BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――波乱の準優……

9R 地元勢、無念

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 地元3人が全員集結した9R。残念ながら、誰も優出を果たせなかった。
 桑原悠はチルトを0・5度に跳ね、一発を狙ったが3着まで。2マークでは2番手を走る桐生順平に対して先マイを仕掛けたが、差し返されて2番手浮上はならなかった。あと一歩だっただけに、悔しさもつのる。レース後はカタい顔つきになっていた。

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 中村亮太は6着。前付け策も脳裏にはあり、実際にスタート展示では動きを見せていたが、内の牽制があって4カド選択。亮太曰く、「目が合ってしまって、入れなかった」。内の選手もしっかり警戒していたのだ。その消化不良もあってか、ピット帰還時は険しい顔つきになっていたが、着替えを終えると「成長できたと思います」と気持ちを切り替えられたようだ。亮太はこれがSG初準優だった。たしかにひとつ経験を積んだと言える。

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 原田幸哉は「前本さんに完敗、と言うしかない」と振り返る。スリットではインに対してのぞいており、手応えのあるスタートだった。1マークの差しハンドルも的確に入れられたという。しかし、前本はしっかりと落として回って、差し場を消した。その戦略に、幸哉は封じられてしまった格好だ。やるべきことはやった、という手応えはある。だが「地元で優出を逃したのが悔しくて仕方ない」とも言う。元愛知支部で長く蒲郡と常滑をホームとして戦った幸哉だが、長崎支部に移籍した今、大村こそがホームだという確固とした思いがある。その大将格として、ベスト6に残ることができなかった。大村のことを思えば思うほど、胸の中に悔しさが広がっていく。

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 そう、勝った前本泰和は、さすがの手練れと言うしかない。スリットでのぞかれても慌てず騒がず、1マークでは自分のターンをしてみせた。幸哉の差し、桐生順平のまくり差しも許さない的確な逃げ。やはり実力者である。レース後、淡々としている前本のまわりで山口剛や重成一人、田村隆信がおかしそうに笑っていた。会話の内容は聞こえなかったが、勝った本人よりなんだか楽しそうだった。前本の目もとも自然と緩む。ともあれ、会心の勝利だ。

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 2着は桐生順平。中田竜太がニコニコで出迎えている。ただ、やはり攻撃が封じられたことは悔しそうで、原田と1マークの走りを振り返り合って、してやられたという苦笑いを浮かべている。優勝戦は6号艇。すんなり枠なりだろうか? 外枠から何を見せてくれるか、楽しみだ。

10R 連覇へ

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 毒島誠が逃げ切り。結果的に、連覇に王手をかける逃げ切りとなった。もちろんレース後の毒島にはそんな認識はなく、しっかり優出を決めたことの安堵感が強くにじみ出ていた。あと、毒島1周1マークでハンドルを切り直しているが、それでも逃げ切れたことの安堵もあったか。どうやら初動を入れるのがほんの少し早かった模様。青山登さんに言わせれば「コンマ0何秒だけだよ、早いといっても」。その間に初動の早さを自覚し、素早くハンドルを切り直してしっかりターンマークを回る。ものすごい世界だ。

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 2着は石野貴之だ。ピットに戻って、西山貴浩の耳元で何かを囁くと、二人の間で爆笑が起こった。その後ろでは、松井繁もニコニコしていた。話の内容がわからないのが残念! 2着で悔しくないはずはないが、まずは優出を決めたことで気分は上々の様子であった。

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 疲労感をたっぷり滲ませていたのは中野次郎だ。エンジン吊りを終えて控室に戻る足取りがとにかく重い。他の5人が控室への扉をくぐってもまだ、装着場の真ん中あたりに次郎はいた。濱野谷憲吾、齊藤仁ら東京勢がそんな次郎に歩調を合わせる。濱野谷がレースを振り返りながら次郎に慰めの言葉をかけるが、次郎は落胆した表情のままうなずくのみ。心から優出を、そして優勝を望んでいたのだろう。控室の扉をくぐる前、検査員さんの控室のモニターがリプレイを映し出した。次郎は立ち止まり、赤い勝負服を着たまま見入った。落胆の表情は消えない。いや、むしろより色濃くなったかも。この雪辱、どこかで晴らすしかない。

11R まさかの……

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 6艇がスリットを通過したとき、例によってアリーナで観戦していた選手から悲鳴があがった。だが、今日のそれはすぐに消えた。そして、息苦しさが漂った。これはSGの準優なのだ。ここでの勇み足のペナルティの重さは誰もが知っている。そして、悲鳴の対象のなかに圧倒的人気の1号艇が含まれていたことも、そこで見ていた者たちを息苦しくさせたか。1マークを回って、先頭に峰竜太、2番手に篠崎仁志、3番手に吉田拡郎。しかし誰もが静かにその隊形を見つめるのみ。このなかの誰かが、あるいはこの全員が、フライングしている可能性が高いのだ。拍手や歓声など、起こりようがなかった。

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 その3人がフライングだった。篠崎は平静を装おうとはしているものの、表情に陰鬱なものが張り付く。吉田も同様だった。最も沈痛だったのは、やはり峰だ。眉間にしわを寄せ、泣き出しそうな表情で苦悶をあらわにしていた。1号艇で切ってしまった責任感、ダービーをはじめ向こう4つのSGを棒に振ったこと(グランプリは出場可能)、などなどさまざまな思いが渦巻いたことだろう。

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 着替えを終えた後も、峰からは生気が感じられなかった。篠崎も同様だ。モーターを格納して控室に戻っていく峰と篠崎。肩が落ちているように見えたのも仕方ないだろう。峰も篠崎も吉田も、この逆境を乗り越えてほしいと祈るし、また必ず乗り越えるのは間違いないとも思っている。

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 首位に浮上したのは菊地孝平。しかし、ピットに戻った菊地に笑顔はなく、なんとも複雑な表情を見せていた。喜ぶ気になれないのは当然。むしろ喜んではいけないかのような心持になっていたのではないか。

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 それは、2着で優出となった重成一人にしても同じことだろう。ピットに戻った重成はただただ淡々としているのみだった。もちろん明日は、転がり込んできたチャンスをモノにするべく、全力で優勝を取りにいくだろう。しかし今日は、複雑な思いを抱えてしまうのは仕方ないと思う。

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 とはいえ、勝ちは勝ち、でもある。神妙な様子の菊地に対して、太田和美がほぐすように声をかけた。「キク、さすがやな」。そう、生き残った艇もコンマ01~03というスタート合戦の中、菊地はしっかり残した。菊地のスタートが早いのは有名だが、同時にもう何年もフライングを切っていないのだ。踏み込みながら行き過ぎない。凄すぎるスタート力なのである。太田の言葉でふっと肩の力が抜けたのか、「みんな切ったと思った」と呟いて周囲を笑顔にさせた。そして菊地の頬も徐々に緩んでいった。やっぱり勝ちは勝ち! この複数艇Fで明日の他選手がスタート慎重になったりすれば、やはりこの人のスタート力が脅威になる!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)