BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

トーナメントのピットから 9~12R

<9R>

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 結果的に、女子で唯一の準々決勝勝ち上がりとなったのが中谷朋子。レース後は淡々としていたが、着替えを終えたあとに次々と女子選手に声をかけられて、穏やかな微笑みが浮かんだ。出場メンバー発表時は予備1位だったが、繰り上がって平和島に来たからには、そのことはもう関係ない。3着なので明日は外枠になるわけだが、もう一丁の勝ち上がりを目指したい。
 そうそう、12R発売中、ペラ調整室にいたのが全員女子選手、という時間帯があった。最後の最後までプロペラ調整を続けたのは、勝ち上がれなかった女子選手たちだったのだ。優勝への道が閉ざされようが、明日のレースのために全力を尽くす。ぜひとも一矢報いていただきたい!

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 勝ち上がれずに悔しさをむき出しにしていたのは平本真之だ。この人はいつでも心中を素直に表情やアクションに出すタイプで、この敗戦はいわば予選落ちなのだから、悔しがってみせるのは平本らしさでもある。10Rのエンジン吊りにはやはり敗退した永井彪也と並んであらわれ、お互いをいたわりあっていた。

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 勝った柳沢一は淡々としていました。まあ、これも彼らしさ、ではある。トーナメントでもSG優勝戦でも、勝って粛々とあがってくるのだ。

<10R>

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 岡崎恭裕が「やっちまったー」というような苦笑を浮かべていた。クールに見えて勝負師である彼のこと、ここをどう勝ち上がるかの算段はつけていたはずだ。しかし、それが不発に終わり、つまりは勝ち上がりの権利を失って、こぼれてくるのは笑みばかりだった。まあ、控室などで人知れず表情をゆがめている可能性はある。

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 3着で勝ち上がった原田幸哉には、松井繁が声をかけ、レースを振り返り合っていた。スリット写真を見ながら、原田は苦笑、松井は笑顔で語り合う。歴戦の強者たちでも、この形式の戦いは経験は少ない。松井も3着で勝ち上がっており、明日はともに外枠に回るわけだが、どんな戦略で切り抜けるのか。
 ところで、なにしろ初物大会なので、選手たちも勝ち上がりルールを完全に把握はしていなかったりする。7Rを走った田村隆信にはレース前、「何Rの何着が、明日のどのレースに入るとか決まってるの?」と尋ねられた。お正月のバトルトーナメントは、そういう形式ですね。明日の準々決勝は、1回戦1着組が1~2号艇、2着組が3~4号艇、3着組が5~6号艇。選考順位順に各組の内枠から入っていく。

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 ということは、準々決勝は4個レースなので、今日の9R以降の1号艇は勝てば準々決勝も1号艇。逃げ切った瓜生正義も、当然ながら準々決勝1号艇である。それを瓜生に指摘したのは太田和美。そして瓜生は「そうなんですか?」。瓜生も完全には把握してませんでしたか(笑)。一発勝負のトーナメント、実は1回戦1号艇は逃げてしまえばかなり有利なのである。

<11R>

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 勝った吉川元浩、2着の井口佳典、3着の西村拓也はいずれも淡々とピットに帰ってきて、特に盛り上がりみたいなものはなかった。ようするに枠番通りの勝ち上がり。順当な結果に、普通に納得していたって感じなのだろうか。もっとも、吉川はSG優勝などでは笑顔を見せるものの、それ以外では勝って感情をあらわにするタイプではないが。

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 敗退組も外枠での敗戦だからなのか、わりと冷静に帰ってきており、あえて言うなら、安河内将の落胆したような表情が気になったくらいか。安河内は現在は故郷である佐賀支部の一員だが、デビュー時は東京支部だった。初勝利も平和島。ここは安河内を育ててくれたレース場と言える。それだけに、ビッグレースで帰ってきた平和島で活躍したかったはずである。落胆の理由がそれ、というのはやや深読みだが、安河内のレース後を見て、そんなことを思ったのだった。

<12R>

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 選考1位の毒島誠が快勝! ただ、毒島は公開勝利者インタビューに呼ばれて、エンジン吊りを仲間に託して着替えに走り去っている。これでもちろん明日は1号艇。明日も逃げれば、準決勝も1号艇。選考順位トップというのは、この大会ではそれだけ有利なのだ。まあ、優勝戦の枠番は抽選になってしまうけれども。

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 馬場貴也は5着。かなり憮然とした表情に見えた。スリットではのぞいた隊形だっただけに、思うところはいろいろあっただろう。判断ミスがあったとするなら、それがいきなりの予選落ちを招いてしまったのだから、憤慨して不思議はない。

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 磯部誠は、待機室へ向かう際、たまたま途上にいたこちらに「クロちゃん、行ってきます」と声をかけてきた。その口調がなんとも力強く、気合と勢いを感じたもの。3着とはいえ、見事に勝ち上がったのも、そのときなんとなく予感できたことだった(舟券買っとけばよかったと思った)。レース後もひとまず安堵した様子で、2着で勝ち上がった太田和美に声をかけられて笑みも浮かんだ。個人的に、一発勝負に強いタイプのように思えるのだが、果たして。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)