BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――いざ、トライアル2ndへ

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 実質的に唯一の勝負駆けだったといえる徳増秀樹は、11Rで4着に終わった。その時点で、トライアル1stから2ndに進む6人が当確。このシステムになって6回目、初戦が激しかった分、かつてないほどあっさり決着したトライアル1stとなった。
 いったんは3着の目があった。しかし3周1マークで再逆転を許した。悔しすぎる敗戦。エンジン吊りを終えて徳増は、控室に歩き出しながらもしばし視線を落としてうつむいた。その心中は誰もが想像できるだろう。やがて、徳増は顔を上げてまっすぐ前を見つめながら、歩を進めた。そのとき何を思ったか。選手紹介で「45年分の」思いを語った徳増。しかし、来年は46年だし、再来年は47年だし、やっと夢舞台に辿り着いたことが「45年」と言わせたとしても、ここで終わりではないのだ。そのまっすぐの視線が、来年に再来年に向けられていたはずだと信じたい。

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 11Rから勝ち上がったのは菊地孝平、平本真之、池田浩二。まず菊地から感じたのは充実感だ。今日の仕上がりは万全だったという。展示タイムも11Rでは抜けていた。確信をもってレースに臨み、しっかりと逃げ切った。それでも、2nd組との足合わせでは分が悪かったという(毒島誠に出足でやられ、石野貴之に伸びられたとか)。それをふまえて、万全と言い切るということは、モーターの底力をしっかり引き出せているという自信だろう。それが2nd組の上位6基との差を十分に埋めうると思う。

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 一方、平本は1st突破の喜びを少しもあらわしてはいなかった。レース直後は首をかしげ、記者会見では仕上がりの悪さばかりを口にした。1周1マークでまくり差して2番手かというところでキャビった、2周2マークでもキャビって徳増に追いつかれた、というあの場面が平本が首をかしげる部分だ。6コースから1着を獲った昨日も、実は調整が合っていなかった。そして今日も。昨日は歓喜をあらわしていればよかったかもしれないが、さらにシビアな戦いに臨むことになる明日からを考えれば、2nd進出を喜んでいる場合ではないというのもたしかなことだ。

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 池田もやはり、1st突破は決めたものの、5着という結果に納得できない様子。結局、もともと2nd初戦の外枠は決まっていたものの、最外枠が回ってくることになったのだから、やはり大敗に悔いは残る。それでも会見で「明日はたぶん動きます」と一言。今日は展示で動いて本番は枠なりであったが、明日も同じとは限らない。

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 12Rから2ndに進むのは田村隆信、井口佳典、白井英治。白井は池田同様に5着大敗で、得点率6位での2nd行き。つまりこちらも初戦は6号艇だ。1stをクリアした安堵はあっても、やはり喜び切れない。そんなレース後だった。進入はもちろん「黙って6コースはない」。明日の11Rと12Rは進入から激しくなりそうだ。

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 田村隆信は得点率1位での2nd行き。ただ、昨日の1着は事故があっただけに、それを誇るつもりはまるでなさそうだった。まあ、1位で進出は初戦5枠6枠は免れるというだけで、本番はここからだと考えれば、1位であること自体に意味はない(2位だって4枠に入れるのだし)。1stの2戦を1着2着ということはすでに過去のものとして、明日に向けて気持ちを切り替える田村なのであった。

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 井口もすでに明日に気持ちは向いているだろうが、レース後、田村との会話では爽やかな微笑も見られた。昨日のレース後に新田雄史に向けた笑顔とは明らかに質が違うもので、やはり1stクリアの安堵はあっただろう。3年前のグランプリも1st発進で2ndに進んでいるが、そのときは1st突破したことで気持ちがいったん切れてしまったという。この過酷な戦いを乗り越えたことが達成感のようなものになってしまったらしいのだ。そして2ndでは大敗の山を築いてしまった。その反省が今夜よみがえれば、明日は井口らしい気合のスイッチを入れて臨むことになるだろう。

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 12Rの1着は茅原悠紀。勝っても2ndに届かないことは戦前からわかっていたが、そこで気を緩めることなくしっかり逃げ切った。ただ、昨日の事故で負ったケガが悪化したということで、残念ながら途中帰郷となっている。レース後の茅原には笑顔はなく、勝った喜びもあまり見えず、無念ばかりが漂っていた。途中リタイアは本当に残念。まずはしっかりと傷を癒して、逆襲の2020年を迎えてほしい。

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 2nd組はレースのない2日を終えて、いよいよ戦闘モードに入っていく。モーターの手応えがもうひとつだった石野貴之はとっくに闘志を燃やしていて、今日は本体整備に突入したのは前半の記事に記したとおりだ。結果、11R発売中に計測したタイムは6人のなかでトップ。菊地孝平も「石野に伸びられた」と語っているように、少なくとも伸びは引き出してきたようだ。明日もさらなる調整が入るのは間違いないが、上向きで初戦を迎えることはできそうだ。

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 毒島誠は、実にすっきりした表情で夜を迎えていた。この2日間で、納得のいく調整ができたようだ。もちろん明日も気候に合わせた調整は必要となるが、いい準備ができたことは間違いない。苦しいモーターを立て直す場面ばかりを見ていたような気がするだけに、好感触を隠さない毒島を見るのは少し新鮮。そして、大爆発を予感させてくれもする。昨年準Vの悔しさをどう晴らしてくれるのか楽しみだ。

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 桐生順平はスタート練習とタイム測定が行なわれた12R発売中の、そのギリギリまでプロペラ調整。こちらも表情は明るい。ちなみに、昨日のスタート練習で見せた3カドは、「単にダッシュの練習」だったようだ。明日はおそらく3カドはない。というか、前付けがありそうなレースなのだから3カドにはなりようがないか。

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 シリーズ組。大山千広は無念のフライング。それでも、レース後もプロペラ調整に余念がなかった。そう、ここで折れているわけにはいかない。次節には女子の最高峰バトルが控えているのだし、この逆境を跳ね返そうという心意気がさらに成長を呼ぶはずである。残り4日間の奮闘を期待しよう。

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 10Rで5着に敗れた羽野直也が、レース後になんとも悔しそうな表情を浮かべていた。いったんは2着もある展開になっていただけに、そこからのずり下がりは端正な顔を崩すだけの悔恨になる。一時の勢いが見られなくなった今、そのことに最も苦しんでいるのはもちろん羽野本人である。そして、その歯ぎしりが必ずや羽野に底力を与えてくれるはずである。今は迷いのなかにあるかもしれないが、その苦悩と全力で出口を探す行為が羽野のはばたく羽をより大きくするだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)