BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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住之江グランプリTOPICS 2日目

「トライアル」の終焉

11R
①菊地孝平(静岡)16
②柳沢 一(愛知)24
③徳増秀樹(静岡)17
④太田和美(大阪)17
⑤平本真之(愛知)18
⑥池田浩二(愛知)18

 スタート展示は池田の前付けに内艇が抵抗して1346・2/5の変則隊形に。が、本番は池田が微塵も動かず非常に穏やかな枠なり3対3で落ち着いた。スロー勢の起こし位置を惑わせる池田の陽動作戦だったか。

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 昨日から別欄でたびたび書いたが、このレースのキーマンは徳増だ。最低でも3着に入線しなければ事実上の脱落。4着以下では12Rを待たず(無事故完走の条件ではある)に菊地、平本、池田、田村、井口、白井の6選手にトライアル2ndの当確ランプが点ってしまう。昨日同様、3コースからゼロ台前半で勝負駆けの気合を投影するか、と見ていたがコンマ17まで。転覆で明らかに足落ちしたであろう柳沢がやや凹んだが、ほぼ横並びのスリット隊形となった。

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 こうなれば、展開や気合よりもコースとパワーがモノを言う。1st組では出足トップ級の菊地がインからしっかり伸び返し、くるりと1マークを先制して楽々先頭に立った。3着では首筋が寒い徳増は、全速でぶん回してバック2番手に。そのまま静岡のワンツー決着と行きたいところだったが、4カドから差した太田の足色が素晴らしい。スリット裏であっという間に外の徳増に追いつき追い越し、2マークの小回りで2着を決定づけた。

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 ならば、崖っぷちでも一縷の希望が残る3着を。徳増の気持ちを汲みつつその姿だけを追っていたのだが、レースっぷりがどうにも頼りない。2マークでは離れた4番手の平本にも差し抜かれ、2周2マークはその平本の振り込みで再度の3番手に浮上したものの、ケリを付けるべき3周1マークは平本の軽やかな切り返しを浴びて再び“圏外”へと引きずり降ろされた。全体的にパワー劣勢の印象もあったし、何度も気合が空回りしているようにも感じた。
 この徳増の4着によって、次の12Rを待たずに“トライアル”としての大勢が決した。GPが18人制になってから「1st組の勝残りが最終レース前にすべて当確」という事態は初めてだ。果たして12人制の時代にもあっただろうか。この結果を受けて、続く12Rがどんなレース展開になるか……例年とは極めて異質な興味とともに、私はスタート展示に目を移した。

穏やかなる最終バトル

12R
①茅原悠紀(岡山) 16
②田村隆信(徳島) 20
③井口佳典(三重) 19
④今垣光太郎(福井)20
⑤白井英治(山口) 19
⑥馬場貴也(滋賀) 20

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「徳増4着」がこのレースに与えた影響は、小さくなかったはずだ。特に、徳増の着順によって危険度が激変する井口や白井は、11Rの結果を注視したことだろう。与えられた最終条件は「無事故完走で2nd確定」。もちろん、明日の枠番を巡る勝負駆けは残っているが、田村も含めて3人の脳裏には「安全第一」の思いが宿ったはずだ。

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 そして、最後のトライアルは見事なまでに安全が優先された、と思う。スタートは極めて無難なコンマ20前後の横並び。そこから1マークはそれぞれ握って差してまくり差して艇の間隔をしっかりと確保し、すべてのターンマークで一度も接触のない鮮やかな交差旋回が繰り返された(1周2マークで白井がスピーディーな切り返しを見せたが、いつものようにしっかりと他艇の間をすり抜けていた)。昨日の「水上の格闘技」とは真逆の清廉潔癖な近代ボートレース。

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 それで良いのか!? と聞かれれば、それで良いのではないか、と答えるしかない。昨日も今日も、“トライアル”の本質を踏まえれば、個々の選手の実戦心理が余すところなく正直に投影されたのだ。今節の彼らにとって、もっとも重要な使命は何か。それを念頭に置きつつ、舟券を買う側も彼らの心理を汲み取った脳内レースを組み立てるべきだろう。それでも「こんな淡白なトライアルじゃつまらん。昨日の11Rみたいに骨が軋むようなガチバトルをやらんかい!」と思うのなら、その矛先は選手にではなく現行の着順点を見直すべきだと思う。たとえば「選手責任外の失格には5点を付加する」などなど。6着の7点に対して、あるいは事故に巻き込まれなければ勝っていたかもしれない“被害者”が0点という較差は、あまりにも大きい気がしてならない。

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 そんなこんなの課題を残しつつ、とにかく今年も6人の選手が生き残った。明日からは、さらなる高みのステージへ。いきなり不利な枠番を与えられ、元より“満身創痍”の池田浩二はじめ2日間の消耗戦で肉体と神経をすり減らした6人の侍が、どこまでシード組を脅かすことができるか。明日からの新たなる激烈なサバイバル戦=「水上の格闘技」に期待を膨らませておこう。

★今日のシリーズ戦

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 さてさて、今日のシリーズ戦は昨日のイン10連勝とは裏腹に、イン5勝&他5勝(すべて2・4コース)と荒れ模様となった。最たる要因は、9Rあたりまで吹き荒れた強い追い風だったか。偶数コースの差しが突き刺さり、ならばとインが落としすぎると意表の握りマイも炸裂した。今日のシリーズMVPは、4カドから豪快にまくりきった片岡雅裕、それから2コースからジカまくりでイン深川真二を沈めた西村拓也のW受賞にしておきましょ。

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 で、非常に残念だったのは大山千広のフライング。昨日「スタートをバチッと決めてもらいたい」などと勝手にエールを贈ったが、うっかり決めすぎてしまった。もちろん成功も失敗もすぐに血肉となる23歳。反省すべきを反省し、焦ることなく明日へと目を向けてもらいたい。

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 で、今節の女子レーサーでピカピカに輝いているのが遠藤エミだ。好枠の利もあったが、3走ともに2・1・3着と舟券に絡んで8・00=暫定3位!! 明日の7R6号艇という高いハードルもしっかりガッチリ踏み越えれば、自身4度目のSG予選突破(明日3着くらいで当確ランプ!)、そしてその先のステージも眼前に近づくことになるだろう。足は中堅上位程度でも、低調機のSGだからして十二分にチャンスはあると思う。(photos/シギー中尾、text/畠山)

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