BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――熾烈な勝負駆け!

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 熾烈を極めたSG勝負駆け。予選トップ争いについては速報が随時アップされていたが、チャレンジカップにおいて予選トップは、ほかのSGの予選トップよりずっと意味が大きい。もちろん予選トップ→準優逃げが圧倒的に優勝に近いというのはどのSGでも同じだが、チャレンジカップはなにしろ14年連続で優勝戦1号艇が優勝しているのだ。予選トップは単なる王手ではなく、限りなく詰みに近い王手なのである。
 既報通り、予選トップは石野貴之。6号艇できっちり2着で自力当確するあたり、完全に流れは石野に向いていたということだろう。石野は2着ならトップ当確と把握していたようで、いったん先頭を走りながらも抜かれた悔しさはありつつも、納得した表情でピットに戻ってきた。木下翔太に祝福されて、石野はグラッツェ! 笑顔が弾けた。これでベスト6入りもぐぐっと近づいた。明日からは凛々しく戦うことになるだろうが、今夜は充実感のなかで過ごすことができるだろう。

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 石野を逆転したのは平本真之。これで準優1号艇を掴んだわけだが、やはり逃げ切れなかったことが引っかかっているのか(決まり手は抜き)、やや渋い顔つきのレース後であった。ただ、今日の反省を活かして明日の1号艇に入れるわけで、これも前向きにとらえることができるだろう。逆転グランプリ行きのために、明日は何が何でも逃げ切りたい。

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 もうひとりの準優1号艇は、繰上りで桐生にやってきた濱野谷憲吾だ! 11Rのレース前には「(繰上りだから)謙虚にいきます」と報道陣を笑わせていた濱野谷だったのに、ドヤ顔のごとき強烈なまくり差しで瓜生正義を撃破。予選では1号艇がなかったのだが、自力でもぎ取ってしまった。お見事! 出迎えた石渡鉄兵をはじめとする関東勢はみなおかしそうに笑っており、控室とかでも謙虚発言をして笑わせていたのだろうか。どこが謙虚なの? そんな笑い方なのであった。濱野谷も照れくさそうに笑っていた。スーパー下剋上、あるかも!

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 10Rでは篠崎元志がピット離れで遅れ、5着大敗。この時点でボーダーを下回る5・20の得点率となり、暫定19位となっていた。さすがにやるせない表情になっていた元志。レース後は浮かない顔でペラ調整所に向かい、ゲージを当ててペラと向き合っていた。その原因を確かめようとしたのだろう。
 しかし、天は元志を見捨てなかった。11Rで重成一人が4着条件のところを5着。元志が18位に滑り込んだのだ。エンジン吊りに駆け付けた元志に、背後から原田幸哉が近付く。そして襟首をつかんで手荒い祝福。元志はさわやかに笑っていた。

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 その原田は、10Rで1着勝負(結果的には2着でもOKだった)に失敗して予選落ち。グランプリ行きについては自身の襟首が寒い状況となってしまった。しかも、1着の可能性は十分にあるバックの隊形だっただけに、悔しさを隠そうとはしなかった。「悔しいーーーーーーーーっ! 1等もあったのにーーーー!」。うん、気持ちはよくわかる。かなり厳しい状況ではあるが、まだ逃げ込みの可能性は残されている。明日からは1円でも多く稼ぐべく、気合を入れなければならないだろう。準優勝負駆けは終わったが、グランプリ勝負駆けはまだ終わっていないぞ!

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 準優進出組の動きについては、まず稲田浩二が本体整備をしていた。評判機のはずの11号機を引きながら、予選は未勝利。思うほど動いてくれない相棒に、準優を前についに喝を入れた格好だ。部品交換については、直前情報をご確認ください。ともかくこれは、一発勝負の整備と言える。

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 徳増秀樹は11R発売中まで試運転。今日は一日中、冷たい雨が降りしきった桐生の水面に、徳増は濡れそぼるのもかまわずに出まくっていたのだ。初日連勝の好発進だったのに、その後は舟券にも絡めないジリ貧状態。このまま準優に行くわけにはいかなかっただろう。レース後はボートの雨粒や水滴を丁寧に拭き取っていた徳増。初日の感触に戻すことはできただろうか。

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 試運転と言えば、12R発売中にも続けていたのが女子組の落合直子だ。落合は2日目以降ゴンロクを並べてしまっており、優勝戦進出は絶望的。そもそも、優勝したとしてもクイーンズクライマックス出場は厳しかった。しかし、そうした状況に関係なく、落合は雨の中で頑張っていたのである。明日は1R1号艇。今日の成果がなんとか出ないものかと声援を送りたくなるというものだ。
 それにしても、優勝してもクイーンズクライマックスに届かない選手が相当な人数いる、という状況はどうなのだろう。毎年、そうした選手が存在しているのである。チャレンジカップというコンセプト上、優勝者には優先出場権を与えてもいいと思うのだが、どうだろう(12位以内に入ったら、賞金ランク通り。12位に届かなかったら、選出12位扱い)。まあ、だったら12位の選手の立場はどうなるんだ、ということにもなるので、難しい問題なんだけど。

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 改めてそう考えたのは、9Rを向井美鈴が逃げ切ったシーンを見たときのこと。向井も優勝したとしてもクイクラ出場はかなわない一人だが、クイクラの開催場は徳山。向井の地元なのである。今年1年、そこを目標にして戦っただろうし、今節も健闘している。もし優勝者に1枠与えるというルールだったら、向井の気合はさらに高まり、水面をおおいに盛り上げるだろう(佐々木裕美も同様だ)。優勝でも届かないだけしか稼げなかったんだから仕方ない、と言われたらそれまでだが、逃げ切って力強い表情を見せる向井の様子に、なんとか出してあげられないのかなあと実現するはずのない夢想をした次第である。
 最後に、4Rで丸野一樹が差し切り1着! 水神祭おめでとう! 仕事の都合でまたしても駆け付けられなかったので、中尾カメラマンの写真でどうぞ。

 

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 10R後に話したら、「吉川昭男さんに『平和島までやらんでいいぞ』って言われてきたんですよ~」と笑っていた。平和島とは来年のクラシック。丸野も吉川もすでに出場権を獲得しており、吉川は「俺が投げ込んでやる~」と冗談めかしていたのだとか。もちろん丸野は、今節やる気マンマンだったわけですが(笑)。まあ、水神祭は初1着だけじゃないですからね。平和島では別の、もっと大きい水神祭で昭男さんに投げ込んでもらいましょうかね(笑)。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)