BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――モニター観戦

f:id:boatrace-g-report:20190920115930j:plain

 装着場にはモニターが設置してあって、毎レース何人かの選手がここでレースを観戦しているが、今日の1Rと2Rは昨日までよりその人数が増えていたような気がする。1R、真っ先にモニターの前に陣取ると、背中に選手の気配が次々と漂ってくる。1マーク、3カドの藤山翔大が攻めて、丸野一樹が5コースからまくり差しを放つ。丸野の先には艇団があって、そこが開くかどうか……。
「ああ、邪魔邪魔!」
「ああ!」

f:id:boatrace-g-report:20190920120033j:plain

 丸野が艇団をこじ開けるように突き抜けてくる。ただし、逃げた渡邉優美までは届かないのであった。
「丸野さん、うまいよなあ」
「おっ、丸ちゃん、まくり差した!?」
 作業をしていた選手が、遅れてこの輪に加わったようだ。
「いや~、うまいよなあ」
「まくり差し、本当にうまい」
「GⅠ覇者やからな!」
「3コース、5コース、すごいですよね~」
 2番手だが、ベタ褒めの仲間たち! レースが終わってこっそり確認すると、上條暢嵩、松山将吾、井上一輝であった。遅れて加わったのが期が近く公私ともに仲のいい上條、邪魔邪魔と声をあげたのが滋賀支部の後輩である松山であろう。

f:id:boatrace-g-report:20190920120106j:plain

 というわけで、ピットに戻った丸野に、仲間はみな笑顔で声をかけていたわけであるが、丸野自身はどうやら2着では納得できなかった様子。着替えを終えてひとりピットに戻ると、装着場モニターに映し出されたリプレイをじっと見つめ、何度か首をひねっていたのであった。見事な2着だとは思うが、やはりレーサーはとにかく勝ちたい人種である。

f:id:boatrace-g-report:20190920120135j:plain

 2Rは、1号艇の上條暢嵩が6コース選択で、今井美亜がイン戦。1マークは先に回ったが、川原祐明が差しをねじ込んできた。装着場モニター前では、松山や木村仁紀といった滋賀勢が、福井支部から単身参戦の今井にエールを送る。その今井は、2マークで思い切った外マイ! しかし川原に張られる格好となり、スタンド側の消波装置にぶつかるのではと危ぶまれるほど流れてしまった。
「あ~~~~っ!」
 危ないシーンに、そこで見ていた選手たちが一様に声をあげた。幸い、今井は激突を回避。ホッと胸を撫で下ろしたとき、大競りの間隙を突いて関野文が浮上してきた。

f:id:boatrace-g-report:20190920120306j:plain

「こうなったらブンちゃん!」
 声をあげたのは中村晃朋だ。同支部の後輩である川原を応援していたに違いないが、一気に逆転したからには関野のGⅠ初勝利を応援だ! 同じ女子選手である渡邉優美や大山千広のテンションも上がったように見受けられた。
 しかし、2周1マークで川原が鋭く再逆転。一瞬、「おっ」という声があがったものの、あとはみな黙ってレースを見守るのみ。関野が惜しかったという思い、川原が見事だったという思い、だけど2マークのアレは不良航法かも……という思いなどなど、複雑な感覚が交錯したのは当然かもしれない。

f:id:boatrace-g-report:20190920120446j:plain

 で、転がり込んできたようなイン戦を活かせなかった今井は、レース後さすがに悔しさをあらわにしていた。当初はエンジン吊りに参加した滋賀勢や渡邉優美も声をかけられないでいた。やがて、木村が慰めというか労いというか、ともかく声をかけると悔しそうな笑みが浮かぶ。予選突破に向けては厳しいところに追い込まれてしまっただけに、落胆も大きかろう。今節は選手班長としても奮闘する今井。地元は彼女一人なのだから、当然その大役が回ってくる。その役割を「楽しい。みんな優しいから」と言っていたが、それだけにしっかり結果を残したい思いも強いはずだ。明日の勝負駆け、頑張れ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)