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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浜名湖ボートレース甲子園 準決勝ダイジェスト

160キロ級エース、決勝進出!

10R
①峰 竜太(佐賀) 14
②今垣光太郎(石川)14
③井口佳典(三重) 16
④中島孝平(福井) 18
⑤太田和美(奈良) 17
⑥須藤博倫(埼玉) 18

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 佐賀のスラッガー峰竜太が圧倒的人気に応えて逃げきった。が、このレースで際立っていたのは今垣の鬼足だ。スリット同体からグイグイ伸びた今垣は、昨日と同じ2コース差しを選択して不発。峰を捕えきれなかったどころか、全速でまくり差した太田、2番差しの中島にもズボズボと舳先を突っ込まれた。2マークも完全に行き場を失って、かなり離れた4番手に。野球でいうなら、3イニング7失点レベルか。

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 そんな絶望的なポジションから、背番号23番の猛反撃がはじまった。2周ホームは節イチ級のストレート足で差を詰め、2周1マークの快速差しで3番手の中島を撃破。そこから最内をとてつもない直線足でぐんぐん伸びまくり、2艇身先にいた2番手の太田を一気に捕えきった。わずか1周、打者一巡の猛攻で8-7の大逆転みたいな!!

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 驚くのはまだ早い。2番手に浮上した光ちゃんは、今度は5艇身ほど先を行く峰に猛チャージ。4艇身、3艇身、2艇身とターンマークごとに差を詰め、最終ターンマークはあわやサヨナラ逆転ホームランか??と思わせるほど峰を追い詰めた。
「今垣さんの伸びは凄いっすね。スリットから出られてもうダメかと諦めかけました。間違いなく節イチですねぇ」
 スピードで他の追随を許さない佐賀のスラッガーが、呆れ顔で褒め讃えた背番号23。5号艇の明日も160キロ級のストレートが炸裂することだろう。それが何コースからの攻めになるか、は他の選手の思惑次第ではある。

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 勝った峰58号機のパワー評価は、レースを見ての通り。インから逃げきるだけの出足はあるが、上には上がいて、それに比べるとかなり見劣る。全体にこじんまりとまとまった中堅上位で、艇界を席巻するスラッガーではあっても3コースのスリット同体からホームランを打ちきるのは難しいと思う。

王国のプライド、未開地の夢

11R 並び順
①茅原悠紀(岡山&ほぼ鳥取)23
②湯川浩司(大阪) 19
③中田竜太(福島) 07
④重成一人(香川) 13
⑥守田俊介(京都) 11
⑤渡辺浩司(大分) 10

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 人気を背負った内2艇が、スタートで後手を踏んだ。このメンバーでは図抜けて伸びる湯川、その足をもっとも警戒している茅原、ともにスリット全速を意識しすぎたか。
 勢い、コンマゼロ台まで踏み込んだ3コース中田が湯川を絞めはじめる。そのまま茅原まで叩ききれそうなポジションだったが、中田の十八番は3コースまくり差し。湯川を叩いてから茅原がまくり警戒の握りマイを放つまでじっくりと力を溜め、冷静沈着正確無比な差しハンドルで他艇を置き去りにした。東北代表らしい粘っこい機動力を生かした謙虚な勝利、と言うべきか(笑)。10Rに続くW竜太の勝利。真紅の大優勝旗には龍の絵が描かれており、第1回の決勝戦に相応しい勝ち上がりでもあるな。

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 今日の中田の最大の要因は、もちろんスタート勝ち。スリット同体ならば湯川を叩ききるのは至難の業で、同じ十八番のまくり差しでもまったく違うタイミングを強いられただろう。4日目11R(中田◎で6着大敗)のちょっと不甲斐ない足色見て、今日の私は中田のパワー評価を割り引いていた。舟券的にはそれが私の敗着となったわけだが、中田がスリット同体から真紅の優勝旗まで突き抜けるか、はまだ半信半疑ではある。

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 2着争いは、中田のまくり差し選択で最悪の事態(まくられ大敗)を免れた茅原がややリード。そこに伸びる湯川と何気に出足強力な守田が加わり、2周ホームは予断を許さぬ三つ巴の鍔迫り合いに。勝負の2周1マーク、トータルパワーでやや上回る茅原が大外から若いターンスピードも連動させて、追いすがる先輩2旗に引導を渡した。

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4日目に続いての1号艇2着。前走では予選トップの座を失い、今日は決勝戦の好枠を逸した茅原ではあるが、パワー的には決勝戦でも十二分に通用するレベル。レース後には「チルト2・5に跳ねるかも」などという談話もあるらしく、明日はチルト角も含めたストレート足に重きを置いてチェックするとしよう。長く「王国」に君臨した岡山のプライドを継ぐ者として、さらにボートレース未開の鳥取に光を注ぐ使徒として、今節のこの男は1ミリたりとも侮るなかれ!

720万の瞳

12R
①桐生順平(福島)22
②徳増秀樹(静岡)13
③山崎智也(群馬)20
④田村隆信(徳島)18
⑤片岡雅裕(高知)16
⑥山田哲也(千葉)17

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 断然の優勝候補が、準決勝の初回にまさかのノーアウト満塁のピンチ。そんな危険なスリット~1マークだった。スタートは11Rの茅原同様、もっとも遅いコンマ22。4日目12Rのイン戦もコンマ21だったから、早い仕掛けを我慢している可能性も考えられる(レース形態としては、あくまでGⅡなのだ)。

 それはともかく、順平の22に対してしっかりコンマ13まで踏み込んだ徳増が、「まくらんかな!」の勢いでじわじわと内に寄せはじめた。桐生65号機も徳増24号機もストレート足は一級品。特に、桐生の伸びは今垣とともに節イチ級で、今日も最内から力強い伸び返しを見せた。徳増がまくりきるとしたら、その手前で絞め込むしかなかっただろう。これが決勝戦なら、十分にありえた勝負手だ。が、桐生の伸び返しを見た徳増は、大競りを回避すべく臨機応変な差しに構えた。

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 桐生にとっては九死に一生のスリット~1マークだったが、徳増が差しに回れば自慢の機動力が生かされる。まくり警戒の握りマイをすぐに緩め、例によってあまりサイドを掛けずに出口からスムースに押して行く「謎のずんぺいターン」で他を寄せ付けず、ノーアウト満塁のピンチを切り抜けた。今日の桐生65号機は自慢のストレート足だけでなく、課題の出足系統も良化したと見ているのだが、あの絶品ターンだけで判断するのは危険ではあるな。とりあえず、3連続のイン戦となるであろう順平の最大の“弱点”はパワーよりスタートか。「2度へぐったから、明日の決勝こそ10前後まで行く」などと安易に考えるのは危険だとお伝えしておこう。

 2着争いは、主導権を握りながら差しあぐねた徳増に、田村、智也、山田らが一斉に襲い掛かり、さらには途中から片岡までが妖しいパワーで食い込んで壮絶な乱打戦となった。誰にでも決勝進出が可能な競り合いに見えたが、それでも常に戦況をわずかに有利に運んでいたのは徳増だった。その僅差のリードは足の差かも知れないし、走り慣れた水面の利かも知れないし、「全静岡県民の期待を一身に背負っている」(3日目・談)という気合の差だったかも知れない。

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 明日の徳増は6号艇。最近のビッグレースの指定席なのだが、明日は「動いてはみたものの、なんとなく中途半端な5、6コース」というこれまでの待機行動パターンとはまるで違うものになるだろう。静岡360万人の夢を背負った男の、濃すぎるほどの勝負手に期待したい。(photos/チャーリー池上、text/畠山)