BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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住之江グランプリTOPICS 3日目

水上この一手

11R
①吉川元浩(兵庫)19
②石野貴之(大阪)19
③瓜生正義(福岡)18
④田村隆信(徳島)13
⑤井口佳典(三重)11
⑥池田浩二(愛知)15

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 枠、パワー、調整的に圧倒的有利とされるシード組に、昨日までの激闘を勝ち抜いた“成り上がり組”がどこまで肉薄できるか。私の興味はそこにあったが、進入は池田がほぼ動かず穏やかな枠なり3対3に落ち着いた。もちろん、こうなればシード組の優位はさらに拡大する。

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 が、いざスタートで1/3艇身ほど覗いたのは、すでにサバイバル戦を経験しているダッシュの3騎だった。あるいは実戦と練習の差が反映されたか。スタンド騒然。ここから4カドの田村、トップSの井口がさらに伸びれば大波乱もありえただろう。
 だが、やはり銘柄モーターとタッグを組んだスロー勢の伸び返しが素晴らしい。あれよあれよと舳先を伸ばして1マーク手前では横一線。スリットのビハインドを跳ね返した吉川が、軽々と1マークを制して出口から一気に突き抜けた。

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 で、続く石野が差して瓜生が握っての123決着かと思いきや、2コース石野は瓜生に艇を合わせるような握りマイを選択、ちょっとした小競り合いが発生した。息を吹き返したダッシュトリオがドカドカと内水域を差し抜ける。バック大混戦。特に二番差し田村と5コースまくり差し井口の銀河コンビが艇をぶつけ合うようにして併走したが、バック直線の出足~行き足は明らかに田村。井口の足がもう少し強ければ完璧なまくり差しから2番手を取りきったはずで、明日へやや不安の残る競り負けではあった。

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 凄まじかったのは地元・石野の追い上げだ。吉川-田村-池田で決まりかけた2周2マーク、3艇身ほど後方に置かれた石野は“水上この一手”と呼ぶべき強烈な切り返しを敢行。池田の舳先を掠めたその奇襲はものの見事にハマって3着をもぎ取った。この瞬間の石野のサイドの掛かり、池田の引き波で失速した足色を見る限り、ここにも少なからぬパワー差があったか。それにしてもの技あり、絶妙な切り返しだった。
 一方、1マークで石野に張られる形になった瓜生は大差の6着に。1マークの展開から6着は致し方のない流れだったが、まるで追い上げが利かなかった出足・回り足は気になる。井口、池田とともに明日への宿題が多い敗戦だったかも知れない。

驚嘆の「いつも通り」

12R
①毒島 誠(群馬)07
②峰 竜太(佐賀)06
③桐生順平(埼玉)11
④菊地孝平(静岡)10
⑤平本真之(愛知)09
⑥白井英治(山口)10

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 スタート展示も本番も白井が動いたが、内5艇がすべて抗戦して枠なりのオールスローに。その流れを覚悟していたであろう白井が途中で緩めたため、インの毒島もさほど深くはない斜め横一列の進入隊形となった。
 そして、↑御覧のとおりのスリットラインだ。ここ2年ほど、毒島の大一番でのスタート力は驚愕に値する。ほぼすべてのイン戦をコンマ07~10で突き抜ける集中力は、トライアル初戦でも如何なく発揮された。

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「今節もいつも通りに頑張ります」
 今日の公開インタビューで淡々とこう語った毒島。彼の「いつも通り」はもはや超人の域に達したのではないか。1マークの旋回も然り。同じく超人レベルの峰の差しも、桐生の握りマイも、そのインモンキーにはまったく届かなかった。出口であっという間に3艇身。
 11Rの吉川ともども非の打ち所のない完勝だったわけだが、ほんの少しだけ気にかかることがある。吉川の勝ちタイムが1分46秒8だったのに対し、毒島のそれはコンマ6秒遅れの1分47秒4。タイムアタックとも呼ぶべき全力疾走を常とする毒島が、同じイン逃げでこれほど遅れをとるとは……もしも毒島が「いつも通り」に疾駆したとするなら、吉川82号機は私が想像するよりはるかに噴いているのかも??

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 レースに戻ろう。毒島に届かなかったものの、1周バックは差した峰と握った桐生が同じように後続を突き放した。シード組、圧倒の流れ。両者の技量とスピードを踏まえれば、1-2-3決着で確定とさえ思ったものだが、次の2マークで峰が不覚を喫する。3艇身後方からやや無理気味に突進した菊地を交わしきれず接触。その間に桐生の差し抜けを喰って3番手に後退した。

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 さらに2周2マークでは、やはり後方から切り返した平本を捌ききれず、行き場を失う形で4番手に……。弘法も筆の誤りではないが、ひとつのレースで2度に渡って他艇に追い抜かれる峰竜太はちょっと信じがたい。たとえ平本の回り足が絶品だったとしても。
「足は凄く良い。久々でレース勘が鈍っていた」
 レース後のインタビューで語ったとおりだとするなら、明日からはエンジンよりも峰竜太自身の本体整備がより重要になるだろう(笑)。
 冷静沈着な立ち回りで2着をゲットした桐生は、実にらしいレースっぷりだった。ただ、スタートでやや後手を踏んだため、また2マークは展開の利があったため、相棒の78号機がどこまで私の理想に近いパワーか測りきれなかった感もある。明日こそは五分のスタートから1マークでキッチリ攻めきるレースを見せてもらいたい。

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 6着に敗れた菊地は2マークでの峰との接触の直後、消波装置にぶつかりそうになる不利があったから、この着順は論外と思っていいだろう。むしろ心配なのは、11Rの瓜生と同じく後方から追い上げが利かなかった白井か。コースの遠さだけが敗因とは思えない気もしたのだが、どうか。明日はこれらもろもろの疑念、推論を念頭に置きつつ、それぞれの気配をチェックしてみたい。

★今日のGPシリーズ戦

 風が止めばイン選手が儲かる?
 初日同様のほぼ無風、鏡のような静水面とともにイン選手がしっかりと勝ち星を伸ばした。と言っても10連勝ではなく、太田和美(私は今日イチ堅い1号艇と思っていたのだが)と松田祐季が2着に取りこぼした。

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 金星を挙げたのは、まずは5Rの丸野一樹。3コースからスピーディーなまくり差しで太田を撃破。その切れ味は「おおっ!!」と唸らせるほどで、もちろん今日のMVPに指名すべきだろう。節間成績は2141。昨日の不良航法(-7点)がなければ8・00=暫定トップだったわけだが、それでも十分に準優圏内だ。明日の2・5号艇も豪快なスピードターンで予選突破はもちろん、準優の好枠を鷲づかみにしてもらいたい。

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 もうひとりのインキラーは8Rの磯部誠。スリット同体から松田の内フトコロにズバッと舳先を捩じ込んだ。前検からピカピカに輝いていた出足系統は3日目の今日も健在。節間成績も3311と順調そのもので、減点のないこちらは一躍予選トップに踊り出てしまった。明日は2R4号艇の一発リーディング勝負。1着=トップ確定ではない(徳増が1・1着のみ逆転)ものの、4カドから得意のまくり差しを突き刺せばその可能性は大いに広がることだろう。(photos/シギー中尾、text/畠山)