BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――凛々しい!

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 10R発売中のスタート特訓を終え、毒島誠はボートを陸に上げている。さらにそのまま整備室へボートを運び込んだ。このタイミングで! 毒島はコメントで、モーターについてはやってもキャブレターくらい、と言っていたが、そのキャブレターを外していた。調整のやり直しだろう。それを終えて、毒島はさらにプロペラ調整室へ。今日もやはり“ギリペラ”で、11Rの締切り5分前頃に展示の準備が整った。
 そこまでやっても、機力は劣勢を脱することができなかったようだ。スタート展示の時点で、両サイド(4コースと6コース)にずいぶんとやられるのを自覚したという。それでも1マークは渾身のターンを見せたが、相棒がそれに応え切ってはくれなかった。毒島曰く「みんな強い。脱帽です」。さすがに、一瞬だけではあったが、眉間にしわが寄った。
 今節は選手班長の大役をこなし、毎日大きな整備を続け、優勝戦まで駒を進め、毒島は日々本当に奮闘した。大変だったと思う。それでも明るさを失わず、敗戦後も腐らずに前を向く。お疲れ様でした、の言葉では足りないほど、頑張った毒島である。ともかく、地元SGお疲れ様。住之江でまた、とことん頑張る毒島に会えるのを楽しみにしよう。

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 井口佳典は無念の2着。スタートで明らかに放ってしまっており、悔いが残ったはずである。レース後はまさしく憤怒の表情であり、それは自分に向けられたもののはず。闘志が結果に結び付かなかったことは残念だが、しかしここ一番の井口らしい戦いぶりは見せてもらったと思う。

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 平本真之は完走でグランプリ当確だが、レース後はただただ顔をゆがめていた。悔しさを隠さないタイプの平本だから、優勝を逃したことしか頭になかったのは明らか。完走でいいんだ、などとは考えない(少しは頭をよぎるかもしれないが)のがボートレーサーの本能である。

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 濱野谷憲吾はとにかく石野に脱帽した模様。なにしろ、もっとも近くで優勝者の逃走を目の当たりにしたのだから、悔しさをあらわにするというよりはため息を漏らすしかないだろう。上瀧和則選手会長に「ケンちゃん、ご苦労様」とねぎらわれた濱野谷は「石野、めちゃくちゃ出てる」と苦笑い。素直な気持ちの発露だろう。

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 レース前は落ち着いて走ると言っていた田村隆信だが、レース後の表情はさすがにカタい。6号艇だろうと6コースだろうと、当然、勝利を狙っていたのだ。10R発売中、田村に声をかけられた。「田村と井口がSG優勝戦で走るのは初めて」。記憶を辿っても、たしかに記憶にない。実際ふたりとも記憶がないようで、実は以前に対戦していたならごめんなさいだが、銀河系軍団を牽引してきた二人がSG優勝戦で初対戦という意外さを驚き合ったのであった。頂点を争うレースで戦ったのは、本栖での卒業記念優勝戦以来! あのときは井口とワンツーを決めていて、田村は6コースから優勝したのだった。「おっ、ということは今日もありますね!」と目を輝かせていた田村。やっぱり優勝を本気で狙っていたのだ。

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 優勝は石野貴之だ! いやはや強かった。こうしたときの石野はもう、ただただ凛々しくて、レース直前になればなるほど目つきが恐ろしいほどになっていく。今日ももちろんそんな雰囲気で、ピットに向かう前、井口アタマのマークシートをしこしこ塗った身としては、それが紙くずになるのを覚悟するしかなかった。
 見事に逃げ切って帰還したピットでは、大阪支部勢が拍手で石野を称えていた。それに対して石野はグラッツェ! 大阪勢全員に笑顔があふれた。

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 実は石野は、水曜日前検のBBCトーナメントの出場権がなかったのだが、この優勝で優先出場権を手にした。でも……めちゃくちゃキツい日程になっちゃいましたね(笑)。しかし石野はその戦いも弾みにして、地元グランプリに向かう。優勝できたこと、トライアル2ndからグランプリを戦えることに満足そうな笑みを浮かべて、石野はウィニングランへと向かった。その姿は、やっぱりとことん凛々しかった!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)