BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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決勝戦 私的回顧

下剋上のワンツーパンチ!!

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12R決勝戦
①田村隆信(徳島)12 選考22位
②毒島 誠(群馬)16 選考1位
③柳沢 一(愛知)11 選考4位
④瓜生正義(福岡)11 選考3位
⑤長田頼宗(東京)13 選考42位
⑥吉川元浩(兵庫)18 選考2位

 昨日、あみだ式の枠番抽選で1号艇を引き当てた田村が、その強運を1100万円とチャンピオンベルトに換えてみせた。インからしっかり踏み込んでの仁王立ち。アウトコースから長田と吉川が鋭く切り込んだが、影さえ踏ませずバック直線を突き抜けた。

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 昨日の抽選で最後に残った枠番が1号艇だったのは、確かに「運」でしかない。が、4日間の田村の走りを振り返れば、この優勝は「運」とは無縁の産物だ。上記の結果欄を見ればわかるように、この決勝戦は選考1位~4位の選手がすべて勝ち上がった。今年のSGを制覇した4人(もうひとりの石野貴之は欠場)。
「この4人、やっぱ強い」
 という見解は間違いではないが、今回の新システムでもっとも大きかったのは「枠番の利」だった。選考1位の毒島は、3日目まで逃げきるたびに1号艇が約束されていて、事実そうなった。吉川、瓜生、柳沢も、昨日までのトライアル3戦はすべて1、2号艇だった。この新しいプレミアムGIは、他の記念よりも圧倒的に選考順位の良いレーサーが有利なのだ。で、他の記念とは裏腹にファイナルだけは予選の成績が白紙になるわけだが、選考上位のレーサーにとって「もっとも優出しやすい記念レース」であることは間違いないだろう。

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 一方、だからこそ選考順位が下位の選手は苦戦を強いられる。初日は抽選で3~6号艇のどこかしらに配分。この過酷なサバイバル戦を勝ち抜いても、次の好枠もシード選手たちが仁王立ちという可能性が極めて高いシステムだ。
「外枠地獄や」
 ピットで松井繁がつぶやいたセリフは、選考下位のレーサーの内心を代弁している。そして、今日の決勝戦で初代チャンピオンに輝いた田村は、選考下位からの下剋上レーサーだった。初戦は抽選で5号艇2着、2日目は3号艇で3着、3日目は5号艇で3着。「外枠地獄」は言い過ぎだが、内に強い強い選手がいる過酷なサバイバル戦をギリギリの着順で生き残ってきた。最後の1号艇はご褒美として、まさに「自力で勝ち獲ったチャンピオンベルト」と表現すべきだろう。選考順位42位から準Vまで成り上がった長田も然り。

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 この強烈なヒエラルキーが介在するシリーズを目の当たりにして、「不公平すぎる」などと言うつもりはない。来年以降も同じルールなら、「選考上位が圧倒的有利」と肝に銘じるのみ。今年で言うなら大山千広(6位)、永井彪也(7位)も有利なシード組だったわけで、それはそれでシリーズが盛り上がる可能性もある。

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 ただ、「このBBCトーナメントが、もっとこんなシステムだったら面白いのでは?」などと勝手に想像を膨らませることも多々あった。視野の狭いアイデアかも知れないけれど、シリーズの流れに即していくつか記しておきたい。

【こんなBBCトーナメントはどう?】
前検
★選考1~6位にトップ6モーターを配分(抽選、または選手選択)。代わりに1回戦の1・2号艇シードを廃止して、1~6号艇の枠番抽選とする。つまり、この手のトーナメントでもっとも盛り上がる「抽選」がより活性化させる。
初日
★1Rをドリーム戦(選考トップ6)にできないか。トーナメント1回戦が第5レースから始まるなら、物理的には前半戦でのドリーム編成は可能だ。
★そのドリーム戦も含め、初日の全レースをトライアル1回戦にできないか(選考上位24人を2回走にして何かしら有利な境遇にするなど)
2日目~4日目
★準々決勝、準決勝もすべて枠番抽選にできないか。
★準決勝は7~12Rで文字どおり「負けたら終わり」の1着のみ生き残りノックダウン制にできないか。
★敗者復活戦もあったほうが面白いのではないか。
★抽選機(あみだ式)による枠番抽選はイベント会場などでファンに公開した方が盛り上がるのではないか。
 すべてのアイデアを同時に実現するのは不可能だが、「抽選」という重要なファクターをフル活用すれば、もっともっとファンの注目を浴びる気がしてならない。
 この超ユニークな新設シリーズは、さらなる進化を遂げる可能性を秘めている。
 舟券でボロボロになりながら、そんなことを考え続けた4日間だった。(photos/シギー中尾、text/畠山)